なぜか急に、意中の相手から連絡が来なくなる。

なぜかある日を境に、友達がよそよそしくなる。

あなたにも、こんな経験はないだろうか。

普段のなにげない言動が実は、相手の心を閉ざす引き金になっているかもしれない。

心理カウンセラー・史子(アヤコ・32歳)は、そんな日常の言動に切り込み、解決策を提案するのが趣味。

これまで、高学歴の人間が無意識にしがちな非モテ発言、仕事でうまくいかない上司を手玉に取る方法、食事会を15分で去った男がモテた理由に切り込んできた。さて、今回の相談者は…?




「2人の男性で迷っているの」と妹から相談される、史子


「今、デートしている男性が2人いてね。迷っているの」

くりっとした瞳をきらきらさせて、双葉(ふたば)はおもむろに切り出した。

史子の妹の双葉は、26歳。大手証券会社の受付嬢をしている。

色白のなめらかな肌にくりっとした小動物のような目、赤みのあるふっくらした唇。小柄で華奢なからだ。なんとなくふわふわした雰囲気で、甘え上手。

形容するなら“砂糖菓子”のようなこの妹は、きりっとした美人の史子とは対照的な雰囲気だが、史子に負けず劣らず男性からの評価が高い(市場は全く異なるが)。

―お姉ちゃん、恋愛相談にのってちょうだい。

双葉からLINEで呼び出され、史子は今日、恵比寿の『マディソンニューヨークキッチン』でランチをしている。

どうせ私がごちそうするハメになるのよね…と思いつつ、6つも年の離れた妹に甘えられると、結局可愛くて、聞いてあげてしまう。

「どんなタイプの2人なの?」

ふふふ、と嬉しそうに笑いながら、それぞれ別のお食事会で知り合ったの、と双葉は話し始めた。

1人はメガバンク勤務の男性で、同い年の26歳。社交的で優しく、爽やかなタイプらしい。もう1人は、ITベンチャーで営業をしている男性で、2つ上の28歳。男らしい雰囲気だが、愛想がいいタイプではなく、何を考えているか分からないところがあるらしい。

「どちらも、2人で喋っていると楽しいの。でも彼氏にするなら、誠実な人がいい。どうやって見分けたらいいかな?」


遊んでいる男性を見分ける、たった1つの質問とは?


遊んでいる男性は、この質問で見分けよ!


「それなら、いい方法があるわ」

コホンとせきをして、史子は姿勢を正す。

「“私、恋愛に真面目に見える?それとも慣れていそうに見える?”って彼らに聞いてみるの」

「ん?私のことを相手に聞くの??」

双葉が腑に落ちない、という顔で史子を見ると、そこがポイントなのよ、と史子はニヤリとする。

「人間ってね、相手の気持ちがよく分からないときには、自分の言動を相手に“投影”して、相手の気持ちを予想するの」

「投影?」

眉間にしわを寄せて、双葉は可愛らしく首をかしげる。

「例えば、夜に職場の同僚何人かで飲んでいて、遅い時間になったとき。後輩が腕時計をチラっと見たら、双葉はどうする?」

「時間大丈夫?って聞くかなあ」

「なんで?」

「うーん、私が腕時計を見るときは、“そろそろ帰りたいな…”っていう無言の意思表示だから、後輩もそうかなって」

それが投影なのよ、と史子はひとさし指を立てる。

「もし、終電を越してでも飲みたいっていうタイプの人なら、時計を見る行動は“まだまだイケるって確認したんだろうな”って思うかもしれないわよ」

つまり、と史子は続ける。

「相手の気持ちが分からないとき、人は無意識に“自分がこの行動をするときは、こう思っているな”っていう予想をするの。この予想は、自分の気持ちを映す鏡なのよ」

なるほどね!と双葉は目を輝かせた。

「相手の男性に“私はどう見える?”って質問をすれば、相手は自分の心や行動にそって、私のことを予想してくれるんだね。だから、相手の傾向が分かるんだ」

「そうそう、さすが我が妹。飲みこみが早いわ」

史子は満足そうに続ける。

「誠実な人はきっと双葉を“真面目”って判断するし、遊んでいる人は“慣れていそう”って答える可能性が高いわ。それで見極めてみると、いいわよ」

「さすがお姉ちゃん!来週2人とデートがあるから、早速聞いてみるね」

ただし1つ注意点があるわ、と史子は釘を刺す。

「この質問は、まだ性格があまり知られていない場合か、双葉みたいにいつもふわふわしたタイプじゃないと、効き目ないわよ。相手はこちらの考えていることが分からない、という状態が前提なの」

