CBとして最終ラインをコントロールした冨安。終盤は相手の猛攻を封じて見せた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 アフリカ特有のパワーとスピード。加えて、リーチの長さ。これらは国内の戦いではなかなか経験できない身体的特徴だ。5大会ぶりに挑んだU-20ワールドカップの初戦となった南アフリカ戦。冨安健洋(福岡)は前半から相手に圧倒され、本来のパフォーマンスを発揮できなかった。しかし、後半に入ると一気にプレーが良化。45分以降の出来は、「ディフェンスに関しては苦しい時間帯のMVP」と内山篤監督が認めるほどの働きぶりだった。
 
「前半はなかなか落ち着かず、バタバタしている状況」と冨安が認めたように、開始から国際大会特有の雰囲気と南アフリカの身体能力に戸惑いを見せた。すると、開始早々の7分に一瞬の隙を付かれてしまう。
 
「失点の場面で自分はオフサイドを狙ったが、(初瀬)亮君は相手に付いていた」
 
 冨安が振り返ったように、最終ラインの背後に抜け出したグランド・マージマンに右足を振り抜かれる。これに慌てて対応した背番号5はカバーに入り、コース外に飛んでいたボールに反応。懸命のプレーもむなしく、自身のシュートブロックが失点につながる形となった。
 
 リードを奪われた後も相手のスピードと身体能力を前に、冨安は成す術なくやられてしまう。「前半はFWをオフサイドに掛けようとしても、2列目からどんどん湧き出てくるような形で相手が裏を狙っていた。そこで少し対応に手こずり、止めるのかそうでないかがはっきりしなかった」
 
 冨安は試合前に「ラインコントロールをして、オフサイドも狙いながら強気にプレーしていければいい」と話していた。しかし、想いとは裏腹に思うような守備ができず、まったく輝きを放てないまま前半を終えてしまったのである。
 
 しかし、迎えた後半。冨安は見違えるようなパフォーマンスを見せる。
 
「段々と相手のスピードにも慣れてきた」という手応えと、「後半は相手のキックモーションを見て、先に下がるというのを徹底してやれた」という修正力。「どうしても押し込まれる時間帯もありますし、シュートまで打たれる場面もありました。でも、最後に身体を張ることは内山監督も言っていますし、アビスパの井原監督も言っている」という寄せの部分。これらが前半とは打って変わったハイパフォーマンスを引き出す要因となった。
 
 ラインコントロールは明確になり、後手を踏むようなプレーが激減。相手の速さも事前に想定し、ほとんどの局面で先に動き出して相手に隙を与えなかった。とりわけ、86分に見せたプレーは後半の研ぎ澄まされた集中力を象徴する場面だ。
 
 右サイドを崩され、中にボールを送られるとルーサー・シンに決定的なシュートを放たれた。しかし、冨安は身体を投げ出してブロック。「最初はニアの相手をマークしようとしたのですが、そこで判断を変えました。その横パスに付いて行って、最後はスライディングをしました。そこはもう何か身体が勝手に動きました」というように、相手のスピードに適応した上で的確な状況判断を下した。しかも、本能的にこなしたというのだから恐れ入る。
 
「(後半の)トミはシュートブロックも結構当たっていましたし、対人の部分でも相手に勝ってくれていた。トミ(冨安)は自分よりも良かったと思う」
 CBでコンビを組んだ中山雄太(柏)が、冨安にそう賛辞を送るのも納得できるプレーだった。
 
 次の相手はウルグアイ。初戦の南アフリカよりも数段上の力を持っている。とりわけ、攻撃陣の破壊力は今大会屈指で一筋縄ではいかない強豪国だ。しかし、試合中に逞しさを増していく九州男児にとって、これほどの相手はいない。韓国で過ごす時間をより濃密なものにしていくために――。
 
 冨安はさらなる高みを目指し、挑戦を続ける。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)