「ここでは立場の違いは関係ない。ここにいる全員が、同じ使命を持つ同じ警察官だ! 我々は犯人逮捕に向けて、必ず証拠品を見つけ出す! ……使命を果たそう」

ここはどこの巨災対? なんてセリフが長谷川博己から飛び出した『小さな巨人』第5話。これにて芝署編は完結! 視聴率はこれまでで最高の13.9%を叩き出した。しかし、なんだかモヤモヤするぞ。このモヤモヤの正体は何だ?


ツッコミだらけの逮捕劇


「99%の疑いがあっても100%の確証がなければ意味はない。それはゼロと同じなんだよ!」

巨大IT企業ゴーンバンクの中田社長(桂文枝)と中田の息子・隆一(加藤晴彦)に警察の捜査情報を漏らしていたのは、元捜査一課長で芝署長、三笠(春風亭昇太)だった! 三笠は中田親子を守るかわりにキックバックを受け取っていたのだ。

なんとか三笠の悪事の証拠を掴もうとする香坂(長谷川博己)だが、狡猾な三笠は尻尾を掴ませない。三笠が香坂に対して憎々しげに言い放ったセリフを聞くと、疑惑はあるのに野党からの追及をのらりくらりとかわし続ける首相を思い出す。

一方、前回までは完全に犯人扱いされていた捜査一課長・小野田(香川照之)だが、今回は素直に謝ってきた香坂と山田(岡田将生)を簡単に許し、あまつさえ協力的ですらある。

香坂は渡部(安田顕)ら所轄の刑事たちと一緒に、三笠が持っているであろう証拠の品を探し続ける。証拠の品とは、殺された風見京子(富永沙織)の手から隆一に渡っていたUSBメモリ……のカケラだった。京子が転落死したときに一緒に落ちて欠けたものを、三笠が持ち帰った……と香坂が推測したのだ。

んん? なぜ現場にいなかった三笠がわざわざそんなものを拾ったのか? しかも、今の今まで捨てずにとっておいたのか? すべては香坂の推測でしかないんじゃないのか?(実際に三笠は香坂の推測どおりに行動していた) そもそもUSBメモリのカケラが、隆一が殺人を犯したという証拠になるのか? 視聴者からはツッコミが相次ぎ、Yahoo!知恵袋には「なぜ三笠署長は証拠を捨てなかったのか?」という質問まで投稿される始末。

しかし、そんな視聴者の疑問にはかまわず、三笠が隠した証拠を所轄の刑事たちが探し続ける(いいから捨てろよ、三笠!)。いがみあっていた捜査一課の協力もあって盛り上がるが、隆一が海外に高飛びするタイムリミットまであとわずか。なんだか急に『半沢直樹』とか『下町ロケット』っぽい展開だぞ。そしてタイムリミット! ウガー! と怒りの声をあげる安田顕のかたわらで、タイムリミットと同時に証拠を見つける岡田将生! おいおい、ちょっと都合良すぎないか?

三笠は無罪放免! 敵は警察組織そのもの?


逮捕された隆一は、香坂の取り調べを受ける。マジックミラー越しにそれを見守る小野田捜査一課長と、顔面蒼白でやってきた三笠署長。香坂はマジックミラー越しに啖呵を切る。

「元捜査一課長たるあなたは、警察官として絶対にやってはならないことをやったんだ!(ミラーをバン!) あなたはもう警察官ではない。犯罪者だ!」

長谷川博己渾身の怒り顔! マンガなら「くわっ」という擬音がつきそう。

ともあれ、隆一は父の中田からも切られて罰を受けることに。香坂はわざと捜査情報をリークした罪によって豊洲署に左遷。第一部ではまったく存在感がなかった人事課の三島祐里(芳根京子)は香坂の部下になるべく異動希望を出す。殺された風見京子の父、風見康夫(長江英和)も意識を取り戻した。

