「どすこい酒場玉海力」のちゃんこ

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 相撲ブームを追い風に各地で繁盛しているように見えるのが、引退した力士たちが経営する「ちゃんこ屋」だ。果たしてランキングでそのトップに立ったのは──。元力士が経営者、店主を務める全国の主要なちゃんこ店について口コミサイト「食べログ」での評価を調べ、ランキング化した。

 トップで並んだのは「ちゃんこ芝松 中目黒店」と「どすこい酒場玉海力 広尾本店」の2店舗だった。「芝松」の代表を務めるのは元三段目・玉龍馬の鈴木新平氏だ。

「もともとは父が目黒区緑が丘に昭和32年に創業したお店で、自分は3年前に独立しました。うちのちゃんこ鍋(1人前2500円)は味噌、醤油、塩、キムチと4種類の味つけがあり、味噌味を頼むお客さんが多いですね。

 現役力士では、玉鷲や嘉風がよく来てくれていますよ。それから伊勢ノ海親方(元前頭・北勝鬨)もいらっしゃいますね。相撲部屋のちゃんこはいくらでも食べられるようにあっさり味だけど、うちの店のちゃんこはパンチが効いていて濃厚。力士たちもそういう味を求めて来てくれるんだと思います」

 一方、「どすこい酒場」は元前頭・玉海力の河邉幸夫氏が代表。取材に応じた担当者は、「おすすめメニューは塩ちゃんこ(1人前2480円)。この塩味はうちの店が元祖」と胸を張る。鍋に入るつくねは毎朝、一から練り込んだ自慢の品だという。出汁はあっさりしながらもコク深い。

 興味深いのは、ちゃんこ屋のランキングが必ずしも店主・代表の現役時代の番付や人気と比例していないことだ。現役引退後、東京・江戸川区で「ちゃんこ板井」を開いた経験のある板井圭介氏(元小結・板井)はこういう。

「現役時代の番付とちゃんこ屋の人気は別物ですよ。有名力士は化粧まわしを飾ったりして客寄せにできる部分はあるが、出世したぶん部屋でちゃんこ番なんてやったことがないから、味付けを考えたりできないわけです」

 元力士としての看板だけでは、店は繁盛しないのだという。板井氏が続ける。

「ちゃんこ屋経営で難しいのは、夏場に客足が落ちること。冷やしちゃんこであるとか限定メニューを考えたが、私の店では見向きもされなかった。立地も微妙で、両国界隈だと東京開催場所中は繁盛するが、1月、5月、9月の年3か月で1年分を稼ぐぐらい売り上げないと厳しい」

 両国界隈では8位に「ちゃんこ霧島」がランクイン。「この店は経営する陸奥親方(元大関・霧島)の部屋の向かいにある。部屋で稽古を見てくれたお客さんたちに“ちゃんこは向かいのお店で”といったかたちで声がかけられる。巧みなビジネスの仕組みになっています」(同前)

 各店舗が様々な工夫を凝らして、現役引退後もガチンコで勝負しているのだ。

撮影■渡辺利博

※週刊ポスト2017年5月26日号