ソニーの有機ELテレビは迫力のサウンド体験もできる

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 テレビの技術進化が目覚ましいが、今年は各電機メーカーから〈液晶の次の本命〉との呼び声高い「有機ELテレビ」が相次いで発表され、“有機EL元年”といわれている。

 そもそも、液晶テレビと有機ELテレビはどこが違うのか。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏が仕組みを解説する。

「液晶テレビはバックライトで画面を照らして映像を映し出しますが、有機ELテレビは電圧をかけると画素単位で自ら発光する有機物をパネルに使っているので、激しい動きもなめらかに表現できるのが特徴です。

 発光しない部分は“漆黒の黒”になるため、光漏れによって黒が白っぽく見える(黒浮き)液晶に比べ、暗い映像の階調性(濃淡)がより高くなりました」

 よくテレビや映画などでは闇のシーンが出てくるが、真っ暗な中でも細部の景色や人の表情などが認識しやすくなる。有機ELディスプレイが医療現場で使うレントゲンに採用されているように、暗部のコントラストをはっきりつけられるのが最大のメリットだ。

 また、バックライトが不要な構造ゆえに、省電力化や薄型化が可能になったという。だが、その一方でこんなデメリットもある。

「液晶テレビのようにバックライトを強めるといったことができないので、ピーク輝度(最も明るい場所の輝度)は液晶に及ばないといわれています。とはいえ、映画など比較的落ち着いた暗めのシーンが多い映像の場合、それほど不利になることはありません」(安蔵氏)

 有機ELテレビの基本性能が分かったところで、安蔵氏に各社新商品の特徴を挙げてもらった。

◆東芝「REGZA X910シリーズ」(3月発売済み)

 東芝の特徴は「地デジがきれい」なこと。Ultra HD Blu-rayなどの4Kネイティブ映像がきれいなのは当然ながら、圧縮率が高くて画質が悪い地デジのブロックノイズや、字幕周りにちらつくモスキートノイズなどを検知して取り去った上で、「超解像技術」によって4K映像に仕上げるというのが得意。

 たまにしか見られない4Kネイティブ映像だけでなく、普段のほとんどの時間で見ている地デジ映像をきれいに仕上げるというのがセールスポイント。

◆ソニー「BRAVIA A1シリーズ」(6月10日発売予定)

 ソニーは画面そのものが振動し、まるで映像から音が出ているようなサウンド体験ができる「アコースティックサーフェイス」を採用した。

 画面から音が出る技術は、2002年にオーセンティックとNECアクセステクニカが共同開発し、NECのパソコンに搭載した事例があるが、単に音が出るだけでなくクリアで高音質な、4K有機ELパネルが映し出す美しい映像にも見合うほどのサウンドを実現しているのが大きな特徴。

 スタンドはパネルを床に直置きしてわずかに後ろに傾いているようなスタイルになっており、映像だけが浮かんで見えるようなデザインも魅力的だ。

◆パナソニック「VIERA EZ1000/EZ950シリーズ」(6月16日発売予定)

 EZ1000シリーズは「Tuned by Technicsスピーカー」を搭載。EZ950とともに、日本設計・日本生産の「ジャパンプレミアム」シリーズとして展開する。

 サウンドバーのように独立したスピーカーは、薄い本体から1本のスタンドで接続されているのが特徴。先日復活したオーディオブランド「テクニクス」の開発陣と連携し、VIERA史上最高画質にふさわしい音を実現したとしている。

◆LGエレクトロニクス「OLED W7Pシリーズ」(5月12日発売)

 同社のプレミアムブランド「LG SIGNATURE」製品として発売。ディスプレイと接続する「コンパニオンボックス」を用意しており、そこに内蔵するスピーカーがサラウンド機能を搭載している。

 ドルビーの「ドルビーATMOS(アトモス)」というサラウンド技術に対応しており、音に包み込まれたり、上から音が降ってくるような、これまでにはないサウンド体験が得られるようになっている。以前のLGの4K有機ELテレビは暗部が黒つぶれしていた印象があったが、最新モデルではそういった弱点もなく、しっかりと暗部の階調も出るようになっている。

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 画質の良さのみならず、音質も格段に向上させた有機ELテレビ。2020年の東京五輪を契機にテレビの買い替えを検討している人にとっては選択肢のひとつになるだろう。だが、安蔵氏は「最大のネックはコストパフォーマンス」と指摘する。

「液晶に比べて画質がいいとはいえ、65型で実売価格は85万円前後、最上位モデルだと100万円もする有機ELテレビをポンと買える人はほんの一握りでしょう。また、有機ELパネルを量産できるメーカーが少ないため、液晶のように価格が下がってくることはしばらくないと思います。

 画質とサウンド体験に新たな価値を見出したい人なら悪くない選択ですが、リーズナブルな液晶テレビでも十分に高画質になっており、一般の人にはそれほど響かないのではないでしょうか」

 有機ELテレビが受像機の歴史を塗り替える「次の本命」になるためには、やはり普及価格帯まで値段を下げ、液晶のシェアを奪っていく必要がありそうだ。

写真提供■安蔵靖志