室温28度での我慢大会は意味がない

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2017年5月11日、政府の副大臣会合において、かつて環境省でクールビズの導入に関わった盛山正仁法務副大臣がクールビズで推奨される冷房の温度について、「科学的知見を持って決めたわけではなく、なんとなく28度を目安にスタートした」と発言したことが話題になった。

副大臣が言及したのは設定温度のようだが、企業や啓発団体がクールビズを推奨する説明などをみると「室温を28度に」としているものも少なくない。しかし、28度といえば「ほぼ真夏日」とも言われるかなりの暑さだ。夏でも室温を28度に保つのは危険ではないのか。

28度の労働環境はストレスを感じる限界

暑さによって引き起こされる体調不良といえば熱中症だ。熱中症を引き起こすのは水分不足やそのときの体調など様々な条件があるが、気温(室温)も大きな要因のひとつ。熱中症予防を目的に作られた、人体の熱の出入りを示す指標「WBGT(湿球黒球温度、暑さ指数とも)」も気温と湿度、周辺の熱環境の有無から算出され、単位は「℃」で表わされる。

環境省の「熱中症予防サイト」によると、WBGT26〜27℃(気温約24〜28度)までは熱中症による緊急搬送者数は0〜1000人未満だが、WBGT 28度(気温約26〜28度)を境目に急に1万人に跳ね上がっていく。28度になると熱中症になるというわけではないが、注意すべき気温であることは間違いないだろう。

WBGTは労働環境のストレス指標として日本工業規格(JIS)にも採用されており、「WBGT指数に基づく作業者の熱ストレスの評価―暑熱環境」 として気温ごとに注意事項が明記されている。

これによると、「気温24〜28度」は熱中症による死亡事故が発生する可能性がある「注意温度」で積極的な水分補給が推奨されている。「気温28〜31度」は「警戒温度」で「屋外作業をする場合は定期的に十分に休息を取り入れる」。「31〜35度」は「厳重警戒温度」で、「外出時は炎天下(直射日光)を避け、室内では室温の上昇に注意する」となっている。35度を超えると室内で安静状態にしていても熱中症を発生する危険があるとして「危険温度」だ。

ストレスを感じさせず安全性を保つ温度の目安も示されており、室内で行う事務作業などの場合は気温29度(日常的に屋外で熱に晒されている人は30度)となっている。28度よりは高いが、逆に考えれば28度は限度一歩手前ともいえる。

その温度が快適かどうかは個人差があるし26度で熱中症になる人もいる。極端に低い設定温度で室温を下げ過ぎるのも体調不良の原因となるが、不快だったり暑いと感じているのに28度で我慢するのが危険であることは間違いない。

湿度にも注意を

熱中症予防にためには水分補給や涼しい環境にいることが不可欠だが、湿度にも注意しておきたい。湿度が高いほど汗が乾きにくくなり、体内の熱を放出できなくなってしまい、熱中症リスクが高くなる。「熱中症予防サイト」でも、同じ気温32度だが湿度が10%上がるだけで熱中症搬送者数が50人から94人に増えている事例が掲載されている。

高齢者や乳幼児が車内などに置き去りにされ、熱中症で死亡する事例が報道されることが少なくないが、厚労省の調査発表では30〜50代が職場で熱中症によって死亡する例も毎年20〜30人ほど確認されているようだ。職場や自宅の室温には注意をしたい。