「こんな判定見たことない!」「ことはない!」

むー、残念です。日本ボクシング史上最強の男の誕生を確信したあとで、まさかの判定に愕然としました。WBA世界ミドル級王座決定戦、日本の村田諒太の試合。「どっちが強い」の印象論でいえば、村田の勝ちは100%だったと思います。ここが酒場で無制限の殴り合いなら、相手はノーチャンスでした。何度もカウンターに叩きつけられ、葡萄酒まみれになっていたでしょう。

しかし、ボクシングとなれば話は別。「ぶん殴って気絶させた」以外の勝ち負けの決定には、それなりの決まりや仕組みがあり、それは必ずしも村田諒太のボクシングと一致するものではありませんでした。

ボクシングの勝敗を決める基準は、各団体によって差異はあるものの、大きくわけて「有効打・ダメージ」「攻勢」「ディフェンス技術」「リングジェネラルシップ・主導権」といったところが挙げられています。村田諒太の試合では、有効打・ダメージに関しては圧倒的に村田でした。1度のダウンだけでなく、少なくとも2度、おそらく5度、ロープがなければそのまま転んでいただろう場面がありました。

しかし、一方で村田はガードを高く上げて守りを固めつつ、一撃の右を叩き込んでいく大鑑巨砲スタイル。有効かどうかはともかくとして、相手を手数で上回る場面は乏しく、「攻勢」や「ディフェンス技術」といった部分ではなかなか評価されづらいだろう戦い方です。主導権という意味でも「村田が相手にプレッシャーをかけた」と見るか「相手が村田をフットワークでいなした」と見るかで、同じ睨み合いでも意味合いは変わってきます。

それでも、あれだけ有効打を当て、相手の有効打はほとんどない状況なら村田諒太が勝って当然と思った。勝つべき試合だという想いは変わりません。ただ、得てしてこういう判定があるのも事実。特にWBAでは摩訶不思議な試合が起きることがままあります。

この試合を見ながら思い出したのは、かつてのWBAジュニアバンタム級王者・鬼塚勝也さんの5度目の防衛戦、対・李承九戦のこと。この試合で鬼塚さんは試合中に1度のダウンを喫し、顔面を血で真っ赤に染めながら判定勝利をおさめました。めっちゃ打たれたし、めっちゃダメージがあった。しかし、勝ったのは鬼塚さんだった。そのときに言われたのが「攻勢」でした。鬼塚さんは前に出て、手を出した。そこが評価されたのでしょう、と。

結局は「ぶん殴って気絶」以外はどう転ぶかわからないのがボクシングです。あるべき姿としては、「ぶん殴って転ばす」を達成した選手がいたなら、相手も同じ回数だけ「ぶん殴って転ばす」を達成しないかぎり判定では勝てないということにすればよいとは思います。ただ、今現在そうはなっていないので、こんなこともある。ダウンしても判定で勝った鬼塚の逆パターン、ダウンしても判定で買った亀田の逆パターンは、ある。WBAでは、ある。

日本ボクシング史上最強の男は村田諒太「だろう」というのは感じられましたが、それを証明するには至らなかったこの試合。31歳という年齢、早くも喫した1敗ということを考えると、本当に目指していた舞台……ラスベガスの大ホールでこの階級の絶対的存在・ゴロフキンと戦うという野望は、かなり遠のいたと言わざるを得ません。

「これで日本最強の男は竹原慎二(ガチンコファイトクラブ)のままか…」

ゴロフキンまでいくような男なら、このくらいの相手は「ぶん殴って気絶」させて欲しかった。できそうな試合だっただけに悔やまれます。

ということで、現実を受け入れるべく20日のフジテレビ中継による「WBA世界ミドル級タイトルマッチ アッサン・エンダムVS村田諒太」戦を、ジャッジフモフモとともに振り返っていきたいと思います。

◆夢を膨らませるのは大変だけど、割れるのは本当に一瞬!

大観衆を飲み込んだ有明コロシアム。日本ボクシング史上で、ミドル級で「希望をまとって」戦いに臨む選手はこれが最初かもしれません。会場には歴戦のボクシングファンが、熱く、激しく、期待をみなぎらせています。タダの日本人挑戦者の試合ではなく、日本のボクシングを背負った試合。君が代の響きもいつもとは少し違って聴こえます。

対戦相手のエンダムは元WBA・WBOの同級王者。とは言え、ものすごい王者かというと暫定王者での戴冠がつづいており、「本当に強い王者をぶん殴ってやっつけてタイトルを獲った」とまでは言えない選手。村田諒太が本当に大きな夢を見るのなら、乗り越えたい高さの壁です。ここで引っ掛かるようだと「あぁ、そんなもんか」感が出てしまうでしょう。

↓いけいけ村田!ミドル級を獲れ!


