「街をフィールドに変える」スポーツで観光客誘致

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放送作家・脚本家の小山薫堂が「有意義なお金の使い方」を妄想する連載第21回。東京でも56年ぶりにオリンピックが開催されるが、重要なのは規制緩和。普段できないことにチャレンジして、ぜひ新しい東京の魅力を構築しよう。
スポーツは街を盛り上げる格好のエンターテインメントだが、その最たるものがオリンピックだろう。初めて東京オリンピック(第18回夏季オリンピック)が開催されたのは、1964年(昭和39年)。予算として国立競技場をはじめとした施設整備に約164億円、大会運営費94億円、選手強化費用23億円を計上する国家プロジェクトだった。

道路や鉄道が整備され、国際的に通用するホテルがオープンしただけではない。いまでこそ東京は世界でも有数のクリーンな街と思われているが、当時は「ゴミ都市」と呼ばれており、これを機にゴミ収集車が250台導入され、積水化学工業社製のポリバケツが普及したという。またカラー放送を見ようとテレビが多くの人に購入され、結果として娯楽性の高いバラエティ番組が増えたというのも興味深い話だ。
 
2020年に行われる東京オリンピックは、64年以来56年ぶりの2回目となるわけだが、オリンピックで重要なのは規制緩和だと僕は思う。「オリンピック」を建前に、いかに普段できないことにチャレンジし、人々がおもしろいと思ったことを次につなげられるかが勝負。それが新たな価値となり、都市の魅力になるのだから。
 
ストリートラグビーというのをご存じだろうか。15年7月5日、東京駅八重洲北口前「日本橋さくら通り」の街路樹茂る車道に人工芝のマットが敷き詰められ、世界初のストリートラグビー大会が開催された。プレイは3対3で行われ、タックルやスクラムはない。ラグビーのように身体をぶつけたりせず、タッチでプレイがいったん止まるというから、いわば鬼ごっこに近いのかもしれない。近隣で働いている職場やカフェ、キッズチームなど、なんと87チームがエントリーして盛り上がったというのも頷ける。

原型は、元神戸製鋼ラグビー部主将の大西一平さんがトレーニングに取り入れた練習プログラムのひとつで、大西さん自身がそのイベントの責任者となり、現在ストリートラグビーの社団法人副代表理事も務めている。16年末の時点で、イベント開催は30カ所、体験者数約15000人、観客数のべ約500000人というからすごい。19年に日本で開催されるラグビーW杯へと大きく弾みがついたのではないか。

このように「街をフィールドに変える」というのはとても楽しいことだし、東京オリンピックの機運が高まるいまこそ良い方法だと思う。東京も23区+26市5町8村がそれぞれの地形の特徴を生かして、たとえば神田川でカヌーとか、代々木公園で3on3のバスケットとか、東京ではないけれど熱海でF1とか、楽しめる新スポーツ大会を開催したらどうだろう。そのうえ街が元気になり、観光客も誘致できるわけで、素晴らしいことこの上ないと思うのだけど。
 
僕は以前から、ゴルフを街中でやったらどうかなと考えている。「ティーショットは半蔵門、最終ホールは渋谷のスクランブル交差点」というような大がかりな計画で、これは市民ではなく、プロに参加してほしい。当然、ゴルフボールがビルの窓を割ることもあるけれど、「これ、タイガー・ウッズのOBの跡なんだ」とか、むしろオフィスの財産になるかもしれません(笑)。

街ぐるみの「スポーツの祭典」を
 
街を盛り上げるのに忘れてはならないスポーツがある。マラソンだ。

1896年、アテネで開催された第1回夏季オリンピックで、ギリシャの故事にちなんで、マラトンからアテネ・パナシナイコ競技場までの競争が加えられた。これがマラソンの始まりである。翌97年にはボストンマラソンが開催、現在では規定タイムを達成した”選ばれたランナー”しか参加できない大会となった。以降、世界で多くの大会が開かれている。