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中古のアストン、新車のBMW

市場価格が下がっているエキゾティックカーの中でも、アストン マーティンV8ヴァンテージのアピールは強い。英国では、この素敵なクーペが、探せば£30,000(435万円)以下で見つけられるのだから。

ただし、そんな底値で買えるのは2005年に登場した4.3ℓ/385ps仕様で、2008年のマイナーチェンジを経た4.7ℓ/426ps仕様を探すなら£45,000(653万円)は必要だ。

その価格帯ならば、AUTOCARおすすめのハイパフォーマンス・クーペを新車で手に入れることも可能である。BMW M2だ。

コンパクトながらボリューム感のあるルックスはフレンチブルドッグを思わせるが、370psの3.0ℓ直6ターボはマスチフのようにパワフル。ヴァンテージと同じく、周囲を全て置き去りにできるクルマだ。

実際には、全幅以外はヴァンテージよりM2の方が大きいが、低くワイドなヴァンテージのスリークなプロポーションは、フロント・ウインドウが立ち気味でボディに厚みのある、ブロックで作ったクルマのようなM2との大小を錯覚させる。

また、M2のシャシーはスティール製だが、車重はアルミ・シャシーのヴァンテージより35kg軽い。

まずはM2から見ていこう

今回のヴァンテージは2011年式で、1年間の距離無制限保証付きでの売価は£55,995(812万円)という個体。走行距離は2万6000km弱で、6速MTのスポーツ・パック(軽量ホイールとハードなサスペンション)を装着しない仕様だ。

一方のM2はMTを用意できなかったが、こちらはDCTがベストだ。

パッと見、ヴァンテージの4.3ℓモデルと4.7ℓモデルの識別は難しいが、DBSと同様のセンター・コンソールや、シリンダー・ヘッドから潤滑系まで改修されたエンジン、改良版のビルシュタイン・ダンパーを装着し、乗り心地もハンドリングも向上させたサスペンションなどの恩恵はつぶさに見られる。

M2は、ベース価格は£45,750(663万円)だが、試乗車はさまざまなオプションが乗せられ、£53,070(770万円)相当。

ただし、走りに関するのは£2,245(33万円)のM DCTだけで、電子制御多板クラッチ式のアクティブMディファレンシャルやツインスクロール・ターボのアルミ・ユニットなどは標準装備だ。

サスペンションはパッシブ式で、ドライブトレインやステアリング、エキゾースト、ESPのセッティングは、コンフォート/スポーツ/スポーツ+の3モード切替が可能である。

ヴァンテージ、古さが目立つようになった

ヴァンテージの、やや斜め上へ開いたドアから乗り込むと、目に付くところや手が触れるところは、レザーやアルカンターラ、リアルなメタルで覆われている。

シートベルトのバックルまで、目に付かないように隠されている。ドアとボリュームのあるセンター・トンネルの間に収まると、低い着座位置のシートが身体を包むようにサポートしてくれる。ガラス・ハウスは相対的に高く、そして細い。

ヴァンテージが登場したのはフォード傘下にあった頃で、ライフサイクルは長く、次期モデルの用意が進んでいるのは間違いないが、おなじみになったキャビンを眺めると、改善すべき点は明白に見て取れる。

ダイヤル類のタッチはソリッドだが、それ以外のスイッチ類は満足しかねるもので、プラスティック感ありありのコラムレバーや、シートとミラーの調整スイッチは奇妙な位置にあり、いずれも美しくない。

立ち上がり式のナビは時代遅れで扱いにくく、カップ・ホルダーは左肘にぶつかるが、これは十分な高さまで調整できないステアリング・ホイールにも原因がありそうだ。

ひとつひとつは小さな不満かもしれないが、合わされば、せっかくのクルマの魅力を削ぐことになってしまう。

M2、生真面目さが目立つ

M2においては、キャビンの基本構造が最も安価なBMWである1シリーズと共通であることを、まず述べなくてはならない。また、Mバッジやステッチのコントラストが入ったレザーやアルカンターラのトリム、織り目を誇示したカーボンパネルなどを奢っても、完全に豪華でソソる空間に変貌させることはできなかった、ということも。

硬いプラスティックも見えるし、いささかマジメな仕立てでもある。ただし、デザインに不満はなく、組み付けは精確で、技術面もトップクラス。このくらい、と期待されるラグジュアリーさは備えている。

彫りの深いシートは、アストンのそれよりやや高くて硬く、ドライバーの方を前へと押し出すが、調整機能は良好。

視認性はアストンより優れ、エルゴノミクスも素晴らしく、iDriveは相変わらずデキがいい。後席2座はおまけ程度だが、荷物置き場しかないヴァンテージに対するアドバンテージにはなる。

子供用といった程度のスペースが必要なければ、シートバックを倒して、トランクルームを拡大することもできる。もっとも、それを使わなくても荷室容量は390ℓあり、ヴァンテージの300 ℓを上回っているのだが。

実用面ではBMWに敵わないアストンだが、ジャガー由来の32バルブV8に火を入れれば挽回できる。

飛ばそうと思えばスロットルに鞭を入れなければならないが、豊かな海を思わせるサウンドに耳を傾けているだけでも幸せな気分になれる。