池松壮亮と石橋静河が主演する『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』超絶不器用なラブストーリーに共感します【最新シネマ批評】

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【公開中☆最新シネマ批評】
映画ライター斎藤香が、公開中の映画の中からおススメ作品をひとつ厳選して本音レビューします。

今回の本音レビューは、『舟を編む』などの石井裕也監督の最新作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(5月13日より先行公開)です。石井監督の映画に登場する人物って、ちょうどポーチ世代ドンピシャなんですよ。おまけに石井作品にハズレなし! だからついついみなさんに紹介したくなってしまうのです。

本作は都会で生きる若者たちの行き場のない思いを綴った作品で、原作は最果タヒによる現代詩集。詩集の映画化とは大胆ですね。では物語からご紹介していきましょう。

【物語】

看護師とガールズバーの仕事をかけもちしている美香(石橋静河)は、熱くなれるものもなく、孤独な気持ちを押し殺して生きています。

建設現場で日雇いの仕事をしている慎二(池松壮亮)は、左目がほとんど見えません。同僚たちとの隙間を埋めるようにひたすらしゃべり続けてウザがられています。

ある日、慎二が同僚たちとガールズバーへ行くと、美香がいました。それ以来、仲間の智之(松田龍平)と美香はときどき会っているようですが、実は美香と慎二も、様々な偶然が重なり、徐々に距離を縮めていくのです。

【共通点は「変人」そんな男女の恋物語】

SNSを通して、自分のハッピーな近況を披露するという、キラキラ私生活をアピールする人はたくさんいますが、この映画の美香はその対局にいます。耳障りのいい言葉には内心「は?」と思っているし、やさしくされても素直になれない。そんな女性です。彼女は自分を必要以上にキレイに見せたり、幸せをアピールしたりせず、幸福を信じていません。そして「私は変」と自虐的。

そんな彼女にシンパシーを感じるのが慎二。彼も同類だからです。人生を楽しむことが下手で、「俺は変」と思っています。だから美香と慎二は惹かれあうのですが、二人は顔を合わせれば、毒を含んだ言葉で自分の気持ちを捻じ曲げて表現し続けるのです。なぜかというと、相手を信じたいけど、信じて裏切られるのが怖いからかもしれません。

【都会は嘘をつけないと生きにくい場所】

とりわけ美香のひねくれぶりは相当なものですが、だからこそ彼女を信じられる気がします。嘘がないからです。自分を良く見せるという他愛もない嘘さえもつけない。そして、自己評価が低く、発想がネガティブ。でもなぜか強気。そこが面白い!

都会で生きる人たちが、自分をよりよく見せようとするのは、弱い自分を隠しておけば安心だし、それが都会で生きる術。だから美香や慎二みたいに、心が裸な男女は生きにくいわけです。

恋愛に関しても「好きになってもどうせ別れる」という美香の考えなど、じれったさを感じつつ、その気持ち、わからなくはない。だから美香から発せられる言葉は刺さるんですよ。

【新人女優の余裕のなさが奇跡を生む】

美香を演じたのは、俳優・石橋凌と女優・原田美枝子の娘、石橋静河さん。お母さんは演技派ですが、まだ彼女はぎこちなく、演じ切るのがイッパイイッパイな様子はありました。

しかし、石井監督いわく「石橋さんは演技経験がほとんどなく、彼女の何もできないとまどい、余裕のなさ、緊張感がこの映画にとって重要だった」と語っています。なーるほど、新人女優のぎこちなさを美香というキャラに転換させたのですね。さすがです!

また本作は、ドキュメンタリー的な雰囲気もあります。「リアルな東京の風景に見えたのは、ゲリラ撮影の一発勝負だから(笑)」と石井監督。そうなんだ〜、なんだか新宿や渋谷あたりにいるような気分になりましたよ。

キラキラ女子の世界についていけないな……とか、自己アピールに疲れたな……という人に見てほしい。自虐的で本音で生きる人たちの姿は、もしかしたらあなた自身かもしれません。

執筆=斎藤 香(C)Pouch

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
(2017年5月13日より、新宿ピカデリー、ユーロスペースにて先行公開、5月27日より全国ロードショー)
監督:石井裕也
出演:石橋静河、池松壮亮、佐藤玲、三浦貴大、ポール・マグサリン、大西力、野嵜好美、市川実日子、松田龍平、田中哲司ほか
(C)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会

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