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ひとりの若き「奇才」の頭のなか

2016年、V8、チョップドルーフの「モグ・ロッド」が話題になった。モーガンをベースとしたホットロッドなど聞いたこともない。これをデザインしたジョン・ウェールズは、プロジェクトをわずか数時間の間に書き上げるような奇才である。

モーガンは長い歴史のなかでバイク、トラクター、飛行機など多彩な分野にユニークなデザインを引っ提げ手を出し、楽しさのリーダー格として生き延びてきた。

それが自由主義的なモーガンを作り上げたとも言える。

しかしここでふと思いついたのは、例えば他社でこのような考え方で存続できたのかということだ。

「すべてのデザインは『楽しさ』に基づいています。それがないと製作には手を付けません。ただし『楽しさ』をに至極まじめに取り組んでいて、少し踏み込んだことを言うと、楽しければクルマの形をしていなくてもいいのではないかとも思っています」

3つ確かなことが分かっていたという。

ひとつは「ずっと同じようなクルマを作っているので顧客に飽きられている」ということ。ふたつ目は「もっと顧客のニーズに応えられるような器用さがモーガンには必要だということ」。そして最後に「技術が詰まったクルマで、なおかつ老いも若きも受け入れられるようなモノであること」だ。

モーガンにおけるデザインの約束事

わたしはウェールズに「『伝統』を意識したデザインに制約を受けていたのでしょうか」と問いかけた。

彼は「いいえ、われわれに与えられたのは自由で、目新しさよりも奇抜さ重視でのデザインをするということでした。そこから約10年が経過しましたが、近年、やっと目指すべき方向に近づいてきたのではないかと思います」と語った。

「これからのモーガンはどうなっていくのでしょう?」というわたしの問いに対し、ウェールズは言葉を選びながら語りだした。

近年モーガンが提示してきた新時代の提案を引き合いに出しながら、「新体制が整い、新しいマーケティングを支えるひとの力の増員/増強、これは間違いないでしょう」と話した。現に彼のチームが仕事をする「デザイン小屋」は4倍の広さになったそうだ。

「われわれの持つ技術を証明するべく、電気系統やアルミの曲げの技術を使い軽量なクルマを作り上げました。ただ、これを作るにあたって簡素だったり、モダンであることだったりには固執せずに製作を行いました。これまでのモーガンらしさを現代のクルマに注入していくことは楽しかったですが、でもそれが正しいと思ってやっていた訳ではありません。模索していくなかで完成しました」

「われわれの持つビジネス・モデルは『ノスタルジア』に起因するものです。ラインナップを見てもらえばわかる通り、1940年代から60年代、デザインの過渡期を迎えていた頃にいざなわれることでしょう」

「フェラーリ250のようなデザインにも挑戦しました。ただし、ここのチームには、これまでウケたデザインをコピーするような真似はしなくてよいと言っています。魅力的なクーペは既にモーガンにありますからね」

「かくして過去と未来を行ったり来たりするようなデザインのEV3エレクトリック・スリー・ホイーラーの製作がスタートしました。将来的に見ても、美しいプロポーションは受け継がれ、個性、つまりモーガンらしさに繋がっていくことでしょう」とウェールズ。

最初の仕事はただのオモチャづくり?

そもそもウェールズがモーガンの前任者によって声を掛けられ、働き始めたのは9年前。前任者とはマット・ハンパイアーズだが、彼はエアロ8をデザインしたという功績を持っている。

「はじめは6週間の一時的な仕事のはずでした。結局5か月にまで延びてしまいましたがね(笑) 初めての仕事は、モーガン製のペダルカーの製作でした。それはそれは最高に楽しい仕事でしたよ。何せ学生にとっては勉強の一環でもありましたしね」

「結局250台作ったんですが、モーガンはそれをひとつ約£2500(35万円)で売りに出していました。仕事を終え、復学した翌年にマット・ハンパイアーズからお呼びがかかったんです」

「次はエアロマックスとエアロ・スーパースポーツのプロジェクトに参加しなさいとのことでした。もちろんふたつ返事で参加しました」

コンコルドに通ずるデザイナーとしての血筋

ウェールズの祖父はコンコルドの電子構成部品のデザインをしていた人物でもある。よってデザインに接する機会があったのは、ごく自然なことだった。

幼少の頃というのは、一般的な男の子は自転車やバイクに興味を持つ。しかしウェールズは違った。ひたすらノンストップで描き続けたのだ。

そして次第にクルマのデザインに傾倒していくようになる。そして気づいたのは、スケッチだと2次元的でしかないということ。クレイモデルや、コンピューターによるデザインは、彼の思ったものをその通りに叶えることができた。

わたしは午後のひと時を使って、息をのむ彼の仕事ぶりを観察した。スケッチはほどほどに、市場と顧客のニーズの話をし、パンフレットや飾り方はどうするか、エンブレムは? といったところまでデザインをするようだ。

「モーガンでは様々な個性あふれるひとが働いています。わたしがモーガンで働くことが好きな理由のひとつがそれです」

「もちろんわたしもデザインに繋がりそうなネタなどを蓄えてはいますが、彼らの持っているアイデアもわたしと同じくらい豊富なので、あえて口出しすることは控えています」とウェールズば言う。

「あなたが思いつく個性的なモーガンは?」というわたしの最後の質問に対し、彼は5台を挙げてくれた。最後に紹介しよう。

2-2モーターバイク

「お気に入りのひとつですね」と語っていたのがこれ。BMWのクラシック・バイクを素材に、手曲げのタンクや木で囲いを作ってみたり、随所随所に真鍮をちりばめた。

PLUS OAR

「いまやりたいことのひとつがセーリングです。このスケッチでは見えませんが、3ホイーラーのエンジンを使い、20ノットで航海可能なように仕上げたいですね。ちなみにキャビンはモーガン・クラシックです」

エアロ8 GT3

「会社の気風を表現するときに、このようなレーシングカーとして表すのは効果的だと考えます。GT3に出場するなら……と考えながらデザインしました」

モグ・ロッド

「こんなクルマ、最高ですよね。これはわたしのひそかに抱いていた野望のひとつで、4シーターのホットロッドです。もしこんなクルマを生産できるようになるのなら、これから先のモーガンらしさすら変わってしまいそうですね」

エアロAV8

「何かを描くとき、実際にどんな形になるのかは誰にもわかりません。この飛行機、本来の仕事からは逸脱していますが、こういった仕事とは関係ないかもしれない飛行機のコックピットのデザインをすることなども好きなのです」