一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)ホームページより

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 日本音楽著作権協会(JASRAC)の一連の問題が、またもや世間を賑わせている。

 京都大学のホームページに掲載された山極壽一総長の入学式の式辞に、ボブ・ディランの代表曲「風に吹かれて」の歌詞の一部が引用されているとして、JASRACが大学側に対し楽曲使用料が生じると指摘していた旨が報じられたのだ。

 式辞では、〈How many times can a man turn his head/And pretend that he just doesn't see?〉など、「風に吹かれて」の歌詞から数節を引用。それらを通して、既存の常識を疑い、自由に発想することの大切さを訴えていた。

 JASRAC側の指摘に対し、大学側は正当な引用の範囲内であるとし、現在でも式辞の掲載を続けている。ホームページには引用した出典の記載もあり、どこからどこまでが引用なのかの区分も明確で、「自己の創作部分が主であり、引用部分が従であること」という引用の要件も満たしている。これに使用料を請求したのであれば、それはメチャクチャな話だ。

 JASRACといえば、今年2月にも大きな騒動を起こしたのは記憶に新しい。ヤマハ音楽教室などの音楽教室での演奏にも今後は著作権料を徴収するとの方針を発表し、大反発を招いたのだ。

 未来の音楽産業の担い手を育てる教育事業からも金をむしり取るような対応には、当然多くの人から疑問の声が寄せられ、ヤマハ音楽振興会のほかに河合楽器製作所や全日本ピアノ指導者協会などが加わった「音楽教育を守る会」もすぐさま発足された。

 ご存知の通り、今月16日には、音楽教室での著作権をめぐる問題にも進展があった。ヤマハ音楽振興会が「教室での演奏には著作権は及ばない」として、JASRACへの支払い義務がないことの確認を求める訴訟を、7月にも東京地裁に起こす方針を固めたと報じられたのだ。

 ただ、JASRACという組織の強欲さが問題になったのは、なにもいまに始まった話ではない。過去には、不当裁判、裏金、天下り、独占禁止法違反など、多くの問題が明るみになっている。

 本サイトでは今年2月、そういったJASRACにまつわる黒い話の数々についてまとめた記事を配信したことがある。ここに再録するので是非読んでみてほしい。

 Apple MusicやSpotifyなどの定額制ストリーミングサービスの運用が本格的に始まって久しい。CDはもちろん、ダウンロード販売で音楽を聴くリスニング習慣すら過去のものとなりつつあり、音楽ビジネスは劇的な変化を迫られている。そんな激動の時代でも著作権管理のほとんどのシェアをいまだにJASRACが握っている状況には疑問の声をあげていく必要があるだろう。
(編集部)

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 日本音楽著作権協会(JASRAC)が発表した、今後の著作権料の徴収方針が波紋を呼んでいる。なんと、ヤマハ音楽教室などの音楽教室での演奏についても今後は著作権料を徴収するというのだ。JASRACは教室の年間受講料収入の2.5%を徴収する案を検討しており、来年1月から徴収を開始したいとしている。

 これには反対の声が相次いだ。ヤマハ音楽振興会の三木渡常務理事は「教育目的での利用であり、カラオケなどと同じ扱いはおかしい」と声明を出し、3日にはこの問題に対処するため、ヤマハ音楽振興会の他に河合楽器製作所や全日本ピアノ指導者協会などが加わった「音楽教育を守る会」も発足された。今後の成り行き次第では訴訟に発展する可能性もあるとみられている。

 音楽教育の現場にまで徴収の手を伸ばそうとする何とも信じ難い行動だが、しばしば「ヤクザ」などと揶揄される通り、JASRACはこれまでも強引な手法で常に徴収の手を伸ばし続けてきた。そして、その徴収の手法も度々問題となっている。

 JASRACは新入社員や委託したスタッフを動員して、日本全国津々浦々のカラオケスナック、ジャズ喫茶などの小規模の個人商店まで一軒一軒しらみつぶしにまわり、音楽を流していたりカラオケ機器を置いていたりといった様子を確認し、使用料を徴収している。

 その徴収に事業者が応じなかった場合、JASRACは裁判を通して支払いを迫る。2015年に、171事業者258施設に対し一斉に民事調停を申し込んだ件は大きな話題となった。しかしそれのみならず、結果的に逮捕にまでいたるケースもある。07年にはバー営業の延長でライブ演奏を提供していた飲食店の店主が逮捕されている。この件では店主がJASRAC管理下の曲を演奏していたこともあり店側に一切の非がないというわけではないが、この件で請求されていたのは過去10年分840万円にもおよび、小規模の飲食店に対しこの多額の著作権使用料を請求することに正当性があるのかどうかには疑問が残る。

 では、そのようにして集められた著作権使用料はどのようにして使われていくのか。その不透明さもしばしば問題とされる。JASRACに文科省の天下り人員が多くいるのはよく知られているが、それ故か、過去には「カネ」にまつわる大きなスキャンダルも起こしている。

 一つ目は1964年に著作権使用料から1億円の裏金を用意し、役員への裏給与や文部官僚への接待費などにあてていた事件、そしてもう一つは1994年に発覚した古賀政男音楽文化振興財団に対する巨額融資問題だ。この90年代の事件では、JASRACから無利子で借りた数十億円を元手に古賀財団が自社ビルを建て、そこにJASRACが入居して家賃収入を払うという契約が結ばれ問題となった。このときの古賀財団側の理事には文科省(当時文部省)の官僚がいたとされている。

