前席の乗員を押しつぶす結果になる!

JAF(一般社団法人日本自動車連盟)が、 後部座席(以下、 後席)でのシートベルト着用有無による衝突実験を行い、 その結果を5月16日よりホームページに公開し、その非着用時の危険性について警鐘を鳴らしている。

いまだに誤解している人も多いが、平成20年6以降、一般道でも後部座席のシートベルトの着用は義務化されている。にもかかわらず、一般道路における後席のシートベルト着用率は、たったの36%と低迷しているのが現状だ(2016年のデータ)。

JAFでは、後席シートベルト非着用がどれだけ危険かを調べるために、座席にダミー人形を乗せた車をバリアに衝突させ、 ダミー人形の挙動と頭部傷害基準値を計測するテストを実施。

内容:車の前面全体をバリア(障壁)に衝突させる方法(フルラップ前面衝突試験)で、後席でシートベルトを着用する重要性を検証した。

方法:車の前席及び後席にダミーを各2体乗せ、 後席運転席側のダミーのみシートベルト非着用とし、 速度は55km/hで衝突した時のダミーの挙動と頭部傷害基準値を計測した。このテストでわかったことは、主に2つ。

.掘璽肇戰襯箸鮹緲僂靴討い覆じ綫淵瀬漾爾倭以に投げ出され、 運転席のヘッドレストに頭を打ち付け、HIC(衝突や転倒による衝撃で脳に及ぼす影響度)は2129をマーク。HICが2000を超えると、 死亡や重傷につながる致命的な頭部損傷を負う可能性が高くなるので、これは相当に危険な状態。

運転席のヘッドレストに頭を打ち付けたダミーは、そのシートごと運転席ダミーを押しつぶし、その運転席に押しつぶされたドライバーのダミーのHICも1171と高い数字を記録している。

HICが1000を超えると、 頭部に重大な損傷が発生する可能性があり、後席の同乗者がシートベルトを着用しないと、事故を起こしたとき、後席の同乗者がミサイルのように飛んできて、運転席や助手席の人はサンドイッチ状態になり、致命傷を与える凶器になりかねないということ。

これを踏まえて、まず、後部座席の人のダメージについて考えてみよう。その前に、ひとつクイズ。クラッシュしたときに両手、両足を踏ん張って身体を支えられる衝突速度は何km/hぐらいだろうか。

答えは時速約7km/h。

全速力で駆け足をしているときに、いきなり躓いたことを想像してみると、その衝撃力はイメージできるはず。そう考えると、渋滞のノロノロ運転中に追突事故を起こしただけで、シートベルトがなければ、顔面や全身を強く打ちつける危険性があることがわかるだろう。

ちなみにシートベルトをしていても、40km/hで壁に衝突したとすると、肩ベルトには約700Kg、腰ベルトには約600kgもの荷力がかかる。人間の腕力でどうにかなる衝撃ではないということを覚えておこう。運動エネルギーは、速度の二乗に比例する。

一般公道でも珍しくない40km/hだって、その速度で壁などに衝突したときに、後部座席の人が受ける衝撃は、ビルの3階(約6m)から落下したときの衝撃とほぼ同じ。身体には自分の体重の約30倍の力が瞬時にかかり、前に飛び出すような状態に……。

後席でもシートベルト非着用による車外放出のリスクは大きい

もうひとつ、後席シートベルトの非着用時のリスクとして、衝突事故の際の車外放出が挙げられる。

車外放出による死者の発生率は、運転席が6.6%、助手席が9.4%、後席が17%と、後席が圧倒的に高い。その後席の車外放出による死者の93.5%は、シートベルト非着用。

一般的には安全だと思われがちな後席だが、シートベルト非着用では、シートベルトを着用している運転席や助手席に対して比べ物にならないリスクがあるので、根拠のない過信は改めよう。

そして、今回のJAFの実験で、ぜひとも覚えておいてほしいのが、シートベルトを締めていない後席の人の身体が、事故を起こした際、ドライバーや助手席の人に大きなダメージを与える凶器と化すこと!

前述の通り、40km/hで衝突した場合、後席の乗員の身体には、自分の体重の約30倍の力が瞬時にかかる。その人の体重が60kgだとすると、その約30倍=約1.8トンの力が前の座席の背もたれにぶつかることに! 日産R35GT-R(車重1740Kg)に背中から瞬時に押しつぶされて、前からはエアバッグに挟まれたらと思うとゾッとする。

一般道路における後席のシートベルト着用率が、36%と低迷しているのは、運転席・助手席と同時期に義務化をしなかったことが一番の原因だが、万が一に備えるのがシートベルトなので、後部座席であっても、一万回クルマに乗ったら一万回シートベルトを着用するよう自分自身も習慣化し、同乗者にも促すようにしよう(タクシーなどでも例外なく!)。