山崎エリイ1stワンマンライブ『Teenage Symphony For You』レポート

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「森の奥底の知ってる人だけが知ってる隠れ家みたいで癒しになるような、じっくりコトコト系のライブにしたい」

 4月30日、東京・恵比寿ガーデンホールで行なわれた山崎エリイの1stワンマンライブ『Teenage Symphony For You』は、彼女の“底知れなさ”をますます感じさせる公演だった。

 山崎は2011年に『第36回ホリプロタレントスカウトキャラバン 次世代声優アーティストオーディション』のファイナリスト10名に選ばれた経験を持ち、2013年の『サムライフラメンコ』からは声優としても活躍、2016年11月にソロデビューを果たしたが、それ以前の2014年から木戸衣吹とユニット・every❤ing!で活躍していたこともあり、この日のライブもソロ初ワンマンとは思えないほど、しっかりとしたステージングを披露してくれた。

 ライブは先日リリースした初のシングル曲「十代交響曲」とアルバムのリード曲「全部キミのせいだ」をストリングミックスでマッシュアップしたSEで幕を開けるという、凝りに凝った演出からスタート。彼女の元来持つミステリアスな雰囲気とどこか浮世離れしたユルさや明るさといった二面性を表すかのような曲展開の「全部キミのせいだ」から、歌謡・GS調サウンドが混ざったゴシックな楽曲にあわせ、タンバリンを持ちながら歌う「Lunatic Romance」に、同じく歌謡テイストを残しながら、疾走感と彼女のキュートな声が切なさを増長させる「空っぽのパペット」と続ける。「Lunatic Romance」と「空っぽのパペット」はライブ初披露だったが、それを全く感じさせない凛々しさがステージの上にはあった。MCでは「Lunatic Romance」のタンバリンについてや、「空っぽのパペット」を無機質に歌おうとしたがスタッフから「出せそうで出せない熱があるんだ」と熱弁されたエピソードが語られた。こういった細やかな演出を経て、楽曲があるべき形で披露されていたのだから素晴らしい。

 客席に着席を促したあとは、客席を練り歩きながら彼女のディスコグラフィにおいて最もキュートな曲といえる「ドーナツガール」をパフォーマンス。ディスコティックなベースラインとカラフルなシンセサウンドが織りなすポップスは、彼女の持つ声質が存分に発揮されている楽曲で、笑顔を振りまいて会場を所狭しとを闊歩するその姿は、ある種の高貴さを感じさせる。ちなみに山崎本人はMCでこの演出について「どうしてもみなさんの近くに行きたくて(笑)」といたずらに笑ってみせ、楽曲については「私の中では春のイメージで、ポカポカ陽気のカフェテラスに座って、お隣の恋人との話を聞いてる可愛らしいいたずらっ子の曲」と解説してくれた。

 バラードパートともいえる中盤では、「雨と魔法」と「My first love」、そして初披露となる「Pearl tears」を歌唱し、少ない音数で歌い手としてのポテンシャルの高さを見せつける。会場が一度暗転したあとは、彼女が人生と音楽遍歴を振り返る語りパートを挟み、歌うことへの強い気持ちや決意を改めて表明した。語りの終盤で「みなさまに見ていただきたいものがあります」と話したあと、チャイコフスキーのバレエ音楽『眠りの森の美女』の「リラの精」の楽曲にあわせ、山崎がその長い手足を存分に使ったクラシックバレエをパフォーマンスするというサプライズ。客席は一時も彼女を見逃すまいとした緊張感と驚き、そして「すごいものを見た」といわんばかりの静かな高揚に包みこまれていた。その流れからクラシカルで艶やかなゴシックサウンドの「cakes in the box」で、大人っぽい艶やかな一面と、伸びのある歌唱で見るものを圧倒する。クラシックバレエを3歳から16歳まで習っていた彼女ならではのパフォーマンスと、自身のリクエストを反映させてアルバムに収録したという「cakes in the box」からは、普段の雰囲気からは想像もつかない山崎の「素」が垣間見れたような気がした。

 そうして彼女のパーソナルな部分に近づけたかと思いきや、観客とともにユルい振り付けを踊るキュートなフューチャーベース「Zi-Gu-Za-Gu Emortions」、80sのアイドル歌謡風のAメロ→Bメロからダンサブルなサビへと変化し、セリフパートも盛り込まれた「アリス*コンタクト」で、また一気に核心から遠ざけられ、「星屑のシャンデリア」で再びロックでダークな一面を見せる。山崎エリイとは一体何者なのか、ライブを見たものはますますわからなくなったのではないだろうかと心配したが、本編最後の「十代交響曲」の歌唱前、山崎は「『十代交響曲』はクールでハード、未完成なままの10代だからこそ歌える、悩みついて最後に少し明るさが見える曲」とこの楽曲について解説してくれた。なるほど、どちらの面も山崎エリイであり、様々なジャンルが詰め込まれた1stアルバムも、ゴシックさと疾走感が同居した「十代交響曲」は、まさに今の彼女を表す楽曲なのだ。

 アンコールでは、ソロ名義で初めて配信したミドルテンポの歌謡ポップス「Dreamy Princess」を披露した。最後のMCでは「お仕事を始める前までは自分を出すことができなくて、どうしたら人に思いを伝えたり感情を込めることができるのか悩んでたんですけど、みなさんやスタッフさんが私を救ってくれました」と告白。続けて「私がこのお仕事をしてから見つけたのは『皆さんの声が聞けたら、笑顔でいてくれたらいい』ということ。皆さんのことを本当に本当に心から愛しています。だからこれからもたくさんの笑顔を見せてくれますか?」と目を潤ませながら語りかけ、ラストの「星の数じゃたりない」でステージを終えた。

 ソロ名義の楽曲すべてを披露し、クラシックバレエや語りを盛り込むなど、山崎エリイの持つポテンシャルを存分に見せつけた今回の公演。充実感を得ながらも、先述したように彼女の素には近づけたようで、そうではないような気もする。そんな底知れなさを感じさせながら、20代に近づく彼女の変化を引き続き見守り、少しでも核心に近づきたい。そう思わされた一夜だった。(中村拓海)