東芝・綱川智社長(つのだよしお/アフロ)

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 東芝が上場廃止に向かって、坂道を転がり落ちている――。

 東芝が15日に発表した「2016年度通期業績見通し」は、純損益が9500億円の赤字となった。17年3月末の債務超過額は株主資本ベースで5400億円、純資産ベースで2600億円となった。東芝は同時点での債務超過が決定したことで、東証1部から2部への転落することになる。18年3月末までに債務超過が解消できなければ、上場廃止となる可能性は高い。

 15日に記者会見した綱川智社長は、18年3月末には記憶用半導体フラッシュメモリー事業の売却により、債務超過は解消できるとの見通しを示した。しかし、肝心の半導体事業の売却手続きは、共同投資する米ウエスタン・デジタル(WD)との意見が食い違い、暗礁に乗り上げている。

 WDは米現地時間の14日、東芝による半導体事業の売却が契約違反に当たるとして、中止を求める仲裁の申立書を国際商業会議所(ICC)国際仲裁裁判所に提出したと発表した。綱川社長は記者会見で「WDにプロセスを止める根拠はない」と強気の構えを示した。しかし、この問題が簡単に決着するとは考えづらい。もし、半導体事業の売却が遅れれば、債務超過解消のための原資を調達するのは難しくなる。

●“離れ業”

 苦境に立たされる東芝をさらに追い詰める可能性があるのが、監査法人とメインバンクだ。

 4月下旬、東芝が監査法人を現在のPwCあらた有限監査法人から別の監査法人に変更する検討を行っているとの報道が相次いだ。後任の監査法人には、準大手の太陽有限監査法人が有力視されていた。こうした一連の動きは、PwCあらたを一段と頑なにしている。

「PwCあらたは、相当に気分を害したのではないか。両者の関係が簡単に修復できるとは思えない」(監査法人幹部)

 16年4-12月期決算に続き、17年3月期決算も監査法人の「意見」を得られないまま「見通し」というかたちで発表せざるを得なかったのは、「PwCあらたとの協議が難航しているため」(メインバンク関係者)だ。

 決算発表は、監査法人の「意見」は必要ない。ただし、6月末に法定期限を迎える有価証券報告書の提出には、それが必要となる。

「両者の今の状況では、6月末も間に合わないのではないか。おそらく、東芝は有価証券報告書の提出先である関東財務局に、提出期限の延長を求めるだろう。6月の株主総会で監査法人の交代を行い、後任監査法人に延長された有価証券報告書の提出期限までに監査を終了してもらい、『意見』をつけるという“離れ業”をやってのけるしかない」(同)

 もし、このシナリオが進んでいるのであれば当然、PwCあらたは6月末の有価証券報告書の法定期限までに監査を終了することなどないであろう。まさしく、監査法人が東芝にとって“前門の虎”となっている。

●追加融資に“二の足”も

 三菱UFJフィナンシャル・グループは17年3月期決算で、東芝向け融資を「要管理債権」に引き下げた。

「三菱UFJは東芝のメインバンクではないとはいえ、同行が債務者区分を引き下げれば、他行も引き下げに動かざるを得ない」(メガバンク幹部)

 要管理債権への引き下げは、多額の引当金を積まなければならなくなるため、メインバンクといえども、追加融資には“二の足を踏む”可能性が高まる。

 みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長は15日の決算発表の記者会見で、「東芝をサポートする姿勢は基本的に変わらない」と述べた。しかし、ある条件が付いていることは重要な意味を持つ。それは、6月末の有価証券報告書の法定期限に監査法人の意見が得られず、「上場廃止問題が現実味を帯びてくれば、融資姿勢を見直す大きな要素になる」としたことだ。

 メインバンクといえども、東芝に対して適正な融資を行わなければ、株主代表訴訟を受けるリスクがある。

「今の東芝とメインバンクの関係は、何がなんでも東芝を救うというような状況ではない」(メガバンク幹部)

 こうした冷めた声も聞かれるなか、今やメインバンクは“後門の狼”に変身する可能性を秘めている。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)