画像はJASRACホームページ スクリーンショット

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京都大学のホームページには、山極寿一学長が4月の入学式で新入生に贈った式辞が掲載されている。この式辞に、米歌手ボブ・ディランの歌詞が含まていたことから、日本音楽著作権協会(JASRAC)がホームページへの掲載について京大に使用料を求めていると報じられた。京都新聞が19日に伝えると、ネットにはさまざまな意見や疑問の声が寄せられた。

山極学長の式辞では、常識にとらわれない自由な発想について述べる際、ボブ・ディランの「風に吹かれて」の冒頭と最後を含む歌詞数節を英文と日本語訳で引用。「この歌は、誤りを知っていながら、その誤りから目をそらす人を強く非難している」と解説し、「どんな反発があろうと、とっぴな考えと嘲笑されようと、風に舞う答えを、勇気を出してつかみとらねばならない」と語っている。式辞には、このほかにも新入生へのエールや祝いの言葉が盛り込まれており、歌詞の引用は日本語訳を含めても全体の1割ほど。文末には出典も記されている。

この式辞での引用は、著作権法上のルールに則っているようであるため、ネットでは著作権料の請求に対して違和感を訴える声などが殺到。脳科学者の茂木健一郎氏は「著作権上の『フェアユース』の法規定をちゃんとつくれば、このような不当な要求は封印できるでしょう。それにしてもJASRACってひどい組織だな」とTwitterでコメントしている。

一部でも歌詞をWebサイトに記すのは問題があるのだろうか。この疑問へのJASRACの回答は、ホームページの「これ知ってる? 著作権にまつわるギモン」に掲載。「ブログに好きな楽曲の歌詞を書き込んでもいい?」の問いには「NO!」と回答されており、「一部だけでも歌詞を掲載する場合は著作権者の許諾が必要」となっている(ブログサービスの運営者が許諾を得ている場合は除く)。しかし、引用については、また別。文末に、「著作権法上の要件を満たす場合は、歌詞の一部を引用することができる」との記載がある。

それでは、京大の引用はどこが問題だったのか。JASRACに話を聞いたところ、そもそも京大に対して「請求は行っていない」ため、京大の引用方法が「良い悪いの話ではない」との回答。「著作物が掲載されているため有料となるケースがある」といった案内や、「どういったケースがあるか」の説明を行った段階で、引用方法などの具体的な話には至っていない。今後、そういった話になるかどうかも現時点ではわからないとした。

京都大学「平成29年度学部入学式 式辞」