しかし、肝心の三笠は他の所轄の署に横滑りするだけでおとがめなし! もともと三笠は警察幹部たちがゴーンバンクの系列企業に天下りをする斡旋を行っており、警察内部から三笠を守ろうという動きがあったのだ。ゴーンバンクの悪事をかばった三笠の行動は正しい、と警察組織が判断したということになる。三笠が前回言っていた「警察組織全体を敵に回す」とは、このことだったのだ。

警察組織の論理を香坂と山田に諭すように言って聞かせる小野田。最後にとんでもないことを言った。

「お前たちもこの立場になればわかる。正義だけでは国民の真の安全というものは守れない。お前たちの目指す捜査一課長というものは、(フフッ)そういうものなのだ」

小野田の背後にある歴代捜査一課長の名が書かれたボードが写るシーンで、『捜査一課長』(テレビ朝日)の大岩純一(内藤剛志)の名前が書かれていたと話題になったが、大岩さんならそんなことは言わないだろうなァ。ちなみに香納倫太郎という人物もいたが、これは『警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日)の加納倫太郎(渡瀬恒彦)のことだろう。また、第6話以降で元捜査一課長として登場する富永拓三(梅沢富美男)の名前がない! まさか偽捜査一課長? と盛り上がっている人もいるが、たぶんそれはミスだ。

最後にわざわざ三笠がやってきて、香坂に「敵は味方のフリをする」と告げて去っていく。今回、小野田は香坂たちにやたら協力的だったが、やっぱり本当の敵は小野田なのか? まぁ、ゴーンバンク中田社長とも密会していたし、天下りにかかわっていないわけがないんだよなぁ……。というわけで、スッキリしないまま、豊洲署編へ!

『小さな巨人』が爆発するためのポイント


筆者は第5話を見て、『小さな巨人』を楽しむためには、あまり細かなことを考えないほうがいいという結論に達した。あまりにも犯人逮捕までのロジックに穴が多すぎるからだ。しかし、まったく楽しめないというわけではない。筆者が考える『小さな巨人』を楽しむポイントは以下の3つだ。

1. 長谷川博己と岡田将生、あるいは長谷川と安田顕のバディ感を楽しむこと。
2. 香川照之をはじめとした俳優陣の熱演を楽しむこと。
3. いかに巨悪を倒すかに注目すること。

1.と2.は非常にわかりやすいと思う。問題は3.だ。

スタッフの多くが共通している『半沢直樹』と比べられることが多い『小さな巨人』だが、今ひとつカタルシスがない。それは主人公の香坂が悪事を働いた人間を追い詰めきれていないからだ。顕著な例が今回の三笠である。『半沢直樹』なら土下座ものの悪党なのに、罪を逃れてのうのうと悪態をついている。

それが警察なのだ、それが巨悪なのだ、ということなのかもしれない。平井堅の主題歌は「ノンフィクション」というタイトルだが、これが偉い人たちの疑惑は追及しきれずに終わることが多いこの国のノンフィクションなんだよ、ということなのかもしれない。

でも、と思う。フィクションであるドラマは踏ん張ってそれをやるべきなのだ。巨悪の存在を匂わせているなら、それは倒してほしい。そのためには制作陣が相当頭を使わなければいけないだろう。最初からその線を捨てている『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジ)はあまり感心しない。

来週からの豊洲署編では、不正渦巻く学園の悪徳理事長(和田アキ子)らが登場する(「不正渦巻く〜」というのはTBSが使っているフレーズ)。当然、視聴者は世間を騒がせていた某学園のことを連想するだろう。ちゃんと土地を不正に安く購入したというトピックも盛り込まれている。ひょっとしたら名誉校長として首相夫人も出てくるかもしれない(出てこないだろうけど)。


脚本の穴はこの際、目を瞑ろう。緻密なストーリーは別になくてもいい。でも、それなら巨悪を倒そうという熱量が必要なんじゃないだろうか。現実では絶対に倒せなさそうなヤツを徹底的に倒したから『半沢直樹』はフィーバーを巻き起こした。『小さな巨人』が今後爆発するためには、そのあたりがポイント」なんじゃないかと思う。
(大山くまお イラスト/Morimori no moRi