 こういった状況には当の著作権者のなかにも不満を募らせる者が多くおり、たとえば、松山千春は「週刊プレイボーイ」(集英社)1998年5月19日号のなかでこのように語っている。

「日本音楽界の不幸は、欧米には著作権管理団体が2つも3つもあるのに、日本にはJASRACひとつきりってことだよ。いくつもあればアーティストのほうも著作権の委託先を選べるだろ? こっちのほうがしっかりしているとか、パーセンテージが高いとかって」

 日本国内で著作権管理を行うことのできる法人が長らくJASRACしかなかったのは、国が音楽分野における著作権仲介業務をJASRAC以外に許可しなかったからであるが、01年に参入規制を緩和した著作権等管理事業法が成立したことで、他の民間の会社も著作権管理事業に参加することができるようになった。

 同業他社の参入により競争原理が働くことで、手数料の引き下げや、新たなビジネスの創出が期待されたのだが、結果として起こったのは、競争ではなく、JASRACによる既得権益を守り続けるための妨害工作だった。

 妨害工作はいかにして行われたのか? それは「包括契約」という業界の慣例を悪用したものだった。

「包括契約」とは、「どの曲が何回放送されたか」などを1曲ずつ正確にカウントして楽曲使用料を算出する方法をとらず、放送局がJASRACに月単位、または年単位で一括して払うことにより「JASRACに登録されている曲はすべて使用可能」という許諾をとる方式である。つまり、JASRACがこの契約システムを変えないかぎり、放送局はJASRAC以外の著作権管理会社に登録されている楽曲を使用するごとに追加の使用料が発生することになる。

 そこで当然起きるのは、JASRAC以外が管理している曲は面倒だから放送しないという動きである。なぜなら、JASRACは市場の90%以上を独占しており、JASRACに登録されていない曲を締め出したところで、放送局側は特に不便はないからだ。

 こういったJASRACの状況に異議申し立てをし、独占禁止法違反の判決を引き出した著作権管理事業会社のイーライセンス(事業統合により昨年2月よりネクストーンに改称)の三野明洋取締役会長による著書『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』(文藝春秋)には、ラジオ局の内部でこんな文書がまわっていたと綴られている。

〈たとえば、J-WAVEが番組担当者あてに配布した「イーライセンス社 放送使用楽曲の管理業務開始のお知らせ」には、わざわざ丁寧に【選曲時のお願い】として、「前述のとおり、別途報告・支払いなど煩雑な作業が発生します。 *やむをえない場合を除いて、当面は極力使用を避けるよう、お願いします」と付け加えてあった。
(中略)
 さらに、FM NACK5という埼玉の放送局にいたっては、〈楽曲オンエアの制限について〉として、大塚愛、倖田來未、Every Little Thingなど具体的にイーライセンスが管理するアーティスト名と作品名の60曲リストを添付し、「オンエアを当分見合わせることに致します」としたのは決定的だった。後日、裁判では大きく問題視された〉

 12年に、JASRACと音楽業界のあり方に疑問を抱いた作曲家の穂口雄右氏が、自身で作詞と作曲と編曲を手がけたキャンディーズの「春一番」、「夏が来た!」をJASRACの管理下から外し、自身で管理することを発表。これにより一部のカラオケ会社で配信が停止になる騒動があったが、これも「包括契約」の制度ゆえに起こったことである。

 今回、音楽教室への著作権料徴収が問題となったのは、JASRACが金目当てに音楽教育の分野にまで徴収の手を広げようとしたことだ。言うまでもなくそういった行為は、今後の音楽産業や文化に多大な悪影響を与えるものである。今回の報道を受けて、音楽業界関係者はツイッターに相次いでこのような文章を投稿している。

〈音楽教室がJASRACに使用料を払わねばならなくなると、授業料が値上がりする。子供の頃から楽器習わせることが難しくなって、日本の音楽が衰退する。やるべきことが逆だろう〉(音楽評論家、音楽プロデューサー・高橋健太郎)
〈JASRACは自らの存在意義を根本から見直したほうがいいよ。既得権益の維持ばっかり考えて、音楽の未来を閉ざしてるとしか思えない。これもひとつの老害でしょ。音楽家めざす子供たちには逆に金出せっての。育てろ〉(音楽評論家・萩原健太)
〈音楽はタダではない。違法ダウンロードなど著作権を侵害するものに対してはもちろん厳しく取り締まってほしい。だけど、音楽を学びたい、いつか音楽の世界で花を咲かせたいと願う子供たちには、自由に楽曲を使わせてあげてほしい。それが今の私たちにできる、未来の音楽への恩返しだ〉(作詞家・及川眠子)

 未来の音楽文化を担う若い芽を潰すような今回の行動は、本当に音楽産業の未来を考えていれば決して出てくることはない発想だ。こういった人たちがいまでも日本の音楽業界の著作権管理のほとんどを手中におさめていることの問題について、わたしたちはもう一度考え直してみる必要がある。
(編集部)