弁護士・柳原桑子先生が堅実女子のお悩みに答える本連載。今回の質問者は、無職の山本愛里さん(35歳・仮名)です。

「婚活を1年行ない、半年前に彼と知り合い、3か月で婚約しました。彼は婚活時はシステムエンジニアをしていたのですが、40歳を機に結婚し、北陸地方にある実家の自動車販売会社を継ぐと最初から言っていました。結婚の条件は、一緒に地元で生活する女性。東京生まれの私は交際を続ける上で、躊躇したのですが、彼はカッコいいし、知的だし楽しい人だったこともあり、今の仕事にも飽きていた私は、二つ返事でOKし、トントン拍子で結婚話が進行。

先月入籍の予定で、そのタイミングで仕事の切れがよかったこともあり、勤務していたオフィス設計会社を辞めました。安定した会社の正社員の座を手放すのは残念な気持ちもありましたが、結婚を優先しました。でも、そのタイミングでささいなことがきっかけで大ゲンカに発展。私は彼にやってほしいことを言っただけなのに、彼が“やっぱり結婚したくないかも”と言いだしました。私は会社に出戻ることも不可能。

このショックにブチ切れてしまい、彼の稼ぎが少ないこと、優柔不断なことを怒りに任せて伝えたら、彼と本格的にお別れすることになってしまいました。顔も見たくないとまで言われてしまい、もうホントに人生最悪の瞬間です。私は無職になって再就職もうまくいかない……もう散々です。

彼は今、のうのうと生活していますが、絶対に許せません。この場合の慰謝料の相場が知りたいです。私たちは結婚式場などはおさえていなかったのですが、両家の挨拶は済ませており、お互いの両親の顔合わせはしています」

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まず、2人の間で婚約し、両家の挨拶を済ませ、互いの両親ともに我が子たちの婚姻を前提として顔合わせをしていたものであれば、婚約が成立していたか、それに近い状態になっていたとを客観的に信じることに“理由はある”といえるでしょう。

慰謝料のお話がでていますが、感情的に大ゲンカして別れたということしかわからないので、さらに具体的な事情が、彼の一方的な理由によるものであれば、婚約破棄による慰謝料請求ということもわかります。

しかし、そうでなく双方の主張や価値判断の違い等からくるものであったならば、主に彼のほうに責任ある婚約破棄ということはできないでしょう。

いくら慰謝料請求できるかといっても、そもそも請求自体ができるかどうかは、ケンカになった事情によります。

会社を辞めてしまった後の破談ということで、収入もキャリアも途絶え大変ショックでしょうが、辞めた時期等は自らの判断だったとすれば、その点を取り上げても彼に責任追及できる可能性は低いと思います。

質問にある事情だけからだと、2人の関係性から破談したもので、彼に責任追及するということは難しいように思います。

結婚直前に破談になるケースは少なくない。式場などのキャンセル料は、客観的に非があるほうが負担する。



■賢人のまとめ
破談の理由によっては慰謝料を請求できる可能性もあります

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/