内容的な物足りなさを強調する必要もないが、だからと言って、逆転勝利という劇的な結果ばかりに目を向け、ことさら持ち上げる必要もない。投げやりな言い方をするわけでも何でもなく、よくも悪くもこんなもの。プレーしている選手たちの年齢や経験値、さらには舞台の大きさなども含めて考えれば、そんな試合だったのではないかと思う。

 U-20W杯のグループリーグ初戦、日本は南アフリカを2-1で下し、幸先よく勝ち点3を手にした。前半の早い時間(7分)に先制されながらも、後半に2点を奪っての逆転勝ちである。


南アフリカとの初戦、厳しい戦いを強いられながら逆転勝利を飾ったU-20日本代表 内容的に言えば、決して褒められた試合ではなかった。日本は試合序盤、内山篤監督が「コンパクト(な守備ブロック)を少し広げられた」と振り返ったように、ボールの奪いどころが定まらず、簡単にDFラインの裏を取られるシーンが目立った。MF三好康児が語る。

「前線の選手は前から(プレスに)いきたいが、後ろの選手は(ロングボールを)蹴られるのを牽制して、ラインが下がってしまった。それで中盤が空いてしまい、そこを使われた。南アフリカはFWが(高い位置に)張っていて、スピードもあるので一発の怖さがある。守備陣としてはそこを警戒していたが、それに合わせて前線の選手が下がってしまうと、(南アフリカのDFやボランチに)楽にボールを運ばれてしまう。そこ(チーム全体でどう守るのか)の部分をもっと合わせなければいけなかった」

 先制点にしても、中盤で横パスをテンポよくつながれるなかで、ボールに意識を引っ張られ、2列目からの飛び出しで裏を取られたことから生じたものだ。先制点の他に、少なくとも2度は決定的と言うべきピンチを迎えており、前半のうちにスコアが0-2、あるいは0-3へと広がっていてもおかしくはなかった。

 後半に入ると、「60分まではよかったが、残り30分はエネルギーが不足し、疲れてしまった」(南アフリカのサボ・セノング監督)という相手の動きがかなり落ちたこともあり、日本は落ち着いて試合を進めることができた。その結果の逆転勝利である。

 だが、それ以前に試合が決していた可能性も十分にあったことを考えれば、「先制されてバランスを崩し、2点目、3点目(の失点)もある流れになったが、少しラッキー。相手のシュート(ミス)に助けられた」(内山監督)というのが、実際のところだ。

 20歳以下のカテゴリーとはいえ、W杯と名のつく大舞台に立ち、やはり選手には少なからず緊張や硬さがあっただろう。

 今回のU-20日本代表は、登録メンバーのなかにU-17W杯の出場経験を持つ選手はふたり(MF坂井大将、三好)しかおらず、国際経験豊かなチーム、とは言い難い。

 3年後の東京五輪で主力となる世代ゆえ、この1、2年は海外遠征を増やすなどの強化策が、最近の同代表に比べれば積極的に採られてはきたものの、付け焼刃の感は否めない。やはり真剣勝負の本番は、練習試合や小さな国際大会とはまったくの別物。その舞台に立ってみなければ、実体はわからない。

 そして実際、彼らは未知の相手、未知の雰囲気に飲み込まれかけた。DF冨安健洋が「前半は落ち着かずバタバタした。2列目からの飛び出しの対応にてこずった」と話したように、前半のうちに2点目、3点目を失っていれば、この試合に敗れるばかりか、2戦目以降にまで緊張や不安、焦りといったマイナス要素を引きずりかねなかった。それを考えると、指揮官の言葉どおり、まさに相手のミスに助けられたラッキーな試合だった。

 とはいえ、そうした些細な試合の流れの変化をつかむかどうかが勝敗を分ける。それが勝負の常である。相手からもらった勝機だったかもしれないが、それをしっかりと生かしたことは評価していい。

 選手個々のポテンシャルで言えば、今回のチームには能力の高い選手がそろっており、Jリーグでも各クラブで主力としてプレーしている選手は多い。逆転ゴールを決めたMF堂安律や、途中出場でそれをアシストしたFW久保建英をはじめ、しっかりと持てる能力さえ発揮できれば、このくらいの相手にこのくらいの結果を残すことは、驚くほどのことではないのだろう。後半はポジショニングで相手の先手を取り続け、南アフリカの攻撃を封じ切った冨安が続ける。

「試合のなかで、だんだんスピードにも慣れた。相手のキックモーションを見て、(相手FWの動き出しよりも)先にしっかり下がることを徹底してやれた。より早く対応できればよかったが、この試合で(世界レベルの)スピードを感じることができたので、次に向けてしっかり準備していきたい」

 また、冨安がすでに視線を次戦へ向けていたように、むしろこの勝利は、単にこの試合に勝った負けたということ以上に、次につながるという意味で非常に大きな1勝だったに違いない。「南アフリカは予想以上に個々のスピードがあった。それを経験して逆転できたことは次につながる」とは、内山監督の弁。2戦目以降に待ち受けるウルグアイ、イタリアという強豪に対し、自分たちの力を存分にぶつける態勢を、特に精神的な部分で整えることができたことは大きかった。

 日本vs南アフリカのあとに、同じ会場で行なわれたイタリアvsウルグアイ(ウルグアイが1-0で勝利)を見る限り、どちらのチームもかなり手ごわい。

 第1試合が、ピッチ上のあちこちで細かなミスが起き、落ち着かない状況が頻繁に見られる”子どものゲーム”だったのに比べると、第2試合は洗練された”大人のゲーム”。チームとして非常にソリッドな戦いができるだけでなく、個々の技術も高く、1対1の攻防は激しい。両チームともに技術、戦術などあらゆる点で、南アフリカよりも数段上の力を持っていることは確かだ。南アフリカには申し訳ないが、日本の実力が試される本当の世界大会はここからが本番。そう言ってもいいだろう。

 そんな難敵に対して恐る恐る向かっていくのか、自信を持って堂々とぶつかっていくのかでは、大違い。結果にかかわらず、後者の姿勢で戦ってこそ見えてくるものが、間違いなくある。

 若さゆえの脆(もろ)さも負けん気も垣間見せたU-20日本代表。少しの幸運も味方につけ、価値ある勝利をつかみ取った。

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