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◆相手に期待する役割を語れるか

 コミュニケーションの序盤で、相手を引き付けるBIGPRという分解スキルがある(参照:『会って20秒で相手を引き付けるために重要なこと』)。B(Background 背景)、I(Introduction 紹介)、G(Goal 目的)、P(Period 時間)、R(Role 役割)をコミュニケーションの冒頭で実施する方法だ。

「先日は、お電話でお話しさせていただきありがとうございました(背景)。XX会社の山田です(紹介)。本日は、当社商品のご紹介をさせていただければ幸いです(目的)。30分お時間をいただいています(時間)。佐藤社長さまには、ご質問などを伺った上で、この商品にご関心があるかどうかご感想をお聞かせいただければ幸いです(役割)」という話法だ。

この演習を実施していると、体得に最も時間がかかるのがBIGPRのR(Role 役割)だ。そして、このR(Role 役割)こそ、BIGPRで実現したいことで、B(Background 背景)、I(Introduction 紹介)、G(Goal 目的)、P(Period 時間)は、R(Role 役割)のための伏線だといっても過言ではない。

◆柔軟思考との相関

 どういうことかというと、BIGPRがコミュニケーションの冒頭で相手を引き付けることができる最大の理由は、いきなり商品説明したり、唐突に業務依頼をしたりというような、話し手都合の切り出し方ではないということだ。話し手都合ではなく、聞き手都合だということだ。

 ミーティングを実施することになった背景も、自己紹介も、ミーティングの目的や時間も、相手にご理解をいただくためのものだ。そして、それらをふまえて、本日のミーティングによって、聞き手にどうしてほしいのかを話すということほど、聞き手都合の対話はない。

 自分がしたいこと、話したいことではなく、自分が話す内容を聞いた聞き手が実施することを話すのだ。従って、視点を変えて、聞き手の立場にたって、聞き手が何を実施するのかを語る必要がある。

 このBIGPRのR(Role 役割)を一定時間内に体得できる人は、分解スキル・反復演習の柔軟思考の演習の体得度合が高いことがわかっている。また、視点の切り替えの演習の成果も高い。このBIGPRのRが出来るようになることは、柔軟思考力を高めることにも役立つのだ。

◆クロージングでの断りを防ぐ「BIGPRのR」

 BIGPRのR(Role 役割)について、「むしろ冒頭に話さない方がよい、後出しにした方が商談はうまく進むのではないか」という質問をいただくこともある。すなわち、冒頭では本意を示さずに、終盤のその場になって本意を繰り出す方法だ。例えば、商品を売りたいとする。冒頭ではその目的に言及せず、終盤になって「商品をご購入いただければ幸いです」という話法だ。

 しかし、私の演習経験と演習参加者の実例をふまえれば、この方法の成功率は、BIGPRよりも低い。なぜなら、冒頭で目的や役割が明確になっていないことから、聞き手を引き付ける度合が低いままで商談が進むことからだ。聞き手は、いったい何の目的なのだろうか、自分に何をしてほしいと話し手は期待しているのだろうかと不安なままでミーティングに参加しているので、話し手が話に集中する度合が低まるのだ。

 加えて、これがより大きな理由だが、話し手が、後段になって例えば商品を売りたいという本意を繰り出した場合、聞き手は話し手に対して不誠実さを感ずるということだ。商品を売られることに抵抗を持つのではない。冒頭ではそれに触れずに、後段でそれを持ち出すことによる狡猾さ、不誠実さに抵抗感を持つのだ。営業に従事している演習参加者から、商品の買ってもらいたいという話を持ち出した途端に、抵抗感を受けるという話を聞くことがよくあるが、話法を拝見すると、たいていがこのケースなのだ。