その上、イメージセンサーが捉えた光を遮るメカニカルシャッターがないため、映像がブラックアウトすることなく、ファインダーや液晶モニター上で被写体を追い続けることも可能となるからだ。
また、オートフォーカスにおいても、メカニカルシャッターの待ち時間なしで常に動作できるため、イメージセンサーの性能をフルに発揮することができると言うわけだ。


もうひとつのメリットが、メカニカルシャッターが動作しないため、無音での撮影が可能となる。特に、静音性が要求される舞台撮影などで力を発揮するだろう。

まだまだ、メリットはある。α9は、いつかは壊れてしまう恐れがあるメカニカルシャッターを利用しないことで、制限なく連写できると言う安心感だ。秒間20コマ連射でも、メカニカルな部品がないため壊れることがなく、10万回でも50万回でも撮影できるのだ。

これまでは、ローリングシャッター歪みが発生するため、避けていた電子シャッターを、実用的なモノへと昇華できたのは、ソニー独自の裏面照射型CMOSセンサーや、積層型CMOSセンサーを開発してきたカメラづくりの成果だと言える。

まさに、ソニーならではのコロンブスの卵といってもいいだろう。

しかしながら、まだ懸念事項もある。
これまで、いわゆるカメラという市場において日本製品が絶対的な支配力を持っていたが、α9の登場で何かが変わるきっかけになるような気がするのだ。

一眼レフカメラは、
・レンズや製品ラインナップ
・工作精度
こうした培った技術力に依存することが多いため、新規参入が難しい分野だった。
特に、キヤノンやニコンのフラグシップモデルに見られるような、高耐久性と信頼性は、そう簡単に乗り越えることはできない。

高速で動作するミラーの動きを打ち消すように静かに止める技術
正確に1/8000秒で連続動作する高耐久性・高精度なメカシャッター
など、一眼レフカメラは、現在でも常に進化を続けている。

一方でα9は、こうしたメカニカルの進化を必要としないカメラ技術の世界を生み出した。

α7投入から4年でいともたやすく、メカニカルな一眼レフカメラ以上の連写速度を実現してしまった。しかも、他社製フラグシップモデルよりも10万円ほど安いアグレッシブな価格設定も持ちあわせているのだ。

α9には、
・CDプレイヤーがメモリー型オーディオプレヤーに移行したような、
・フィルムカメラがデジタルカメラに置き換わったような
市場の様相を大きく変える、ブレイクスルーの可能性があると感じる。

今後、ソニーはイメージセンサーや画像処理エンジンを進化させることで、連写速度や画素数、価格を自由自在にコントロールできるようになるだろう。

PCやスマートフォンのように、
・イメージセンサーやメモリー、液晶モニターなど電子部品
・ソフトウェア
という構成で、ミラーレス一眼カメラを開発、製品化できるようになる。
そうなれば、海外メーカーでも、日本メーカーを凌ぐグローバル展開できるカメラメーカーを立ち上げること十分に可能になる。
もちろん、カメラ市場が魅力的だと判断すればだが。

その時に、日本のカメラメーカーは対抗できるのだろうか?
真剣に未来を創り出す必要があるように思える。


執筆 mi2_303