「彼氏はいるけれど結婚したいのか、したくないのか自分が分からない」「相手のことを大好きだと言える確信が持てない」「自分にピッタリな人に出会えない」ーー仕事はバリバリこなせても恋愛ごとになると自信を失ってしまう、そんな女性が多いようです。

そこで、以前『友達のフェイスブックにイライラするのはなぜ? 脳科学者と心理学者が解説する「嫉妬」と「妬み」の正体』で悩める女性に助言をいただいた、脳科学者・中野信子さんに再び解決策をお聞きしました。

恋愛はただ好き、心が動く、という感覚が動かしているというのが当然だと思っている人が多いでしょう。でもそこには心ではなく、体と現代の文化が私たちを揺り動かす要素が詰まっていたのです。

Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)で、友達の投稿チェックや、「いいね!」返しをしていたら、深夜になってしまった。という経験がある人も多いのではないでしょうか。手軽に情報収集や近況報告ができるSNSはもはや私たちの生活の一部といっても過言ではなくなりつつあります。

それは、恋愛について語るうえでも同様。気になる人の情報をチェックしたり、思い切って連絡してみたり……。

そんなSNSによって生まれた恋愛思考があります。それは一体どんなものなのか? そしてどんな影響を及ぼしていくのか? 脳科学者の中野信子さんが解説していきます。

脳科学者の中野信子さん

素晴らしき脳トレ:恋愛

--恋愛マンガ、小説、ドラマといった“恋愛の教科書”がない人には何が指針になるのでしょうか?

中野信子(以下、中野):30代以降の人たちがネットを見る時、SNSチェックの比重が大きいのではないでしょうか。ツイッターとか、フェイスブックとか。そこにはいつも、友人や知人のリアルが投稿されている。だからマンガやドラマにあるような“作られた恋愛”に対してはまったく知識がなくて、いつも他人のリアルな恋愛に触れているというか。そのうえ、恋愛感情を表に出しすぎると「ウザい、キモい」と排除される傾向にある。そうなると恋愛しないことがスタンダードになっても当然ですよね。

--よく、SNSでは“共感”というキーワードが上がってきます。共感性は恋愛をするうえで必要な感情だと思うのですが。

中野:他人のタイムラインを読んで、一瞬、共感することはあったとしてもSNSで共感性は育ちません。相手にどうやって合わせればいいのかという言葉を学ぶだけ。炎上を回避する方法は身につくかもしれませんね。

--恋愛につきものの、喜びや悲しみといったリアルな感情の部分はわからないですよね。

中野:本当に悲しい、かわいそうという感情は、自分が痛みを知らないとわからないものです。例えば転んで泣いている子がいても「どうすれば泣くか」は、理解できていても痛みを知らないから「なぜ泣いているのか?」が分からない状態になるわけです。こうすればこうなるという「How」はSNSで分かっていても「Why」が分からない。

--そういう感情は恋愛でほぼ経験できる気がします。

中野:恋愛すると「誰かに会いたいっていう感情はこういうことなんだ!」と実体験として理解できる。感情が止められなくて、ついポエムを読んでしまうことも、つきまとわれたら迷惑なんだということもわかるのです。

だから恋愛は人間の構造をつくるうえでは、いい脳トレなんです。第1回目で「恋愛は遊びである」とお話しをしましたが、遊びというのは脳トレの意味も含んでいます。恋を遊びと言われると「いけないものだ」という意識があるかもしれませんけど、そうではありません。遊びが一番脳を育ててくれるので、ぜひトライして欲しいです(笑)。

恋愛より「SNSで受け入れられる」ことを求めてしまう

--若い世代にSNSという自分を受け止めてくれる場所ができましたよね。それが実際に恋愛をすることに対して自信を失わせている感じがします。

中野:自信がないというのは日本人特有のものですね。むしろ自信はないほうが、集団に受け入れられやすい。そういう集団の圧力はSNSの影響でだいぶ強くなってきています。

--タイムラインでちょっと強く出ると、すぐに叩かれるんじゃないかという危機感。それは最近はじまった傾向ですよね。バブル期とかもっと上の世代は、自信に満ち溢れている感じがしますから。

中野:そうですね。ウートピ世代より上の世代は「これくらいできます!」という経験のないことを先に宣言をして、それに追いつくための努力をするんです。背表紙しか知らなくても「読んでいます!」と言い切って、あとから読んで事実確認だけをするとかね(笑)。

背伸びをすることによって自信をつけていくっていう方法が昔はあり得たんですけど、現代はちょっと難しいかな。

--それだけSNSの影響力が大きいということですよね。

中野:大きいと思います。例えば、自分の話を聞いてほしい“承認欲求”ってありますよね。その喜びと性行動による快感はどっちが大きいと思います?

--……性による快感でしょうか?

中野:我々の世代だとそうなるんですが、若い世代は“承認欲求”を重視するんです。恋愛をするよりSNSで受け入れられて、自分の話を聞いてもらえるほうに快感を覚える。振られて痛い思いをするよりも、全世界に向けて何かを発信しているほうがいいわけですよ。恋愛したらその相手しか自分の話を聞いてくれないことが不満なんです。

--若い世代にとっては、SNSが出会いのきっかけでもあるわけですよね。対面しないと相手を信じることができない古い世代に比べると、いきなり恋愛ターゲットが広がるわけですから、恐怖心さえなければ効率がいいのかも。

中野:実際、そうですよね。職場や合コンで出会ったとしてもその人がきちんとした人間かどうかは分からない。人間として肉体はどの世代も変わっていないわけだし、出会うシチュエーションが変わるだけなんです。

SNSが与えた恋愛への影響は、ウートピ世代にもジワリと浸透していくのかもしれません。それでも恋に落ちたらどうすればいい?「脳科学の側面から考える、片思い攻略法」をお話しいただきます。

小林久乃