<昨年トランプの大統領選勝利を予言した映画監督のマイケル・ムーアが、トランプ批判の新作映画を製作中と発表。その名も『華氏119』>

マイケル・ムーアは、やっぱり企んでいたようだ。

ムーア監督と言えば、アメリカ同時多発テロ9.11に対するブッシュ政権の対応を批判する『華氏911(Fahrenheit 9/11)』を製作したドキュメンタリー映画監督。そのムーアが今週、自身のフェイスブックページでドナルド・トランプ米大統領を批判する新作映画を製作中だと発表した。

作品名は、トランプが大統領選の勝利宣言を行った昨年11月9日にちなんで『華氏119(Fahrenheit 11/9)』だという。

バラエティー紙(ウェブ版)によれば、『華氏119』には2004年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞した『華氏911』のスタッフたちが結集し、「極秘裏に」製作が進められてきた。

配給権は『華氏911』のプロデューサー陣に名を連ねていたハーベイ&ボブ・ワインスティーン兄弟が取得。公開時期は発表されていないが、国内外の配給先について今週開幕のカンヌ国際映画祭で「あらゆる可能性を探る」という。

「極秘裏」に製作してきたというが、昨年の大統領選挙中に大声で「反トランプ」を叫んでいたムーアが「何か」を作っていそうなことは明らかだった。

昨年7月には「ドナルド・トランプが大統領になる5つの理由を教えよう」と題した記事を自身のサイトに発表し、「トランプ大統領の誕生」なんてあり得ない、という空気に釘を刺した(この記事の分析は今読んでも「予言か?」というほど的確だ。日本語はこちら)。

大統領選直前には『マイケル・ムーア・イン・トランプランド』(日本劇場未公開)と題したドキュメンタリー映画を発表してトランプ不支持をアピール。トランプの勝利後はニューヨークのトランプタワーに突撃するなど、ムーアが「トランプ大統領」に真っ向から挑む映画を作るというのは予言するまでもなかった。

『マイケル・ムーア・イン・トランプランド』の予告編


バラエティー紙に寄せたムーアのコメントからも、新作がトランプ政権を批判する意図で作られていることは明白だ。「どんなことが暴露されようとも、彼は倒れなかった。事実、現実、論理で彼を倒すことはできない。彼は自分で何かをやらかしたときでさえ、次の日の朝にはそれまでどおりツイートを開始する。こうした状況を、この映画がすべて終わらせる」と、ムーアは語った。

一方で、映画がどんな内容なのかは謎に包まれたままだ。製作目的が「打倒トランプ」なのだとしたら、ムーアはどんな爆弾を隠し持っているというのだろう。

ムーアがトランプ大統領の誕生を予想できたのは、彼自身が大統領選でトランプを勝たせた「ラストベルト」(かつて製造業の中心地だったが、産業が空洞化し繁栄から取り残された米中西部)の1つ、ミシガン州フリント出身であることとおそらく無関係ではない。

ムーアはこれまで、強者に切り込み、弱者のリアルを切り取る姿勢を貫いてきた。しかし昨年の大統領選でトランプを勝たせたのは、ムーアの出身地ミシガンを含む地域の「声なき弱者」たちだ。

トランプもムーアも、「メディア使い」という点は共通している。トランプに熱狂したのがラストベルトの人々なら、ラストベルトを代弁しようとしてきたのもムーアだった。

トランプvs.ムーア。勝つのは一体どちらなのか。映画公開まで、トランプが大統領でいればの話だが。

【参考記事】マイケル・ムーアの豊かな国探し
【参考記事】ニューストピックス:トランプに迫る弾劾リスク

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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部