日曜ドラマ「フランケンシュタインの恋」(日本テレビ 日よる10時30分〜)
脚本:大森寿美男 演出:茂山佳則


「男の気、引きたいなら、ちゃんとけじめつけろよ」

室園美琴(川栄李奈)が、津軽(二階堂ふみ)に厳しい言葉を投げつけた。
室園→稲庭先輩(柳楽優弥)→津軽←研さん(綾野剛)
「フランケンシュタインの恋」は恋でいっぱいだ。

恋をすることは願うこと


津軽は3話でこんなことを研さんに言っていた。
「もし、このキノコがあなたの心だとしたら、あなたは人間に恋をしてもいいと思います」
「いろいろ問題もあると思いますががいっしょに生きてみませんか。わたしといっしょに人間の世界で生きていきましょう」
だからてっきり、津軽も研さんのことがまんざらではないと思ったのだが、そうではなく、彼女の複雑な胸の内に研さんは苦しむことになる。

とはいえ、まず前半は、研さんが津軽と人間の世界を学びはじめる楽しいシーン。
日曜日、公園で過ごすことを楽しむこと、散歩、電車に乗ること、買い物など、いろいろなことを知る。
恋をしている人たちがするという、抱擁も。
「しないとだめですか」と聞くのは、研さんは、自分が誰かを抱きしめたら殺めてしまう危険性を感じているから。シザーハンズ的切なさ。


津軽「私の冗談はおもしろくないんです。笑うのをやめてください」
研「はい」
津軽「はい」
このふたりのテンポがかわいい。かなりお似合いっぽいのだが、簡単にことはすすまない。

津軽の大学に行き、それから津軽のお母さんと来たお地蔵様のところへも。
お母さんが亡くなる一年前、津軽はここへ連れてきてもらっていた。
前はこの地蔵のそばの木に花が咲いていたが、母が死んでからが何も咲かない。津軽は、母と同じ病気を抱えていて、この木のように、やがて枯れると思っている。

そんな津軽が心配で、研さんは再び、ラジオ「天草に訊け」に投稿する。
天草(新井浩文)は、鶴丸教授(柄本明)に相談に行く。

「運命は自分で変えられる」(なんつータイトル、でもありそう)という著書がある教授の、このときの回答が良すぎる。
「その人の遺伝子に働きかけることです」
「相手を喜ばせることです。楽しませることです。そうやって相手をもっともっと長く生きたいと思うようにその力を引き出すことです。なによりも、相手に生きてほしいと強く願うことです」

「恋をすることは願うことではないのか」
 (名台詞の収蔵庫に、勝手に収蔵決定です!)

「どうすれば相手が笑顔になるのか、どうすれば相手が喜ぶのか、それを願う力が恋ではないか」
・・・というような長い教授の話を受けて「恋は遺伝子の革命ということですか」とざっくりまとめる天草。でも、そのまとめもなかなか気が利いていた。「恋は遺伝子の革命」!

そのラジオを偶然聞いてしまった津軽の表情が複雑だが、研さんははりきって、「恋をしましょう」と言い出す。「もっと一緒に散歩をしましょう」「もっと一緒に願いましょう」などと前向き発言するも、津軽には「恋はできません」と突っぱねられ、「科学的には証明できない気持ち」(稲庭先輩/柳楽優弥)に苛まれてしまう。

「心で思うことを、我々は規制することはできない」


津軽に教授に、なぜ、あの悩み相談が、研さんによる津軽のことだとうすうすわかっていながら、恋をしろと焚き付けたのか聞くと、教授はこう返す。
「彼(研さん)が心で思うことを、我々は規制することはできない」
「彼の存在を認める以上、その心をぞんざいに扱うこともできまい」

恋する心はどうしようもないもの。好きになるなと強いることは他者にはできない。
とはいえ、必ず両思いになるとは限らない。
傷心の研さんたちと飲みにいった室園は、男たちが単純に「意地」でものごとを片付けようとすることに対して、「その意地が未練になって狂気に変わるんだろ。まずは意地を捨てて負けを認めろって」とか、「相手の迷惑にならないように、相手の人生を応援するのが感謝ってもんだろ」とか、じつに出来た発言をする。
まあ、あのやばい元カレに痛い目に遭ったからこそ、人間的に成長しているのだろう。

好きになる気持ちは自由。でも、好きの気持ちの表し方は、相手のことを思ったものでないと、未練や狂気になってしまうおそれがある。これには、昨今多いストーカー事件のことを思い浮かべてしまった。
愛の強さがときとして相手を傷つけてしまうことにならないように、好きという気持ちについて深く考えて、コントロールできるようにしたいものですね。

「どこがどう違うと言うんですか」


研さんが高いビルの上で作業していると、記憶が一瞬フラッシュバックし、気を失って地面に落ちてしまう。このビルから落ちるシーン、綾野剛が実際に落ちているそう。すごい。
でも、研さんのカラダになんの支障もなかった。やっぱり、人間とは違うカラダをしているのだ。
「怪物」だという稲庭先輩に、津軽は「長く生きることのできない私のカラダと長く生きることしかできない私のカラダは、どこがどう違うと言うんですか。教えてください」ととても鋭い疑問を突きつける。
さらに津軽は、またしてもキノコを病院のベッドに生やしてしまった研さんに怯える姉(田島ゆみか)のことも説得する。
いったい何が人を分けるのか、「フランケンシュタインの恋」は重たいテーマを内包している。

津軽さんを枯らしません。


「津軽さんに恋をしています」と告白する研さんに、津軽は「相手のことだけを考えたりとか 相手がこれから生きていくために自分にはなにかができるかと、そういうことを考えるのも恋だと思うんです」と言い、でも、余命短い自分は、そういうことを考えることができないと自己否定する。
そんな彼女を喜ばせようと、研さんは一世一代の力を発揮。
木に触って、念を入れると、淡いピンクの胞子が沸いて、枯れ木にお花みたいなキノコがたくさん生える。
「津軽さんがいることに感謝しています。
津軽さんに喜んでもらえるように、津軽さんが笑顔でもっともっと生きられるように僕が願います。
津軽さんを枯らしません。僕が革命を起こします」
そこで、ようやく笑顔になる津軽。
なんて素敵なファンタジー。そう、布団じゃなきゃいい。こういうキノコの生え方ならすばらしい。

とはいえ、ハッピーエンドにはならず、稲庭先輩が、研さんに不利な行動をしはじめそうな不穏な空気を出しながら5話へ続く・・・。
津軽のことをみつめてきた先輩の、切ない想いは「意地が未練になって狂気に変わる」みたいな感じになってしまうのだろうか。人間って難しい。

4話のちょっと気の利いた台詞


「孤独な男にほかの女は救いにならねえ」(恵治郎)

「大人の女は、男、お酒、タバコ、甘いもの、宗教の次に溺れやすいからねえ」(玉名/大西礼芳)

「女をまとめんじゃねえよ」(室園)

病院で、教授と稲庭恵治郎が出会う。
鶴丸「大工は棟梁(細工はりゅうりゅう)」
恵治郎「調べをごろうじろ(仕上げをごろうじろ) って落語」(落語「大工調べ」より)
ふたり、笑い合う。光石研と柄本明の間合いが良くて、この回、1番のお気に入り。
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