働きアリ文化は人事部が変えられる!?

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昭和の高度経済成長期には「働きアリ」「モーレツ社員」が美徳とされました。しかし、状況がすっかり変化した現在でも「働きアリ」モードで働いている人がたくさんいます。労働生産性を高める時間の使い方の意識改革が求められているのです。

社会全体が右肩上がりで成長していた高度成長期

1955年頃から1970年代半ばにかけての高度成長期には、「働きアリ」「モーレツ社員」という言葉がありました。この言葉を今聞くと、過重な労働をイメージするかもしれません。
でも当時は、社会全体が右肩上がりで成長していた時代。そのため、働けば働くほど売上や給料が伸びていました。
働きアリやモーレツ社員となって、長時間働くことが美徳とされていたのです。

景気や業務の繁閑によらない日本の労働力

ところがその後、バブルが崩壊し、勤務時間と売上や給料が比例しなくなります。
また、男性中心だった組織も、少子高齢化、女性の社会進出などの影響で、働き方を柔軟に考える必要が出てきました。
しかし日本は、アメリカなどとは違い、基本的に終身雇用を前提としています。
そのため、景気の浮き沈みや業務の繁閑によらず、労働力はほぼ一定です。

日本人の協調性も残業を増やす一因

本来であれば、仕事が忙しいときには残業し、景気が悪くなって仕事が減れば定時で帰宅というようなメリハリがつられるはずです。
しかし現実には、繁忙期のような「働きアリ」モードで、常に働いている人がたくさんいます。
ある研究によると、日本人によく見られる「状況をそのまま受け入れて仲間との協調性を大事にする特性」が、残業を増やす一因となっているそうです。

人事データを使った意識改革法とは

では次に、人事データを使って、時間の使い方の意識改革につなげる方法について考えてみましょう。
残業は業務量と在籍人員の関係で決まります。
つまり、仕事をするのに必要な人数「所要工数」と、実際の在籍人員「稼働工数」の差が、不足している工数です。
(所要工数)−(稼働工数)=(不足工数)、これが残業の正体です。

数字的に表現した残業の正体

「この不足工数の仕事をするために、実際に在籍している人が残業をする」というのが数学的に表現した残業です。
先の式にある稼働工数は、実際に仕事をしている時間を人数に換算したものなので、人員数と労働時間のデータを取ればわかります。

残業代予算をあらかじめ決める

問題は、所要工数のほうです。所要工数には次の2つがあります。
 )榲に必要な仕事をこなすための工数
◆,付き合い残業や、帰宅時間ありきの残業が生み出す^奮阿旅数
私の経験上、△ら生まれる残業は、やり方によっては削減することが可能です。
その方法は、残業代予算を事業部や部門別に決めて、それを守るように意識付けするのです。

管理職も含めた全員の残業時間をモニターする

データを重視するSWP戦略では、仮に裁量労働制やホワイトカラーエグゼンプションの対象の人であっても、実態把握のためにきちんと残業時間をモニターする必要があります。
管理職も含めた全員の労働時間データを見ることで、職場の実態を把握します。
(注 )「ホワイトカラーエグゼンプション」とは、労働時間ではなく、成果に対して賃金を払う脱時間給制度のこと。
この場合、残業時間の分布を見える化するのが、効果的なデータ分析のやり方です。
この分析をすると、長時間残業する人と、ほとんど残業しない人の二極化が、一目ではっきりとわかります。

データがはっきりと教える職場の実態

また、残業するメンバーは固定化されることが多いでしょう。
彼らには指導が必要なケースもあれば、本当に工数が足りないケースもあるので、残業が集中しているチームに対しては、実際にインタビューしたほうがいいでしょう。
そしてこのデータを数か月蓄積して分析すると、残業の多いチームが、本当に仕事量が多いのか、一過性の仕事で残業が増えているのか、上司のマネジメントに課題があるのかがわかります。

人事データの社内共有で議論が建設的に

ときどき「こんなデータを取ったところで、残業なんか減らないのではないか」という意見を聞きます。
もちろんデータを取るだけでは、残業を減らすことはできません。
成功のポイントは、得られた結果を分析し社内で共有することです。
そして、経営層や所属長レベルに事実を報告することで、議論のポイントが「何が起きているか」という探究作業から、「どうしたら改善できるか」という建設的な内容に変化し、人事データをますます重視してくれるようになります。

社内の意識、風土、制度が変えられる

データを使った数値の説得力は絶大です。
こうしたデータを活用することで、社員を労働時間で評価するのではなく、実績を中心として評価するように、社内の意識や風土、そして制度も変えていくことができるのです。

【まとめ】

・人事データを使えば、残業代予算をあらかじめ決めるなど、時間の使い方の意識改革につなげることができる。
・管理職も含めた全員の残業時間をモニタリングし、職場の実態を把握。また、データ化する。
・得られた結果を分析し、社内で共有する。経営層や所属長レベルにも説得力をもって実体が把握され、建設的に議論されるようになる。
・データの力は絶大です。SWP戦略は、社内の意識や風土、そして制度も変えていくことができるのです。

★ 参考図書『稼ぐ人財のつくり方 生産性を2倍にする「攻めの人事」』山極 毅 著
日本経済新聞出版社