子どもにせき止めを与える際には成分表示の確認を

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2017年5月17日から19日にかけて、厚生労働省が鎮咳(せき止め)・鎮痛成分として使用されている「コデイン」という成分を含む医薬品の小児への処方制限を検討しているとの報道が、新聞などで相次いだ。

現在試験稼働中の電子カルテの情報などを収集、分析するシステム「医療情報データベース(MID-NET)」で副作用と思われるケースが24例確認されているとする報道もある。低濃度のコデインを含む咳止めシロップなどは市販薬としてドラッグストアなどでも販売されており、不安を覚える話だ。

真相を確認するため、厚生労働省の管轄部署である医薬・生活衛生局に話を聞いた。

欧米の動きを受けて処方制限を検討中

「近年EUや米国でコデインを処方された12歳未満の小児でまれに重篤な呼吸抑制の副作用が生じた例が確認され、使用を禁止することが相次いで発表されました。これを受けて日本でも同様の措置を行う方向で検討に入っているのは事実です」

J-CASTヘルスケアの取材に対し、医薬・生活衛生局の技官はこう答える。今のところコデインの添付文書(副作用や処方上の注意を記載した文書)には「小児に対しては慎重に投与すること」という注意表示が記載されているが、ここに副作用調査やデータ検証を踏まえてより具体的な処方法を記載する予定だという。

「コデインによって呼吸抑制などを起こすリスクが高い欧米人は日本人の約7〜10倍いるとの報告もあり、欧米と同等の処方制限となるかはわかりません」

では、副作用と思われる24例のケースとはなんなのか。技官によると、2009〜2015年にMID-NETに協力している医療機関を受診した97万6859人のデータからコデインを処方されていない人や、がんによる痛みを和らげる鎮痛剤として処方されていた人を除外した7267人が分析対象となっている。

この7267人の中で、「コデインの処方と併せて呼吸抑制の治療薬を処方されている人」「呼吸困難や呼吸不全と診断され酸素吸入を受けた人」などの呼吸抑制を起こした可能性が高い人を調査したところ、24人が確認されたという。

ただし、コデインを処方されたことになっているが実際には服用を忘れていて飲んでいないといったケースも想定され、重症の呼吸器の病気が原因で呼吸不全を起こしているというケースもあり得る。これらをデータから判断することは難しく、コデインと呼吸抑制の因果関係を証明しているわけではない。分析を担当した専門官も、あくまで処方実態と呼吸抑制の発生が疑われるケースを確認したものとし、副作用か否かを判断するには厳密な副作用評価が必要だと話す。

「MID-NETで得られたデータが処方制限の根拠となったわけではありません。検討をする上での参考資料として活用することはあるかと思われます」

大人用の薬を子どもに与えない

もちろんデータ上で判断できないからコデインの服用に問題がないわけではない。12歳未満の子どもでは副作用リスクが高い可能性はあるのは事実だ。MID-NETのデータは医療機関で処方された医薬品で、市販品を含めたリスクは不明。前述の技官も「市販品でも約600品目でコデインの含有が確認されており、服用にあたって注意は必要」としている。

小児用の咳止めシロップなどはコデインを含まないものが増えつつあるが、一部の商品ではまだ使用されている。また大人用の咳止めや総合風邪薬にはコデインを含むものが多く、量を減らして12歳以下の子どもに与えるといった使い方も危険だ。