アメリカとアサド政権を同レベルで語ってはいけないと語るモーリー氏

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『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンがシリアのアサド政権や北朝鮮情勢に関して、日本のメディアが無検証で垂れ流しにする問題について語る。

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“False Equivalence”という英語の言い回しがあります。日本語に訳せば「誤った等価関係」という感じでしょうか。要するに、まったく釣り合わないものを並列に論じることで「中立な両論併記」を装うような、一種の詭弁(きべん)のことですが、日本では、特に戦争や軍事の分野でこの“False Equivalence”を平気で口にする政治家や専門家が少なくありません。

例えば、アサド政権が化学兵器を使用したという理由で、アメリカのトランプ大統領がシリア空軍基地をミサイル攻撃した件。アサド政権側は「不当な侵略」とアメリカを非難し、同政権を擁護するロシア政府も「国際法違反だ」と反発していますが、まぁ、彼らの立場ならそう言うわな…という話です。

ところが、驚くのは日本の“中東専門家”を名乗る人物や著名な論客までもが、アサドやロシアの言い分と同じように「アメリカの暴走」ばかりを指摘したり、大量破壊兵器の有無が問題となった2003年のイラク戦争開戦と重ねて論じていることです。

アサド政権による民間人の大量虐殺をスルーしておきながら、アメリカの攻撃は“侵略”ですか? 欧米メディアでは、シリアやロシアの当局や政府系メディアの発表がいかに“政治的”かという警告がなされているというのに、そのプロパガンダを丸のみするんですか?

「アメリカにだってクラスター爆弾などの使用疑惑がある。アサド政権を一方的に責めるのは欺瞞(ぎまん)だ」

「そもそも今日の中東の混乱は欧米による植民地支配から始まった」

などの“どっちもどっち論”も散見されますが、これは一見、フェアなようでいて、実際は最も悪辣(あくらつ)な人間を擁護しているのと同じです。いくらなんでも、アメリカとアサド政権を同レベルで語ってはいけない。メディアがその意見を無検証で垂れ流してどうするんですか。

アメリカの軍事力行使をめぐり緊張感が高まっている北朝鮮情勢に関しても、状況は同じです。

「戦争はやってはいけない」「外交努力で解決を模索すべきだ」

まさに、ジョン・レノンとオノ・ヨーコがベッドで抱き合うラブ&ピースな世界観。美しい。でも、それができるなら誰だってそうします。現実に存在する深刻な問題を無視した論説は、もはや報道やジャーナリズムの範疇(はんちゅう)にはありません。

耐え難い緊張とリアリズムに直面したとき、空想や理想に浸りたくなるという心理は誰にでもあります。ただ、専門家やメディアで働くプロは、努めて客観的に事実と対峙する必要がある。この状況下でも、大手メディアの報道が“有事モード”に変換されず、シリアスな議論を深掘りできないのは嘆かわしいことです。

おそらく今後、北朝鮮情勢に関して「日本に米軍基地があるからミサイルの攻撃目標になる(=悪いのは米軍基地だ)」「そもそも朝鮮半島が分断されたのはかつて大日本帝国が…」などと言い出す人も出るでしょう。すでに「金正恩よりトランプのほうが何をしでかすかわからない」などという論説も聞こえてきます。

しかし、これ以上の現実逃避は自分たちの首を絞めるだけ。“本当に起きるかもしれない危機”と正面から向き合っておかなければ、いきなり来る「核」や「テロ」や「大量難民」にパニックになってしまいますよ。

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)

1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム〜あなたの時間〜』(月〜金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など