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トランプ大統領による4月のシリアに対する報復的な巡航ミサイル59発の発射、更に急速に悪化した北朝鮮との関係から、欧米投資家の米国に対する危機感が急速に高まりました。そして、ここに来てロシア疑惑も出てきています。

4月後半から欧米投資家は、ドルからユーロ、更にポンドへの逃避的な資金移動を本格化させています。つまりはお金は臆病であり、現状のトランプ大統領の行動により米国に資金を置いておくことへの危機感を急速に募らせ、実際にも逃避行動にでてきているものと思われます。

○ドル/ユーロ間で資金移動が激しく行われる理由

投資家は投資方針を決めるには時間を掛けて慎重に行いますが、いったん方針が決定すると怒涛のごとく資金を一方からもう一方に流します。

最近の例としては、2014年4月にECBが追加緩和を示唆しましたが、これがきっかけとなって翌2015年の2月まで資金はユーロからドルへ一方通行に流れ、この間に約3,400ポイントのユーロ/ドルの下落になりました。

このように特にドルとユーロの間に資金移動が激しく行われる理由は、世界第1位の規模を持つドルの受け皿になれるのは、世界第2位の規模のユーロでしかありえないからです。その逆も同様です。

ですので何らかの理由、往々にして起きるのはその国・地域に悪い材料があると、逃避的に米国あるいは欧州に資金が逃避するというのがEUR/USDでの大相場を形作る場合が多く、良い話で動くのはまれなことです。

ただし既に申し上げましたように2014年から2015年にかけてユーロからドルに資金は流れましたが、その後2015年2月から2016年4月頃まではレンジ幅が1.05〜1.15あたりの1,000ポイントレンジに膠着しました。この間ドル/円は約2,500ポイント動き、完全に動く通貨と動かない通貨の立場は逆転しました。つまりそれぐらい投資家にとって、ドルとユーロの間には動かすべき動機がなかったと言えます。

それが今度はドルからユーロに移し始め、その動機がどうもトランプ大統領の模様ですから、いかに欧米投資家が同大統領に危機感を持っているかということだと思います。

なお投資家が動き出したと言っても、まだレンジ上限である1.15近辺までも達していないのに気が早いというご指摘もあろうかと思いますが、私自身の経験からしますと多分1.15を超えてくると上げに加速がつき、とても買えたものではないように思います。

○資金移動の渦に巻き込まれたら

昔、ニューヨークにいたとき、正にこの資金移動の渦に巻き込まれたことがありました。

当時はまだユーロに切り替わる前でドル/独マルクが主流でしたが、あるオーストリーの銀行が100本(1億ドル)のドル/マルクを直接呼んできて、プライスを出したことがありました。そうしたらどうもその銀行は他の在ニューヨークの銀行にもプライスを求めていたようで、買ってきた瞬間にプライスが100ポイント飛んでしまいました。

こうなると逃げられるのは倍返し(ドテン)しかないと瞬時に決意し、マーケットで200本買い100本の買いで100本のショートポジションを損切り、あと100本でロングポジションを作りました。これが功を奏して相場は更に200ポイント上昇して、幸運にも難を逃れることができました。

つまり資本家の怒涛のような動きとはこうしたものであり、ためらいは禁物であることがわかります。

更につけ加えておきますと、ニューヨークにいたとき、投資銀行のファンドマネージャーと親しくなりいろいろ教えてもらいましたが、一番驚いたのは、投資銀行になると大西洋を挟んだ米国と欧州のあいだの資金移動はほぼ完ぺきに把握していることでした。そうした情報を聞きながら、「これじゃあ投資銀行には勝てないはずだ」と思いました。

○執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。