六本木ヒルズにある鳥かごのような半円状のドームに置かれたピアノ。その前にはリュックを背負ったまま座る一人の青年の姿が。彼が弾き始めたのは、誰しも聴いたことがあるなじみのメロディから、アニメ音楽までと様々。流れるようなピアノ演奏には多くの人が足を止め、彼の演奏に聴き入りました。そしてクライマックスを締めくくったのがアニメ『けものフレンズ』の音楽「ようこそジャパリパークへ」。演奏が終わった瞬間、吹き抜けの上から見ていた人、そばで見ていた人と立ち止まった多くの人々が割れんばかりの拍手を彼へと贈ったのでした。

 そんな多くの人を楽しませたサプライズの光景が、この数日ネット上で注目されています。Twitterではいいね3万以上を集めたほど。演奏していたのは東大農学部で学ぶあきたさん(@firefoxist)。

 あきたさんはYouTubeやniconico、SNSといったネット中心に音楽活動を行っています。YouTubeにある初投稿は7年前の十代の時。しかも曲はラフマニノフのピアノコンチェルトでした。他にもリストやショパンだけでなくモシュコフスキの曲もあり、さらには『ネコ踏んじゃった専用のピアノ作った』なんて作ってみた系動画もあるのですが、その後は『耳コピしてみた』などの動画もアップしています。

 さて、今回の動画についてあきたさんに話を聞いてみると、演奏するきかっけとなったピアノは、六本木ヒルズで期間限定で行われていた「BRAIDING THE PIANO」という企画で置かれてたものだそう。誰でも自由に演奏できる時間が設けられており、毎時2回、各10分間が解放されていました。話題の動画は、その期間中ヒルズに出向いたあきたさんが通りすがりに演奏して動画撮影を行ったもの。

 あまりにも素敵な演奏だったので、次はいつ演奏会に出られますかと聞いてみたところ「現在演奏活動はネット上でのみ行っておりまして、公開された本番のようなものはないですね」とのお返事でした。うーんこれは当日聴けたお客さんはとってもラッキーだったのでは?

 話題の動画タイトルは「六本木ヒルズで『ようこそジャパリパークへ』を弾いてみた。」となっていますが、先にも少し書いたようにいくつもの曲が演奏されています。詳しく書くと、『ララランド』『発車メロディ』『ホール・ニュー・ワールド』『Let it go』『いつも何度でも』『ようこそジャパリパークへ』を一気に演奏。

六本木ヒルズで「ようこそジャパリパークへ」を弾いてみた。

 これだけの曲を弾くとなると、あらかじめ用意していたのかな?と思ったのですが、「演奏曲目もその場の空気」で決めたそうです。例えば「子どもが増えてきたら子ども向けにしよう」とか、「外国人多くなってきたらディズニーにしよう」など、その場の空気、聴いてくれる層を感じて演奏曲を決めていったそうです。

 実はあきたさん普段から耳コピー(耳コピ)をして、さらに編曲までしている人物。でもそれでも、あれだけの短時間でスラスラ弾けるってすごいですね。この件についても聞いてみると「強いて言うなら」と前置きをした上で「頭のなかで曲を鳴らして、脳内で楽譜を作って弾く」というのをリアルタイムで行っていると教えてくれました。つなぎの部分は特に気をつけたといい「次の曲ですよ〜!」と注目してもらうために工夫したのだとか。確かに曲と曲とのつなぎは、すっと次の曲に入って素直に耳に届いてしまう演奏でした。

 そして演奏が終わる頃には大勢の人からの拍手。周囲の人達が惜しみなく温かい拍手を送ってくれたことが、心から嬉しかったそうです。「弾き終わった後に上を見上げたら吹き抜けの2階、3階のところにもずらーっと人がいて。演奏時には気づかなかったのですが。こんなに沢山の方がわざわざ足を止めて下さったということが、とても幸せでした」と、その瞬間の喜びを語っています。

 あきたさんの活動のスタート地点は動画です。その理由として、世界中の人に見てもらえる可能性があるというのは大きかったのだそう。最初の頃に「海外の視聴者の方からコメントを貰えた時は本当に嬉しかった」と当時の感動を教えてくれました。

 あきたさんの今後の活動については、短期的なことで言えば「もっと多くの人に耳コピーの楽しさを伝えられるような情報を発信していければ」と考えているそうです。ファンの方はやはり耳コピ動画を楽しみにして下さっている方が結構多いとのことで、「自分でも耳コピやってみたい!」という声が届いており、「耳コピができるようになるコンテンツを作れればな」という目標があるそうです。

 最後にあきたさんはこんなことを語ってくれました。動画を通じて音楽をしていてよかったなと感じたのは、あるフォロワーさんに「あきたさんの演奏を聴くと辛い時でも元気が貰えます」と言ってもらえたことだったそうです。
 「それまではただの趣味で、ただ好きなように弾いていただけなのに、誰か他の人に元気を与えることができたということが、初めは信じられませんでした。でも、いまはやっぱり、聴いてくれる人がどう感じてくれるかが全てであり、聴いてくれる人に失礼のないように演奏をしないといけないと思っています」と語っていました。

 その言葉どおり、あきたさんの音楽は楽しく、元気になれるものが沢山あります。過去の動画はYouTube「あきた -firefoxist-」や「niconico」にて公開されています。クラッシックから銀行のATM音など色々なジャンルの曲が色々を聴くことができますよ。

・協力:あきたさん(@firefoxist)

(天汐香弓)