さらに、医療現場に詳しい健康ジャーナリストは、こんな話をする。
 「食事を摂るときの水を飲む行為は、実は見事なまでに太る原因となります。水にはカロリーはないのですが、大量に摂る人と、ほとんど摂らない人では、同じ物を同じだけ食べても、水をたくさん飲む人の方が体重が増えやすい。また、唾液そのものについては、年齢に伴い唾液腺が成熟していき、咀嚼などの刺激がなくても自然に流れ出る安静時唾液の量は増加する。それは30歳頃最大に達し、年を取るにつれて減少していきます。やがて唾液腺に委縮、脂肪化が起こり、機能が衰え、主として漿液性唾液というものが減少し始める。そうなると、口腔内の雑菌が水分などで押し流される形で、小腸や大腸に達し、体内の細菌のバランスを崩し、健康を害する可能性が高くなるのです」

 人間の腸内には、数百種類の細菌が生息している。その数は約100兆個、重さにして1〜1.5キロと言われる。
 歯科クリニックの院長はこう話す。
 「最近の歯科医師会の研究でも明らかになったことですが、腸内の細菌は人間が生きていく上で必要な乳酸や酢酸などを産出し、腸内を酸性にして悪玉菌の増殖を抑え、病原菌の感染や発がん物質の産出を抑える働きがあることが分かっているのです。具体的には、がんや糖尿病、アレルギー、神経疾患、肥満などと関連し、脳への影響からうつ病との関係も指摘されています。こうした点から見ても、小腸や大腸の雑菌の増殖を抑えるために、唾液がいかに大切であるかを認識する必要があるのです」

 人は、食べ物を口の中に入れ、噛むことで唾液が多く出て、口腔内の食べカスを洗い流す。また、食べたり話したりするときに、舌や頬の筋肉が動くことでも、食物のカスを取り除きもする。これらは必要不可欠な生理的なことで、自浄作用となる。
 「よく噛むことにより、唾液の量は増える。噛めば噛むほど、自浄作用は高まるのです。そのため、食べ物を水で流し込むことは、その自然の流れに逆らうことになるのです」(専門医)

 こんな話がある。横浜市に住む自営業の久保直哉さん(仮名・67)の例だ。
 「私は、50代で歯の大半を虫歯でなくしてしまいました。一時は入れ歯を作りましたが、だんだん合わなくなり、最後は使うのをやめてしまいましてね。だから当然、硬い食べ物はダメ。よく噛んで食べろと言われてもできない。だから、食事はお茶漬けが多い。パンも食べますが、喉につっかえそうで、水やコーラなんかで流し込んでいたんです。すると60歳になって、耳の下あたりが痛くなって医者に診てもらったら、菌が入って炎症を起こす唾液腺腫脹と診断された。おまけに健康診断では糖尿病と指摘されてしまったんです」

 原因をたどれば、噛む行為が少なくなったことで唾液が減り、食べ物を水で流し込む行為で雑菌が繁殖したことが問題。いかに唾液が重要か、が分かる。
 「食事中に水分を摂ることを習慣にしている人が、いきなり飲まないようにするのは難しい。ならば、徐々に水分の量を減らし、できれば食事の後に飲むようにすることです」(専門医)

 習慣づいてしまっているその行為が、体の状態を危うくする可能性があることを知ろう。