マクドナルドの店舗(撮影=編集部)

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 米マクドナルドは4月25日、日本マクドナルドホールディングス(HD)の株式売却を凍結すると表明した。

 2017年1〜3月期の決算会見で、ケビン・オザン最高財務責任者(CFO)は「日本のビジネスで我々の成長戦略と実行能力に自信を持っている」と述べ、当面は株式の保有を続ける考えを示した。

 米マクドナルドの17年1〜3月期の売上高は、直営店からフランチャイズ店への移行が響き、前年同期比4%減の56億7000万ドル(約6200億円)だったが、純利益は8%増の12億1000万ドル(約1300億円)。世界全体の既存店売上高は4%増と堅調に推移した。

 海外の市場別では、日本を含む利益貢献度が低い基礎的市場が10.7%と最も高い伸びを示し、中国などの「高成長市場」の3.8%増を上回った。そのため、オザンCFOが「日本が最大の貢献者だった」と述べたと伝えられている。

 同社の16年12月期の連結決算の売上高は前期比20%増の2266億円、最終損益は53億円の黒字(前期は349億円の赤字)と、3期ぶりに黒字に転換した。

 既存店売上高は15年12月に反転し、16年12月期はすべての月で前年比プラスを達成した。17年1〜3月期の累計の既存店売上高が使用期限切れ鶏肉使用問題が発覚する前の水準に肉薄。17年4月の既存店売上高は前年同月比12.7%増と17カ月連続で前月を上回った。

 17年12月期の売上高は前期比4%増の2365億円、純利益は58%増の85億円になると予想している。

 業績低迷から抜け出したため、米マクドナルドは株式売却を凍結した――。一般的には、そう理解されているが、はたしてそうなのか。

●株価の高止まりで、売りたくても売れない

 株売却を凍結した最大の理由は、株価が高止まりしていることにある。

 日本マクドナルドHDは、使用期限切れの鶏肉の使用や異物混入など不祥事が相次いだことから客離れが進み、15年12月期に349億円の2期連続の最終赤字に沈んだ。そこで米マクドナルドは、日本を海外事業で利益貢献度が低い基礎的市場に組み入れた。

 そして16年1月、保有する49.99%の株式のうち最大で33%を売却すると公表した。米本社の業績の足を引っ張っている日本法人を連結決算から切り離し、外部資本を注入して日本事業のテコ入れを図るのが狙いだった。

 実際に、複数の投資ファンドに売却を打診した。回転ずしチェーン最大手、あきんどスシローの持ち株会社であるスシローグローバルホールディングスに出資する英ペルミラのほか、コメダ珈琲店を展開するコメダホールディングスに出資するアジア系のMBKパートナーズ、ファミリーレストラン大手すかいらーくに出資する米ベインキャピタルなどが名乗りを上げた。

 だが、交渉は進展しなかった。金額面で米マクドナルドとファンド側の間に大きな隔たりがあったためだ。米マクドナルドは33%の株式を1000億円程度で売却したいと考えていたが、これは理論値の2倍に近く、ファンド側は500億円程度が妥当と主張していた。

 ところが、日本マクドナルドHDの業績回復で株価は上昇。17年5月2日の終値は3450円。売却方針を公表する直前の15年12月30日の終値2620円より3割以上上昇し、時価総額は4587億円に膨れあがった。33%の株式の売り値は約1500億円になる。株高で投資先としての魅力がさらに薄れてしまい、投資ファンドは一斉に手を引いた。

 日本マクドナルドHDの株価は、業績に関係なく高止まりしている。同社株のおよそ5割を米マクドナルドが保有しているうえに、39.46%(16年12月末)を占める個人株主も株主優待狙いで長期保有している。彼らは、マクドナルドのハンバーガー類、サイドメニュー、飲み物と引き換えられる無料食事券が年2回贈られる手厚い株主優待が目当てなので、株価が上がっても売らない。ちなみに、贈られてくる食事券は、100株保有で1冊、300株で3冊、500株で5冊となっており、1冊に6枚綴られている。

 異物混入など不祥事に見舞われた時も、株価は急落することなく2600円台と高値圏で推移していた。それが最近は3400円を超え、米マクドナルドはますます日本マクドナルドHD株を売りにくくなった。大きな誤算だろう。

 今回はあくまでも売却交渉の凍結としている。再び業績が悪化すれば、凍結を解除するのは間違いないだろう。しかし、個人株主が売却交渉の行く手に立ち塞がっており、買い手が妥当とみなす水準まで株価が下がることは期待薄だ。

 つまり、売却を阻止したのは、マック愛好家の個人株主ということになる。
(文=編集部)