シャープが冷蔵庫「SJ-TF49C-B」に使っているソフトウェアのソースコードを公開した。
これは、機能の一部にGPL/LGPLライセンス下のソフトウェアが含まれており、それを配布・公開しますよということ。

そういわれても多くの人にとって、それって、どういうこと?
というのが、正直なところ。

どういうことか見ていこう。

◎GPL/LGPLとは
まず、GPL/LGPLについて。

GPLはGNU(General Public License)の略で、オープンソース(OSS)ライセンスの1種である。
たとえば、WindowsやOfficeなど企業が開発・販売するソフトウェアは、基本、開発元の所有物であり、誰でもが自由に利用することはできない。利用するには、ライセンス契約を結ぶなど、利用ライセンスを許諾、取得する必要がある。

一方、オープンソースソフトウェアは、誰もが自由に使用し、改変も(基本的には)可能だ。
ただし、利用する際に、どう使っていいかを決めておきましょう。
という取り決め(ライセンス)はあり、いくつかのラインセンスが存在する。

GPLライセンスでは、ソフトウェアを所持する側に以下を許諾する。

・プログラムを実行すること
・プログラムを改変すること
・複製物の再配布すること
・プログラムを改良し、それを公開すること

同時に、GPLでライセンスされた著作物は、その二次的著作物に関してもGPLでライセンスされなければならないとされている(「コピーレフト」と呼ばれる原則)。

LGPLは「GNU Lesser General Public License」の略。
LGPLであるプログラム自体にコピーレフトの制約はある。
しかし、動的なリンク(ライブラリやモジュール)として主プログラムから呼び出される形での使用の場合は、呼び出し元の主プログラムにLGPLを適応させる必要はない。

今回、シャープの冷蔵庫「SJ-TF49C-B」の機能には、一部でGPL/LGPLライセンス下のソフトウェアが含まれていた。
そのため、ライセンスの規約に沿って、それを配布・公開しますよということなのだ。

◎IoT冷蔵庫「SJ-TF49C-B」
シャープの冷蔵庫「SJ-TF49C-B」は、3月に発売されたもの。
・ユーザーの生活リズムを学習
・ユーザーに役立つ情報を音声メッセージで届ける
という特徴を持つ製品だ。

この冷蔵庫は、インターネット接続してクラウドにアクセスし、ドアの開閉の頻度や時間帯の情報を蓄積する。スマートフォンアプリと連携し、購入した食品などを登録することができる。また、レシピデータベースやお天気情報の活用も可能。

こうした利用情報を蓄積して学習することで、使い込むほど、より利用者にフィットした利便性を提供し、使い勝手がよくなるという製品だ。

今回、SJ-TF49C-BのGPL/LGPL適用ソフトウェアとして公開されたのは、

・音声再生
・無線通信
・組み込み制御

などに関連すると思われるソースコード10種だ。
(シャープ側は詳細を明らかにしていないので、公開されているソースコードから類推)

となると、冷蔵庫の基本的な機能をカバーするファームウェアではなく、クラウドとの連携や音声対話部分、つまり、IoT機能として提供している部分になる。

SJ-TF49C-Bは、いわゆるIoT家電と言われる新しいタイプの家電製品なのだ。

クラウド経由でユーザーのデータを蓄積し、分析し、ユーザーの行動をアシストするアドバイスを提示する。

一昔前ならば、「ユビキタスコンピューティング」「ホームオートメーション」などと言われたが、今では「IoT(Internet of Things)」と呼ばれている。
IoTは、家電や住まいという環境をIT化し、クラウドとつなげることで人の負担を軽減し、より快適なライフスタイルを実現しようと、IT企業、家電メーカーなどが狙っている分野だ。

お掃除ロボットをはじめとし、
・電子レンジや冷蔵庫、照明器具、エアコン
・ドアや窓の開閉をチェックするセキュリティ対策
にいたるまで、生活情報をデータ化することで、ライフスタイルを改善する情報を提示するといったことも可能となる。

IoTを、なぜ各社が狙うかというと、IoTが、今後の大きな、新たな市場を生むと考えられているからだ。

いいことずくめにみえるIoTだが、課題も多くある。
これまでデータ化されなかったユーザーの情報を集める場合の法的な責任についてだ。
これらは、個人情報とも密接に繋がっており、それらをどう扱うか、プライバシーの問題はないのかなど、まだまだ議論しなければならいことが多いからだ。

また、IoT家電は、さまざまな家電がつながることによって、大きなメリットを生む。
このため、単体での導入にはメリットが低く、導入のハードルも高くなる。
IoT家電は、多くの製品が対応してくる、これからが盛り上がっていく分野なのである。

今回のシャープ IoT冷蔵庫「SJ-TF49C-B」におけるソースコードの公開の件は、一見すると、何かユーザーの「ハック」を狙って(コミュニティの盛り上がりを狙って)ととらえられそうだが、今回のリリースだけではその意図がわからない。

なぜ、こんな話になるかというと、
そもそも、これまでの家電ファームウェアには、組み込み用OS(多くの場合Linux)が使われており、その際、既存のモジュールやライブラリを使って開発することが多い。
再配布する条項に対しては、各社が事前に確認し、製品に搭載する時点でライセンスに抵触しないよう、自社開発のものに切り換えたりするケースが多かったからだ。

ただ、開発途中に使用していたGPL/LGPLライセンスのOSSがそのまま製品版にまで残ってしまい、仕方なく公開と至ってしまったという例も、過去にないわけではない。

機能の一部を担うソフトウェアのソースコードを公開したからといって、すぐに何か危ないことになるわけではないが、実際に製品を使っていたらセキュリティ面が気になるというのもあるだろう。もちろん、シャープ側もセキュリティ上は問題ないとして公開に踏み切ったのだろうが。

IoT家電は、これから増えていく便利な製品だが、IoT機器が増えていけば、今回のシャープに限らず、同じようなケースもまた増えていくのかもしれない。というのもまだ新しい機能で、各社がプロトタイプを重ねている段階だからだ。

今後のことも考えると、今回のソースコード公開の真の意図を知りたいところだ。


大内孝子