アルコール中毒と違法ギャンブルがはびこる村を救ったのは「チェス」だった

写真拡大 (全3枚)



By siliaFX

インド・ケーララ州にある人口6000人のマロティチャルという村は、50年前にアルコール中毒と違法なギャンブルがはびこっていたとのこと。そこである男性がマロティチャルで「チェス」の普及に努めたところ、アルコールやギャンブルに溺れる人はすっかりいなくなったそうです。そんなマロティチャルをチェスで救った男性について、BBCが取材を行っています。

BBC - Travel - The ancient game that saved a village

http://www.bbc.com/travel/story/20170511-the-indian-village-addicted-to-chess



マロティチャルには一軒のティーショップがあり、そこでは多くの人がチェスに興じており、店内にあるテレビは誰も見ることがなく、ほこりをかぶっています。ティーショップの向かいにあるバス停にも人が集まっており、人々はバスに乗るのではなく、チェスをプレイする2人を眺めていました。マロティチャルでは村中の人がチェスに熱中しており、人口6000人に対して約4000人が毎日チェスを行っているとのこと。通常のインドの村ではチェスのルールを知っている人は50人未満というレベルであり、マロティチャルはインドでも珍しいチェスが盛んな村となっています。

そんなマロティチャルは、50年前までケーララ州にある多くの村と同様に、アルコール中毒や違法ギャンブルがはびこっていました。ティーショップのオーナーであるウニクリシュマンさんは、マロティチャルを出てカルールという町に住んでいたころ、チェスのルールを覚えて熱中することになったとのこと。故郷で起きていた問題を聞きつけたウニクリシュマンさんは帰郷してティーショップを開き、村人にチェスを教え始めたそうです。



By wocketmoose

その結果、村人は飲酒やギャンブルを忘れるほどチェスに熱中することになり、6世紀のインドで発祥したといわれる古代のゲームによって村が救われたというわけです。マロティチャルのチェス協会の会長であるジョンさんは「幸運なことに、チェスはお酒より中毒性が高かったのです。チェスは集中力を高め、人格を形成し、コミュニティを作り出します。私たちはテレビを見ることはなく、チェスを通じて話し合うのです」と話しています。

チェスの村となったマロティチャルには、アメリカやドイツから腕試しに来る観光客も増加しているそうです。また、マロティチャルでは大人だけでなく子どももチェスに熱中しており、学校のカリキュラムにチェスが取り入れられる可能性もあるとのこと。そんなマロティチャルにも近代化の波は訪れており、スマートフォンを手にする村の子どもたちを見かけるようになっているとのこと。これに対してBBCの記者が「インドを急速に席巻する近代化の波に、マロティチャルは耐えられるのでしょうか?」とウニクリシュマンさんに尋ねたところ、「子どもたちはスマートフォンからオンラインでチェスをプレイしているのです」と答えたそうです。BBCの記者は「チェックメイトされたような気分だ」と話しています。