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1R。村田はガードを高くあげてジワリと前進。エンダムは足を使って村田の周囲をまわりながらジャブで様子をうかがいます。村田は1分30秒間まったく手を出さず、エンダムのジャブをガードで受け続けます。チカラを探るような動きです。結局村田が放ったパンチは3発。ラウンド終わり際の右ストレートは相手のガードを叩いて有効打にはならず。さすがに3発では何もしていないのと一緒です。10-9、王者のラウンドです。

2R。ひきつづきエンダムが村田のガードを叩き、村田がそれをにらみつけるという攻防。ラウンド終わり際に、村田が打ちおろしの右がヒットしたことを糸口に右の大砲を4発当てて攻勢に出ますが、エンダムも盛り返して数発パンチを返してラウンドをまとめます。ダメージで言えば村田に優位だったようにも見えましたが、当てたパンチの数は大差ナシ。手数で言えばエンダムが圧倒していることは変わらず。10-9、王者のラウンドとしかつけられません。

3R。笑顔も見える村田ですが、左右のこめかみあたりが赤く腫れ始めています。ガードしていても痛いものは痛いか。じょじょに手を出し始めた村田は右の大砲を1発、2発、3発と当て、エンダムを後退させます。特にボディに伸ばしたストレートは重たい音を響かせ、エンダムの動きを止めるものでした。9-10、手数は少ないながらもダメージをとって挑戦者村田のラウンド。

4R。さらに前進を強める村田は、相手のパンチをガードで受けながら、ときおりズドンと重たい一発を放ちます。エンダムはガードをあげて顔面を守り始めますが、そうくれば左のボディが下から飛んでくる。これもまた重たい。そして残り35秒で放った右のストレートは、エンダムのアゴをとらえて一発でダウンさせました。8-10、挑戦者村田のラウンド。しかし、エンダムもダウン後に気迫の反撃と、クリンチでの時間稼ぎを見せ、「ダウン」以上の「追撃」や「主導権」までは譲りませんでした。このあたりはベテラン、試合巧者です。

↓当たれば倒れる重たい一発!いけるぞ村田、ミドル級王者!


酒場のケンカならここで葡萄酒のビンで殴って終わりなんだけどなぁ!

誰か葡萄酒のビン貸してくれ!

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5R。ダウンを奪った直後のラウンドですが、村田のペースは変わらず。重たい一発はあるものの、連打がつながる場面はほとんどなく、効いてはいるものの仕留めるにはいたらず。ラウンド終わり際には2度、ロープに引っ掛かってかろうじて転倒しなかったというだけの場面がありましたが、そこでダウンを取れなかったのが振り返れば痛かったですし、ボクサー村田の課題かもしれません。あと一発、押せば倒れた相手を押すパンチを村田は打たないし、そういうボクシングをしていない。9-10、これだけ押しながら村田1ポイントのリードしか奪えません。

6R。エンダムはふらふらしている状態。それでも、何とか一方的に押し込まれないよう、見せかけの反撃をしてくるのは巧みです。ただ、効いていることは変わらないので、ちょっと体勢が崩れれば勝手に転びそうな状態。残り1分ではエンダムをロープまで吹っ飛ばす強烈な一撃を放ちますが、ここもロープでバウンドして倒れず。ワンは超強力なのに、ツーがない。9-10、村田が圧倒しながら奪ったリードはまたも1ポイント。

7R。解説の西岡さんからは「エンダムは足を使って休んでますよ」と指摘も飛んだ中盤戦。村田はここ3ラウンドの流れをそのままに、大砲を放ってエンダムを仕留めにいきます。残り1分13秒では相手がヨロめくような右をぶち当てますが、抱きつかれてダウンには至らず。残り1分では後退したエンダムが転倒する場面も。村田のパンチがあとひとのびして、かすりでもいいから顔に当たっていれば…と悔やまれる場面。実質ダウンでありながら、採点上はダウンにはならない転倒。さらに村田はエンダムを吹っ飛ばす右を放つも、またもロープにもたれかかってダウンを拒否。9-10、これだけ攻めても1ポイントしか取れないという村田のラウンドがつづきます。

