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ポルシェ911GT3は、世代を重ねるにつれて優れたクルマになっているのだろうか?  それとも先進的なテクノロジーによって過保護なクルマになったのだろうか? アンドリュー・フランケルが3世代のGT3を比べる。

3世代の歴代911GT3に乗る楽しみ

ポルシェ911GT3とともに、人気の少ない峠道を一日中走ること以上に楽しいことはあるだろうか? 私の頭上でくっきりと晴れ渡った青空と同じく、答えは明確だ。これ以上に楽しいことはない。しかし歴代のGT3を集めるとなったら話は別。もう、夜も眠れないくらいにドキドキするのである。

われわれは、3世代に渡るくもりひとつない911GT3を集めることにしたのだが、新しい世代になることによって、単純な進化だけでは終わらない点がGT3を比べることを難しくしている。

フランケルは911 GT3を運転することほど喜ばしいことはないという。


他と比べるのもまた然り。例えば現行のBMW M3を引き合いに出してみると、M3の方が996のGT3より遥かに速いことは事実だが、どちらが楽しいかと問われれば答えに窮する。

同時にわれわれが知りたいのは最新のGT3が、これまでのGT3からどういったことを学んだのか、 という点である。

まずは5つ星の991GT3を味わう

まずは既にわれわれが知っている991の出来栄えについて少々。エンジンは9000rpmまで突き抜けるように回る。また991型のGT3が搭載するデュアル・クラッチATより優れたものを他で探すことは難しい。加えて4輪操舵システムは、ホイールベースを延長したことによるドローバックを見事に打ち消している。

476psの最高出力を驚くほど簡単にコントロールすることもできる。ちなみに現行のGT3は、本誌のロード・テストで5つ星を獲得している類まれなモデルである。

最後の「メッツァー」レース・エンジン搭載の997

他の2台に関してはどうだろう? まず、997型のカレラが世に出て10年が経過していることが信じがたい。今回のテストに連れだした後期型だって、もう6年の月日が経過しているのである。そして、どの自然吸気エンジンともまったく異なる、由緒正しき「メッツァー」レース・エンジンを搭載した最後のモデルなのである。

3.8ℓのユニットは435psを発揮。(正確には異なるが)似通った排気量である991のGT3に比べると41ps控えめである一方、991よりも35kg軽いため、パワー・ウエイト・レシオは実はそんなに変わらない。

しかしながら0-100km/h加速は4.1秒と、モダンGT3からは0.6秒もの水をあけられている。991が搭載するトランスミッションと、ローンチ・コントロールの優秀さゆえである。996型のGT3となれば、もっと話は違ってくる。997とおなじくメッツァー・エンジンを搭載しているが、排気量も違えば、最高出力は997より55ps控えめであり、991型と比べると95psも劣ってしまう。

997とのウェイト差はわずか15kgしかなく(996の方が軽い)、0-100km/h加速は4.5秒というのが公表される値だ(先述のとおり997は4.1秒)。にもかかわらず、中古車市場の価格は下がる気配がない。ここ英国における「修復歴なし」の平均中古車価格は約£6万(1,110万円)、テスト車のようにコンディションがよければ£8万5千(1,575万円)というのが一般的だ。

997GT3は1,300万円、991GT3は2,5000万円以上

もしあなたが997のGT3を買うのであれば、前期型で£7万(1,310万円)程度をみていたほうがいいだろう。後期に手を出すならば£10万(1,850万円)が必要になる。

ちなみに991GT3に関して公式ウェブサイトを見ると、£10万540(1,870万円)という価格が書かれているが、もうこのモデルに関しては生産が終了している。生産ラインはGT3 RSのためにカチリと切り替わったのだ。

996は販売開始から11年が経つ。にもかかわらず室内は991に負けずソリッド。


われわれが探したなかで、もっとも安く買うことのできる右ハンドルの991GT3は13万7千ポンド(2,534万円)である。きれいな996GT3の約2倍ということになる。まずはじめに運転したのは991のGT3。現代のベンチマークがいかなるものかを知るためだ。

ウッと息をのむ。単純な速さではない。パワー・デリバリーのマナー、サウンド、柔和なトルク供給、機関銃のごときシフト、9000rpmのレヴ・リミット……。簡単な話、極めて特別なクルマなのだ。

後ろにエンジンを搭載して、後ろから駆動する。宿命的なまでのハンデを背負っているにもかかわらず、もう、これまでの911とは全く違う次元に達している。熱狂、そしてエラーに対する寛容さ。

先祖にとっては、情け容赦なき進化とでもいえようか。かつての911のようなアンダーステアも皆無。ぶわりとノーズが浮かびあがることもない。

気がつけばノーズがエイペックスに向かい、そして気がつけばもうコーナーを抜けだしている。スピードとスタビリティ。唖然とするほど簡単にコーナリングが終わるのだ。

しかし「これほど簡単に運転できていいのだろうか?」と疑問に思う向きも少なくないはず。なぜならポルシェ自身だって自問自答しているのだから。だからこそ、かのGT3 RSは単なる「いい子ちゃん」に終わらせなかった。

