ソニー「α9」が起こすイノベーションが、日本カメラメーカーの命運を握るワケとは?【Turning Point】

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ソニーは5月26日、35mm判フルサイズイメージセンサーを搭載したミラーレス一眼カメラ「α9」を発売する。

有効画素数2420万画素ながら、価格は直販のソニーストアにおいて498,880円(税抜)と、高価な価格設定がされている。

果たしてα9はこの値段に相応しいカメラなのだろうか?

これまでソニーのフルサイズミラーレス一眼は初代の「α7」、「α7R」、「α7S」、二世代目の「α7 II」、「α7R II」、「α7S II」と高機能化、高速化、そして高画素化などを果たしてきた。

ソニーの販売戦略で特徴的なのが、旧機種も併売している点だ。
通常、他社であれば新製品投入のタイミングで旧製品の販売は終了する。

しかし、ソニーは旧製品も併売することで、新製品と旧製品での機能の差別化を明確にし、機能と価格の違いによる製品選びができるようにしているのだ。

価格改定した旧製品は、機能が少ないエントリーモデルのような立ち位置となり、逆に新製品の新機能を明確にし、最新モデルを選ぶきっかけ作りにもなっている。


さて、今回取り上げるα9は、これまでのα7シリーズの3世代目ではない。
新たに”9”シリーズを立ち上げた製品になっている。

ちなみにフィルムカメラ時代のαシリーズ(ミノルタ)は、”9”シリーズがフラグシップモデル、”7”シリーズが革新的な技術を搭載したモデルという立ち位置であった。

まずは。α9の主なスペックを紹介しておく。
有効画素数2420万画素、位相差検出方式オートフォーカス693点、ISO感度100-51200(電子シャッター時100−25600)、シャッター速度1/8000秒(電子シャッター時1/32000秒)、ドライブモード5コマ/秒(電子シャッター時20コマ/秒)、静止画撮影枚数約480枚(液晶モニター使用時約650枚)、重さ約673gなど。

スペックだけ見ると2430万画素のα7 IIに近いように思える。
しかし、価格はα7 II と3倍近い開きがある。

これは何故なんだろうか?

この理由は、イメージセンサーと電子シャッターに秘密がある。

ソニーはα9向けに積層型CMOSイメージセンサーにメモリーを内蔵してきた。この技術はコンパクトデジカメ「DSC-RX100M5」にも搭載されており、イメージセンサーとDRAMチップを一体化することで、イメージセンサーの信号をDRAMに蓄積できるようにしている。

これによって電子シャッター撮影時の、CMOSセンサー特有の読み出し速度の差によるローリングシャッター歪みを低減できるものとしている。

実は、α9に搭載するイメージセンサーは、さらに進化を遂げDRAMをイメージセンサーに”内蔵”にすることで高速化し、フルサイズイメージセンサーでも電子シャッターで歪みの少ない写真撮影を可能としたのだ。

これまで、激しい動きのなかから一瞬を切り取るスポーツ撮影は、一眼レフカメラのメカニカルシャッターで撮影するのが当たり前だった。

ソニーはこの領域に電子シャッターを軸としたミラーレス一眼で挑んだのだ。

勝算は、電子シャッター特有のローリングシャッター歪み対策だけではない。

イメージセンサーの露光とは別に発生するメカニカルシャッターが動作するための待ち時間をなくすことで、高速連写を実現しているのだ。

特に、これまでのミラーレス一眼カメラの場合、イメージセンサーに搭載する位相差検出方式オートフォーカスは、メカシャッターが動作している間はオートフォーカスが利用できないため、連写だけではなくオートフォーカスにおいても待ち時間が発生してしまっている。
これは、一眼レフカメラも同様に、メカニカルシャッターが動作している(ミラーアップしている状態)間は、オートフォーカスの利用ができない。

しかし、電子シャッター利用時であれは、イメージセンサーの信号を転送し終わった一瞬で次の撮影動作に移行できる。