だから、最初の出会いで聞いてみるのが本当は1番効果的なのよ、と史子はつけ足した。


質問の結果、双葉が選んだのは…!?


はたして、2人の男の回答は?


―お姉ちゃん、私、決めました。

双葉から史子にLINEが来たのは、それからちょうど1週間後のことだった。

メッセージと一緒に、1枚の画像が送られてくる。そこには、がっしりした体つきの男らしい男性と、笑顔の双葉が一緒に並んで写っていた。

―ITベンチャーの彼にしたのね。

史子が写真を眺めていると、双葉から電話がかかってきた。

「あ、お姉ちゃん?すぐに既読がついたから、電話してもいいかなと思って。今、大丈夫?」

まったく、マイペースなんだから…と思いながら、はいはいと史子は答える。ふふふ、と双葉は嬉しそうに話し始めた。

「見てのとおり、こちらの彼を選んだよ」

双葉によると、あの後のデートで早速、「私、恋愛に真面目に見える?それとも慣れていそうに見える?」とそれぞれの男性にぶつけてみたそうだ。

メガバンクの彼は、「慣れていそうだと思う。双葉ちゃんは明るいし一緒にいて楽しい。だけど本心が見えないときがあって、男の人を手玉に取るのがうまそう」と探るような笑顔で答えたらしい。

一方ITベンチャーの彼は、「真面目じゃない?俺と話しているとき、真摯に向き合ってくれているイメージがある」と答えたそうだ。

双葉は、この回答でかなり後者の彼に気持ちが傾いたが、さらに2人との会話を改めて意識してみたらしい。

「メガバンクの彼とは、会話の回転を楽しんでいる感じ。かけ引き、というのかな。でもITベンチャーの彼とは、本心から話せている気がしたの。そういう安心感が、最後の決定打になったかな」

なるほどね、とあいづちを打ちながら、史子は考えていた。

―根っこのところで合いそうな彼を、ちゃんと選んだのね。

双葉は男性を振り回すようなふわっとしたところがあるが、その実相手の気持ちにとても敏感で、繊細な面もある。

そのため表面で相手に合わせるのは得意だが、彼女がありのままで振る舞える、安らげる場所が必要だと、史子は常々思っていたのだ。

遊び人かどうかを探る質問は、あくまで相手を測る1つの要因でしかない。1番大切なのは、自分と相性の良い相手を選べるかどうかだ。

「よかったじゃない、おめでとう」

史子のお祝いの言葉に、ふふふと嬉しそうに笑い、「お姉ちゃんも早く彼氏つくるんだよ!」と言い残して双葉は電話を切った。

―妹に心配されるほど困ってないわよ…余計なお世話!

史子は心の中で毒づきながらも、思わずふっと頬をゆるめる。姉に本当に幸せになってほしい…という妹の気持ちは、ちゃんと分かっていた。



―後日談。メガバンクの彼は、実はかなりの遊び人だったみたい。私のほかにも、複数の女性にアプローチをかけていたどころか、同棲中の彼女がいたらしいよ!

双葉から怒りマークの絵文字と共にそんなメッセージが送られてきたのは、それから1週間ほど後のこと。史子は改めて、心の底からほっとしたのだった。

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東京の人は冷たい?何かあっても助けてくれない「冷淡な傍観者」に助けてもらう方法。

【これまでの史子の心理学】
Vol.1:デートでは絶対NG。高学歴が無意識にしがちな“非モテ発言”とは?
Vol.2:うまくいかない上司を手玉に取る方法、教えてあげる
Vol.3:食事会を開始15分で去ったアイツが、モテた理由