J1リーグ第12節、柏レイソルはジュビロ磐田を2-0で下し、怒濤の6連勝で2位に浮上している。

「選手たちは試合ごとに成長しています。(2点目となった)中川(寛斗)のヘディングは本来(身長155cmと小柄で)苦手としているんです。でも、クロスに突っ込む、という練習に取り組んできて。今日はそれが出ました」

 柏を率いる下平隆宏監督はそう語ったが、”勝利という特効薬”が効いているのだろう。勝利を重ねることで選手が自信を得て、プレーに確信を手にする。それによって逡巡がなく、思い切りがよくなり、精度も増した。


アウェーのジュビロ磐田戦も快勝し、6連勝を飾った柏レイソル では、柏の躍進はこのまま続くのだろうか?

 5月20日、ヤマハスタジアム。序盤、主導権を握ったのは磐田だった。大勢の子どもたちを招待したことが功を奏したのか。必死に声を合わせる熱意を背にして、攻勢を仕掛ける。

  しかし、それに立ちはだかったのが柏のGK中村航輔だった。

 3分、MFアダイウトンとの1対1を、西部劇のガンマンのような俊敏さと読みでブロック。6分、MF中村俊輔の枠をとらえたFKを、跳躍から腕一本で弾き出す。どちらも、試合の潮目を変えるビッグセーブだった。

「航輔のセービングは試合の流れを決めましたね」

 そう語ったのは、主将でチームを司るMF大谷秀和だ。

「航輔はどっしりとしていますよ。1対1は強いですね。とにかくボロが出ないし、キャッチミスから崩れるというのもない。キックについて注文することはありますけどね。あいつが防いでくれるからこそ、DFラインも高く保てるんですよ」

 決定機を守り切ったことで、柏は落ち着きを取り戻した。先発11人中7人が柏の下部組織出身。積み上げてきたパスのスキルとコンビネーションは、Jリーグの中でも異彩を放っている。

「何気ない縦パスの出し入れで、柏にゲームを作られてしまった」(磐田・名波浩監督)

 柏は右サイドを中心にDF小池龍太、FW伊東純也らの連係で磐田を苦しめた。とりわけ、小池は立ち位置がよく、守備で後手に回らず、ボールを持てるし、長いボールでもチャンスを作った。右の崩しは、ボディーブローのような効き目があっただろう。

 前半44分だった。右サイドにボールが渡る。それを受けた伊東は脚力を生かし、振り切ってニアに折り返す。このスペースに入っていた中川が潰れると、ファーポストで待っていたFWクリスティアーノが右足で叩き込んだ。

 もっとも、柏が盤石だったわけではない。

 後半立ち上がり、センターバックが食いつき過ぎて、裏を取られる形でフリーで持ち込まれ、決定的なシュートを打たれている。この1対1でも、GK中村が鋭い寄せで立ち塞がった。

 立ち直った柏は後半9分、FW武富孝介が相手GKに倒され、PKを得たが、これは判定が覆されてしまい、再び動揺が走る。劣勢に立つが、ここでもGK中村を中心とした守備で耐え凌いでいる。

 そして、後半29分だった。DF中谷進之介が自陣内から、右サイドを走るクリスティアーノに長いボールを蹴り込む。

「クリアボールもできるだけつなげて、と思っていました」(中谷)

 下部組織からボールプレーの精神を貫く柏ならでは、と言えるか。これを受けたクリスティアーノが力強く持ち運び、鋭いボールを折り返し、中央に走りこんだ中川が合わせた。この得点で試合の趨勢(すうせい)は決まった。

 柏はそれぞれの選手が持ち味を出している。ボールスキルの高さだけに拘泥(こうでい)はしていない。全員がよく走って、適切なポジションをとる。クリスティアーノの豪快さや中川の献身が融合し、大谷がチームを引き回し、GKが潮目を変える。そうやって勝利を重ねるたび、勇敢さが増し、好循環が生まれている。

「我慢強く戦えるようになってきていると思います。守備もチームとしてやろうとしていることがはっきりしてきました。若い選手が多いので、とにかく勝つことが自信につながっていますね」

 大谷が語った、その説明は本質を突いている。序盤6試合、2勝4敗でシステムや人を目まぐるしく替えたときと、まるで逆の現象が起こっているのだ。

――このまま優勝までいけそう?

 去り際に問いかけると、大谷は笑顔で答えている。

「まだ10試合ちょっとで、(これから約3分の2の日程と)だいぶありますから」

 柏は勢いを味方につけているが、若さ=未熟さを感じさせるチームと言える。試合の入り方には拙(つたな)さがあったし、後半はボールのコントロールを失ってピンチを招き、イノセントだった。

 単刀直入に言って、中村の神がかったセービングに救われている感は強い。いつか”勝利という特効薬”が切れたとき、柏の正体が見えるだろう。

 そのときまでに地力をつけることができていれば――優勝の道も開けるはずだ。

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