現時点では正式なアナウンスはされていないが、ドライビング・プレジャーを追い求めたマニュアルのGT3だって噂されているくらいである。

スポーツ・ドライビングの実感を味わえる997

一方の997GT3はどうか? 数値が示すほどではないが、991よりは明らかに遅い。997単体でみると音はいいのだが、991のそれに比べると味気ない。グリップも劣る。中でも最も大きな違いは、ダンピング・マナーである。991が衝撃を吸収するようなところでも、997は足元をバタつかせることが多い。

997と991とのハッキリとした違いは、シフトノブとペダルの数だ。


その代わりに997は、何を与えてくれるか? 997にあって991にないものといえば、それは親密さだ。特に991の電制ステアリングによる差は大きいと感じる。また、左足がクラッチを踏まずに済む991と異なり、自分で変速する必要がある997はやはり「スポーツしている」気持ちになる。

ミス・シフトの確率が格段に高まり、シャシー・バランスが991に劣る。さらに安定感に欠けるとしても、自分で運転していると感じるのは997 GT3の方だ。こういうのも変だが、圧倒的な欠点をもつ997の方が、ドライビングそのものが楽しいのだ。

997以上に楽しい(?)996

997が感性に訴えかけることで991に勝負を仕掛ける一方で、996はどうなのだろう?  今日びの感覚をもってしても、もちろん996GT3は素晴らしいクルマなのだが、やはりテクノロジーの面では997/991 GT3と比べると、お話にならない。

しかし、驚かされる面もある。

英国の悪路のうえを徹底的に攻め込んでも、車体はきしみ音ひとつ発しないのだ。911史上もっとも評判の悪い構造でありながら、まるで1週間前にできたばかりのクルマに思える。それもロールス・ロイスが作ったかのように……。

さらにショッキングなのは、997と同じくらいに楽しいと思える点だ。コーナーに矢のごとく飛び込み、ギュッと引き締まったスプリングが路面を離さない。スロットルの子細な操作で向きを変える。

5000rpmまでは眠たいエンジンがいきなり目覚めるのも気持ちがいい。電子制御によるセーフティ・ネットがないゆえ、震えあがるような怖さを味わえるのもいいじゃないか。すみずみまでアナログ。全責任を自分で負う。硬派なクルマはこうあるべきなのだと私は思う。

生粋のドラインビング・マシン、996GT3

一方996GT3に足りないのは落ち着きである。GT3なのだからいいじゃんとお思いの方もいらっしゃるかもしれないが、毎日愉しむには最低限の快適性も必要である。997や991のGT3が、それを物語っている。乗り心地さえ理解できれば、996GT3は伝統的なポルシェそのものである。生粋のドライビング・マシンなのだ。

991の内装は世代が新しくなるにつれて、質感が徐々に高まっていることを証明している。


こうやって乗り比べてみると、991がいかに洗練されたマシンであるかがよくわかる。スピード、快適性、運転のしやすさを高いレベルに引き上げながらも、運転しているという実感がある。これにM/Tが設定されれば、鬼に金棒ではないか。

資金と楽しさ、そのバランスでは997一択

値段や生産時期がまったく異なるため、1位から3位を決めることはしないが、もっとも能力が高いGT3を選べといわれれば991しかない。私のように、スポーツカーが好きな古い人間でも、やはり991GT3を選ぶはずだ。

一方で、資金をセーブしながらも楽しいクルマは? と問われれば996GT3の後期型をおすすめする。仮に賢さと野蛮さを両方求めるならばどうだろう? 答えは997一択ということになる。

PORSCHE 911GT3

996GT3997GT3991GT3
■0-100km/h加速 4.5秒 4.1秒 3.5秒 
■最高速度 306km/h 312km/h 315km/h 
■燃費(JC08モード) 7.8km/ℓ 7.9km/ℓ 8.1km/ℓ 
■CO₂排出量 328g/km 298g/km 289g/km 
■車両重量 1380kg 1395kg 1430kg 
■エンジン形式 水平対向6気筒3600cc 水平対向6気筒3797cc  水平対向6気筒3800 cc 
■エンジン配置  リア縦置き リア縦置き リア縦置き 
■駆動方式 後輪駆動 後輪駆動 後輪駆動 
■最高出力 380ps/7400rpm 435ps/7600rpm 476ps/8250rpm 
■最大トルク 39.3kg-m/5000rpm 43.8kg-m/3250rpm 44.9kg-m/3250rpm 
■馬力加重比 276ps/t 312ps/t 333ps/t 
■比出力 105ps/ℓ 115ps/ℓ 125ps/ℓ 
■変速機 6段M/T 6段M/T 7速デュアルクラッチ 
■ホイール F:8.5Jx18in F:8.5Jx19in F:9Jx20in 
■ R:11Jx18in R:12Jx19in R:12Jx20in 
■タイヤ F:235/40 ZR18 F:235/35 ZR19  F:245/35 ZR20 
■ R:295/30 ZR18 R:305/30 ZR19 R:305/30 ZR20