「仕事自体にやりがいは感じていた。今は悔しい気持ちでいっぱい」。

 現在も鬱病の治療を続ける原告の男性はこう話した。2020年東京五輪・パラリンピックを控え、建設業と同様に人手不足が目立つ警備業界。そのしわ寄せは個々の従業員に及び、労働環境に深刻な影を落としている。

 「大阪南支社機動隊」。男性が勤務していた会社では警察組織になぞらえ、支社管内の詰め所をこう呼んでいた。広大なエリアを任され、1日200キロを車で走行することも。必然的に現場到着が遅れ、クレームも増えた。

 男性の証言によれば、会社からは「仮眠をとるな」と指示され、生真面目な性格から忠実に従ったという。「常に緊張して休まるときがなく、トイレすらゆっくりできなかった」。同僚が休んだ分も「自分が穴を埋めなければ」と四六時中プレッシャーを感じていたと振り返る。

 厚生労働省などによると、警備業では男性が9割以上を占め、年齢別では50代以上が3分の2に上る。平成28年度の有効求人倍率は3.52倍と人手不足が顕著になっている。

 業界をめぐっては、NPO法人・労働相談センター(東京)にも「休憩や仮眠時間が定められていない」といった相談が多く寄せられているという。担当者は「いつ呼び出しがあるか分からず、ほとんど寝られずに緊張状態に置かれている。年配の人は働き口も少なく、劣悪な処遇が広がっているのでは」と推測した。