北朝鮮当局は、国外からの情報流入および国外への情報流出を防ぐために、携帯電話を使って中国や韓国と通話する行為を厳しく取り締まってきた。

韓国の北朝鮮専門ニュースサイト、ニューフォーカスによれば、最近になりこうした違法通話の摘発件数が大きく減っている。ただ、北朝鮮当局の取り締まりが功を奏したわけではない。人々がカカオトークやLINEなどのメッセンジャーアプリを使うようになったからだ。

国際電話で死刑

北朝鮮当局は以前から、こうした動向を警戒して「LINEやカカオトークを使う者はスパイとして取り締まれ」との方針を打ち出していたが、効果は上がっていないようだ。

韓国に来て5年になる脱北者のチェさんは今月8日、北朝鮮に残した家族から「オボイナル(父母の日)おめでとう!」とのメッセージをカカオトークで受け取った。

「オボイナルは韓国だけのもので、北朝鮮にはない。この日がやって来るたびに、北朝鮮に残してきた子どもたちが恋しかった。だけど今年はメッセージが届いて幸せだ」(チェさん)

中朝国境付近には、中国や韓国との通話を取り締まるための電波探知器が設置されている。だが、それで探知できるのは通常の音声通話だけで、スマートフォンにインストールされたメッセンジャーアプリによるチャットや通話は引っかからない。

また、カカオトークにはシークレットトークという機能がある。カカオジャパン社の説明によると、エンドツーエンド暗号化技術を適用し、暗号化キーを取得して分析しない限りはトーク内容を見れないようにする技術が用いられているという。北朝鮮当局が、これを解読する技術を有しているかどうかは定かではないが、難易度は高いと見られる。

別の北朝鮮情報筋によると、国境地帯に電波探知器が設置された当時、人々はたいへんな恐怖心を持ったという。違法な国際通話が当局に捕捉されたら、死刑もあり得るのだから当然だろう。

(参考記事:北朝鮮当局、韓国と「携帯通話」した女性3人を「見せしめ」で処刑

しかし、今では恐怖心もなくなり、存在を気にしないようになった。

今年に入り、違法通話で摘発された人は10人を下回っている。カカオトークを使うようになって、当局が取り締まれなくなっただけのことだという。スマホとメッセンジャーアプリの人気に押され、ガラケーを使って音声通話をする人は激減したとチェさんは語った。

別の脱北者のパクさんによると、スマホとアプリが人気を集めるようになったきっかけを作ったのは北朝鮮に住む華僑であるという。彼らが中国製のスマホを使って、中国や韓国とやり取りをしているのを見た人々が、脱北して韓国に住む家族にねだり、スマホをプレゼントしてもらうとのことだ。

「私が脱北した後に北朝鮮で生まれた甥たちとビデオ通話した。かつては声さえ聞ければ満足していたが、そんな時代はもう終わった。互いに顔を見て通話できるようになり、ホームシックがかなり解消した」(パクさん)

韓国に来て2年目の脱北者、キムさんは、北朝鮮に残してきた家族にスマホをプレゼントした。

「K-POP好きの15歳の娘に、アプリでK-POPのミュージックビデオを送ってあげた。すると1ヶ月後には、曲に合わせて踊れるようになっていてとても驚いた。1日も早く脱北させて、韓国で自分のやりたいことができる人生を送らせてあげたい」(キムさん)

国家保衛省(秘密警察)は、違法通話を見逃す代わりに多額のワイロをむしり取ってきたが、メッセンジャーアプリの流行にどのように対処するのだろうか。