ケンブリッジVSサニブラウンに待った セイコーGP、専門家が注目する第3の「新星」

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21日のセイコーGP男子100m、専門家は「下剋上」と大学3年生・多田修平に期待

 陸上のセイコーゴールデングランプリが21日、等々力陸上競技場が行われる。最大の注目は男子100メートル。ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)、サニブラウン・ハキーム(東京陸協)が出場するレースの見所はどこにあるのか。専門家は、短距離界の勢力図を塗り替える「下剋上」にあると話し、さらに新星のブレイクに期待を込めた。

 04年のアテネ五輪金メダルのジャスティン・ガトリン(米国)ら海外の招待選手も参戦するレース。日本勢は山縣亮太(セイコーホールディングス)が右足首痛により無念の欠場となったが、注目すべきポイントは多い。自己ベストが10秒10のケンブリッジ、10秒18のサニブラウンが出場。なかでも「サニブラウン選手に期待しています」と話したのは、200メートルハードルアジア最高記録保持者の秋本真吾氏だ。

「個人的には彼が一番早く9秒台を出すのではないかと思っていた」という秋本氏は、前回13日のダイヤモンドリーグ上海大会の走りに着目した。10秒22で5着、10秒19で4着だったケンブリッジには及ばなかったが「走りがすごく良くなっていたし、改良されていた」と分析。その上で18歳の雪辱に期待する。

「去年、リオデジャネイロ五輪の4×100メートルリレーで銀メダルを獲って、みんなが凄いと注目している中で怪我で昨シーズンを棒に振った若手のサニブラウン選手が大きく成長して復活してきた。上海でもケンブリッジ選手にあそこまで迫ると思わなかった。実際、80メートルくらいまではサニブラウン選手が勝っていたように見えた。今回ケンブリッジ選手にどれだけ迫れるか。そこに注目したい。」

 今年から大学生となったばかりの若手が五輪メダリストを打ち負かすことができるのか。今後の短距離戦線を占う上でもターニングポイントとなるかもしれない。

元五輪ランナーは「2人の後半の走り」に注目…それぞれの課題は?

 一方、「注目ポイントは2人の後半の走り」と話したのは、アテネ五輪4×400メートルリレー日本代表の伊藤友広氏だ。

「これまでを見ても、前回の上海を見ても、スタートが2人とも良くなってきている。サニブラウン選手は上海では前半リードしていい感じで走っているように見えた。だけど、80メートルくらいから上体が一気に立って、(重心が)後ろに乗っかっているような走りになった。そこから減速が顕著になり周りの選手に行かれた。今回は後半の走りをいかにまとめるか」

 このようにサニブラウンについて指摘。ケンブリッジの課題についてはこう話す。

「上半身と下半身のタイミング。短距離では足を着いた時、どのタイミングで腕を振っていくかというのが重要になる。ケンブリッジ選手は、前半はうまくタイミングが合っているけど、後半になるにしたがって、タイミングがずれていくように見える。タイミング良く勢いを与えないといけない。上海も大きく外れている訳ではなかったけど、まだ修正できると感じた。今季のベストが状況によっては出ると思います」

 今季のベストタイムはケンブリッジが10秒19、サニブラウンが10秒18。走りを修正出来ていればそれを上回り、10秒1台の決着もあるとみている。

 さらに、伊藤氏は「台風の目」になりうる第3の男に期待を寄せた。

「新星」と期待される大学3年生「この3人で誰が勝つかわからない」

 欠場した山縣に代わって出場が決まった多田修平(関学大)だ。4月の織田記念では桐生に次ぐ2位に入っていた期待の大学3年生。「かなり伸びてきている選手です」と明かした。

「織田記念の後の関西インカレは自己ベストを出して10秒22まで上げてきた。ケンブリッジ選手の10秒10、サニブラウン選手の10秒18に対して多田選手も記録だけを見ていくと、そこまで差はない。それぞれの調子、条件が絡んでくると、この3人で誰が勝つかはわからないくらいだと思います」

 このように話し、日本人トップ争いは三つ巴になると予測。こうした新星の出現によって9秒台を目指す日本男子短距離陣の相乗効果にもつながるとみている。

 山縣の欠場は残念なニュースとなったが、ケンブリッジ、サニブラウン、さらに多田と日本勢も楽しみな面々が川崎に集うレース。果たして、日本人トップで駆け抜けるのは誰になるのか。8月に世界選手権が控える今年の勢力図を占う上でも、楽しみが多い争いとなりそうだ。

【伊藤友広氏プロフィール】
高校時代に国体少年男子A400mにて優勝。アジアジュニア選手権の日本代表に選出され400m5位、4×400mリレーではアンカーを務め優勝。国体成年男子400mにて優勝。
アテネ五輪では4×400mに出場。第3走者として日本過去最高順位の4位入賞に貢献。
国際陸上競技連盟公認指導者資格(キッズ・ユース対象)を取得。
現在は、秋本真吾氏らと「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。

【秋本真吾氏プロフィール】
2012年まで400mハードルの陸上選手として活躍。オリンピック強化指定選手にも選出。200mハードルアジア最高記録、日本最高記録、学生最高記録保持者。
2013年からスプリントコーチとしてプロ野球球団、Jリーグクラブ所属選手、アメリカンフットボール、ラグビーなど多くのスポーツ選手に走り方の指導を展開。
地元、福島県「大熊町」のために被災地支援団体「ARIGATO OKUMA」を立ち上げ、大熊町の子供たちへのスポーツ支援、キャリア支援を行う。
2015年にNIKE RUNNING EXPERT / NIKE RUNNING COACHに就任。
現在は、伊藤友広氏らと「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。