エース社員の「エクセル活用術」

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企業の戦略立案に関わる経営企画部門。当然、そこで働くメンバーは社内のエリートが集められる。主な仕事は市場や他社動向などの外部環境の分析と社内のデータをもとに中長期戦略を立て、経営の舵取りをサポートすること。そのベースとなる数値の処理では、エクセルの高い習熟度が求められる。

今回、経営企画部門のマネジャーがどれほどエクセルを駆使しているか、大手企業にアンケート調査を実施。回答があった33人を見ると、さすがに手練の<エクセル使い>ばかりだとわかる。メールを除いて、仕事に使うアプリケーションでエクセルの割合が70%を超えるという人は5人もいた。エクセルが業務遂行の中心的なツールであることは間違いない。

「回答者は40代、50代の方が多いにもかかわらず、エクセルのスキルは相当に高いという印象です」『外資系投資銀行のエクセル仕事術』の著者、熊野整氏は回答者たちの高いスキルに感心する。

エクセルの用途については、「データ集計・比較」「収益計画の策定」「基本的な表・グラフ作成」「予算・実績管理」「作業工程・スケジュール管理」の順で、やはりデータ集計や計画策定にエクセルは欠かせないことがわかる。

エクセルで特にスキルの差が出るのは関数の使い方だ。SUM(合計値)、AVERAGE(平均値)、IF(条件)など基本的な関数はほぼ全員が使用し、より高度なVLOOKUP(指定範囲から条件に合うデータを取り出す)やSUMIF(条件に合うセルの値を合計する)などの関数をよく使うという人も7割ほどいる。これはチームメンバーに習得してほしい関数にも当てはまる。

「さらに計算確認の<トレース機能>、単語登録で入力作業がスピードアップする<辞書機能>も、それぞれ回答者の4割近くが使っています。これは仕事のスピード、高い作業効率が求められていることの証しです」

回答者の半数近くが、エクセルのスキルについて「十分ではないと思う」と答えているが、熊野氏が読み解くように、関数をはじめエクセルの機能を駆使し、しかも仕事が速い、というマネジャー像が浮かび上がった結果だ。

そのようなマネジャーたちが、エクセルを使ううえで心がけている点も興味深い。自由回答には次のようなものが見られる。「マウスをできるだけ使わない、罫線を最小限にする、セル結合しない、式と変数を区別する」「計算ロジック、使用した係数に関するロジックおよび参考とした他ファイルは、メモとしてファイル内に残すようにしている」「他人が見てもわかる論理構造を意識する。シートの保管ルールを決め、完成品か否かを他人が見て判断できるようにする」。こうした注意点は、エクセル上達の参考になるはずだ。

部下のスキルについては、7割以上が「十分だと思う」と高く評価している。20代、30代の若手社員はスキル習得に長けているという見方もできるが、社内のエクセル研修を見ると、定期的に実施しているのは4社のみで、新人研修で基本を教わったあとはスキル習得の機会は意外に少ないようだ。マネジャー自身がエクセルについて学んだ方法を見ても、本やインターネット検索による独学が大多数を占めている。上司・先輩から教わった人も3割近くいるが、OJTによる指導は会社や職場で統一された使い方でないことも考えられる。

チームメンバーに習得してほしいスキルは「データ集計・比較」「基本的な表・グラフ作成」「収益計画の策定」「予算・実績管理」と、回答者自身のエクセル用途にほぼ対応する結果となっている。

また、チームメンバーに不足しているスキルでは「表・グラフが見にくい」がトップになった。これはデータを受け取る側として「もう少し見やすくしてほしい」という要望だ。

これにつづいて「基本的な関数を知らない」「計算ミスが多い」「作業スピードが遅い」といった不満も見られるが、それほど数は多くない。

「表・グラフの見やすさは、フォーマットのルール化でかなり向上します。ところが、調査結果で、意外に職場でのルール化が進んでいない。会社や職場で対応するという発想が少ないのではないでしょうか」

熊野氏が指摘するように、職場でフォーマットのルール化が必要だと感じている人は12人と少数派だ。実際に社内でルール化しているのは2社、部署内でルール化しているのは4社にとどまった。

「私が勤めていた外資系投資銀行は、フォーマットのルール化が徹底していました。金融に限らず、多くの外資系企業にはルール化のカルチャーが根づいています。それは(1)作業の効率化、(2)計算ミスの予防、(3)見る側と作る側のストレス軽減、という大きなメリットがあるからです」

日本企業では社員(スタッフ)の仕事ぶりが丁寧ということも、フォーマットのルール化が進まない背景とも考えられる。しかし作業効率の向上やストレスの軽減など、ルール化による多くのメリットに目を向けることは重要だ。個人の努力だけでなく、組織でエクセルの習熟度を高めていくことが必要だろう。

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熊野 整
モルガン・スタンレーの投資銀行部門で、顧客企業のM&A、資金調達案件に携わる。現在は、スマートニュースにて財務企画担当。全国でエクセルセミナーや企業研修を行う。著書に『外資系投資銀行のエクセル仕事術』。

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