福田正博 フォーメーション進化論

 FIFA U-20W杯が5月20日から韓国で開催される。2007年のカナダ大会以来、10年ぶりの出場となるU-20日本代表は、予選グループで5月21日に南アフリカ、同24日にウルグアイ、同27日にイタリアと対戦する。


15日のU-20ホンジュラスとの親善試合に途中出場した久保 U-20日本代表が再びこの大会に出場できた要因は、選手たちのポテンシャルの高さもあるが、20歳以下の選手たちが高いレベルで試合ができる環境を日本サッカー界が整えたことにもある。
 
 20歳以下の選手が実力を伸ばすには、試合を数多くこなす必要がある。練習してきたことを試合で試し、反省材料を得て再びトレーニングに取り組み、次の試合に臨む。このサイクルを繰り返すことで若い選手たちは成長していく。

 2009年まで実施されていたJサテライトリーグは、トップチームで試合に出場することが難しい若い選手の実戦経験の場として存在したものの、実情は練習試合と変わらない状況にあり、真剣勝負には程遠かった。そこで、Jリーグは2014年からJ3リーグに「Jリーグ・U-22選抜チーム」を作り、2016年シーズンからはJ1・J2クラブ単位の「U-23チーム」がJ3リーグに参戦できるようにした。こうした若手育成のための改革が、今回のU-20代表で結実したといえる。

 U-20W杯に臨むメンバーの中で、最も注目されるのが久保建英(たけふさ)であることは間違いない。6月4日に16歳になる高校1年生は、まだ体が小さいこともあって、体格差がある海外選手との対戦で故障することを心配する声もある。だが、久保がJ1デビューを飾ったルヴァンカップの札幌戦を見た限りでは、それは杞憂だと感じている。

 確かに体はまだ小さい。体の大きな選手と正面衝突でぶつかればケガをすることもあるかもしれないが、久保は状況を把握する能力が高く、判断力も優れているため、そもそも相手選手と正面からぶつかる状況を作らない。元バルセロナのMFシャビが試合中、常に首を振って戦況を確認していたように、久保も絶えず首を振って周囲を確認する。このあたりが、10歳からバルセロナの下部組織で育ってきた彼の特長だ。だからこそ、どんな局面であっても質の高いボールテクニックやボディバランスを発揮できるのだろう。

 久保ばかりに話題がいきがちだが、今回のメンバーはレベルの高い選手が揃っている。守備陣に目を向けると、CBの中山雄太(柏)は昨シーズンからトップチームのレギュラーとして活躍しており、ボランチにも高卒1年目の昨シーズンから新潟でスタメンを張る原輝綺がいる。チームの中核をなすポジションに、J1での実戦経験が豊かな選手がいることは大きい。この大会でいい経験を積めば、両選手とも将来はA代表に名を連ねる可能性はかなり高くなるだろう。

 また、SBの初瀬亮(G大阪)にも期待している。両足で高い精度のキックを蹴ることができ、今シーズンからトップチームでの出場機会を増やしている選手だ。タレントが不足している日本サッカー界のSBにあって、久しぶりに突出した才能に恵まれた初瀬には、この大会を飛躍の契機にしてもらいたい。

 中盤では、今季Jリーグで最も勢いに乗っている堂安律(G大阪)に注目している。話題性では久保に先をいかれているが、チームの攻撃の要は紛れもなく堂安だ。

 彼の最大の特長はボディバランスにある。一般的に、人は必ず左右どちらかに偏った姿勢を取るため、筋力は左右均等に発達していない。だが、堂安はプレー時の姿勢が美しく、バランスよく筋肉がついている。172cmの身長でも体に厚みがあり、体の大きな選手との接触プレーでも簡単に倒れない。Jリーグで3試合連続ゴールを決めた勢いを、世界の舞台でも継続して発揮してほしい。

 他にも、ドリブルが得意な三好康児(川崎)、タテへの突破力のある遠藤渓(横浜FM)、FWには体を張ったポストプレーができる小川航基(磐田)やスピードが武器の岩崎悠人(京都)など、今後の日本代表を背負っていくだろう人材は多いが、あえてこのチームの不安要素を挙げるなら、左利きの選手が多いことだ。

 左利きの選手がいないチームからすれば贅沢な悩みだが、CBの中山、MFの堂安、三好、FWの久保と、レギュラー格に4人も左利きの選手がいる。左利きが重宝されるのは、ボールの持つ位置やパスが出てくる角度、視野などが違うため、右利きの選手が大多数を占める試合ではアクセントになるからだ。しかし、これだけ左利きの選手が多いと、相手もそこに順応してしまうため、左利きのメリットが減ってしまう恐れがある。

 どういったメンバーを組むかは内山篤監督の采配次第だが、私個人としては彼らをターンオーバー制で起用するのではなく、メンバーを固定して戦ってもらいたいと考えている。彼らは3年後の東京オリンピックの主力であり、これからの日本代表を担う逸材だ。今後のW杯を意識した長期的な視野を持ち、メンバーを固定して戦うことで、左利き選手の多さを活かせるスタイルを構築してもらいたい。

 これまで、U-20日本代表がW杯で残した最高成績は、1999年ナイジェリア大会の準優勝だ。当時の大会名は「ワールドユース」だったが、小野伸二、高原直泰、小笠原満男、稲本潤一、曽ヶ端準、遠藤保仁などの「黄金世代」の快進撃は、まだ現役選手だった私も大いに刺激を受けた。

 今回のU-20日本代表チームは、J1リーグでプレーする選手が多く、国際大会でも同年代の選手たちに怯(ひる)まないだけのキャリアを積んでいる。また、この世代の海外の選手たちは、自分の能力を有力クラブに認めてもらうために個人技に走る傾向が強い。

 それだけに、個の力が高く、経験値もあるU-20日本代表が組織力を前面に打ち出して戦えば、黄金世代が残した成績を上回ることも十分に可能だ。彼らが、「新・黄金世代」として日本サッカーの歴史に新たな1ページを刻むことに期待している。

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