北朝鮮で、脱北費用の高騰が続いている。当局の取り締まり強化で、ワイロを受け取り脱北に協力する国境警備隊員が減少していることが主な原因だという。

北朝鮮を陸路で脱出して中国に向かうには、国境を流れる鴨緑江、豆満江のいずれかを渡らなければならない。安全に渡るには国境警備隊員に渡江費、つまりワイロを渡す必要がある。

「関われば殺される」

この渡江費だが、2006年には1人あたり500元(当時のレートで7000〜7500円)ほどだった。

脱北の日時や費用は、従来は脱出する人と国境警備隊員が個人的に掛け合って決めていたが、ブローカーが介在するようになったことで高騰し、2010年には1万元(当時のレートで約13万3000円)に達した。

金正恩政権に移行して国境警備がさらに強化されたのを受け、2015年には1万ドル(当時のレートで約123万円)に達していた。

それが今では、1万3300ドル(約147万6000円)から1万6000ドル(約177万6000円)になっているという。

脱北にはただでさえ、生命に危険が及ぶほどのリスクが伴うのに、これではたとえ覚悟があっても、行動に踏み切るのは難しいだろう。

(参考記事:ねらわれる少女たち…第三国滞在中の脱北者の性犯罪被害が深刻

NKウォッチの安明哲(アン・ミョンチョル)代表は、脱北費用高騰の理由として、脱北を幇助する人が減ったことを挙げた。当局は、脱北幇助に対する処罰を徐々に強化しており、北朝鮮国内では「脱北に関わると殺される」という認識が拡散しつつあるという。

実際、2015年8月には両江道(リャンガンド)の国境警備隊25旅団2大隊と5大隊で軍官(将校)、下士官など40人が逮捕され、うち3人が銃殺された。

また、同年9月にも民間人5人が銃殺刑に処せられている。

韓国の人権団体である「北朝鮮の政治犯収容所の犠牲者家族の会(No Chain)」のチョン・グァンイル代表によると、以前なら国境警備隊員にワイロを渡せば問題なかったが、今では幹部にワイロを渡しても脱北は困難となっており、保衛員(秘密警察)との連携をうまくとってようやく脱北できるほどになっているという。

韓国統一省の統計によると、韓国に入国した年間の脱北者の数は、2009年に2914人に達したが、それ以降は減少傾向にあり、2015年には1275人となった。2016年からは再び増加に転じて1418人となった。2017年は3月末の時点で278人に達している。

増加に転じた理由としては、海外在住の北朝鮮の人が自国の未来に絶望して未来のために脱北する「移民型脱北」が増加していることが指摘されている。