8R。エンダムは休むために足を使い、逃げ回るという構図。村田も打ち合いではどんどん手を出していきますが、相手が逃げに徹していても追う脚はジワジワとしたもの。ハッキリした有効打が出ないと、途端に村田に点を入れる理由がなくなっていきます。もちろん相手が逃げ回っているので、ケンカなら村田が圧勝の状況なのですが、ボクシング的なポイントを取る動きが村田には少なすぎる。納得いきませんが、このラウンドは10-9、逃げながらちょこちょこ手を出した王者のラウンドです。

9R。ジャブが当たっただけでも腰が落ちるエンダム。効いていることは間違いないのですが、村田も少し疲れたか勢いが静かになってきます。逆にエンダムのフックをもらう場面などもあり、一方的とまでは言えなくなってきました。残り1分で当てた右はエンダムをグラつかせ、クリンチで凌ぐ状態に追い込みますが、そこ以外はエンダムが攻めていたかもしれません。ジャッジフモフモはダメージをとって9-10村田ですが、10-9で王者につけるジャッジがいても不思議はありません。

10R。先を考えるならそろそろ仕留めておきたいラウンド。KOでとってこそ夢は大きく広がります。しかし、いつでも倒せそうなのに、なかなか倒せないというエンダムの粘り。村田の右が空を切る場面も増えてきました。叩いているように見える場面もガードで受けられており、歓声ほどに内容は村田寄りではありません。村田は葡萄酒のビンで殴って、エンダムはメニュー表で殴り返すような戦いなのですが、エンダムのメニューのほうがクリーンに当たった回数は多く見えます。10-9、ビデオで見れば王者のラウンド。

11R。残り1分45秒で村田の右がエンダムの顔面をとらえると、明らかに効いているのに「効いてませーん」のポーズを取るエンダム。残り40秒では強烈なボディを2発入れて、エンダムをグラつかせます。それでもエンダムは打たれた直後は必ず気合を入れて打ち返し、すごい効いているけど一方的に殴られたのではなく「打ち合い」であるという演出を欠かしません。ダメージはどう見ても村田ですが、手数・有効打では必ずしもそうとは言えない。9-10、ジャッジフモフモは村田に入れます。

12R。ズドンと重たいストレートを当てると、迷わずクリンチにくるエンダム。ロープに押し込んでズドン、ズドンと村田が攻め立てます。エンダムは距離を置いたところから飛び込んでクリンチするという大胆な逃げも打ち、時間を稼いでいきます。残り10秒、飛びつきクリンチで最後まで逃げたエンダム。さすがにこれだけ逃げまくったらポイントはあげられません。9-10、村田のラウンドです。

そして判定へ。村田はジャッジペーパーの読み上げの前から拳をあげて勝利を確信しますが、一人目のジャッジは116-111でエンダムを支持します。「えー」という声があがる場内。そして二人目ののジャッジは117-110で村田を支持。そして運命の三人目、最後のジャッジは115-112でエンダムを支持。まさかの判定で、村田敗れます。

↓ええええええええええええええ!あんだけボコボコにしたのに負けるんかい!

ちなみにジャッジフモフモの採点は116-111で村田!

ただ、印象ほど差がついていないのも確か!

印象ではエンダムは葡萄酒まみれですが、ビデオで落ち着いて見直すとそうでもない!

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振り返った実感としては、「勝ったな」という気持ちは変わりませんが、「あり得るな」というのも感じます。逆の立場なら身びいきでエンダムに入れたかもしれないラウンドが、ジャッジフモフモにも3つありました。ボコボコにした度合に比べて、ボクシングとしては僅差の試合だったと思います。

ミドル級王座獲得を目指して再挑戦するかどうかは現時点では不透明ですが、村田のボクシングは「倒さないと負けやすいボクシングだな」と思います。もうひとつの連打、もうひとつの試合運びの上手さがあれば、ボコボコをそのまま採点に反映させることもできたはずですが、これが村田のボクシングなのでしょう。倒すしか道はない。

それでもこの階級の王者になれるだけのチカラがあることは間違いありません。あのパンチは当たれば倒せるものだと、この日の試合でも証明してみせました。次回はロープに電流を流すなど、ロープにつかまって粘る相手を確実に殺せる仕掛けを用意して挑みたいもの。ロープさえなければ相手は5回くらいダウンしていたはずですから…!

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