『不協和音』通常盤

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 昨年7月に放送された『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)以来、約10カ月ぶりとなる欅坂46主演のドラマ『残酷な観客達』(日本テレビ系)が、5月17日にスタートした。この10カ月の間で、一躍アイドルシーンのスターダムへと駆け上がっていった彼女たち。期待を一身に背負い始まった今回のドラマ『残酷な観客達』は、現代のSNS社会、仮想ライブ空間での生配信を痛烈に風刺した作品だ。

参考:欅坂46『徳山大五郎』が優れたアイドルドラマだ

 ドラマは、「出席番号17番」というキャプションのもと、教室の机に座った葉山ゆずき(平手友梨奈)の顔面アップからスタートする。教壇に置かれたタブレット型PCに向かい、変顔を披露する彼女。教室に閉じ込められた女子高生21名に課せられたのは、「観客からたくさんのいいね!をもらうこと」「目標のいいね!に到達すると彼女達はこの状況から脱出することができる」の2つ。観客達はリアルタイムで生徒達を見ることができ、変顔、モノマネなど彼女達のそれぞれの行動に対して書き込みをしてくる。中には、「ブス」「気持ち悪い」といった批判、中傷的なコメントも流れてくる。

 この構図は、現実社会におけるSNSにも置き換えることができる。例えば、欅坂46の出演するテレビ番組やライブ、握手会など全てがSNS、掲示板で評価される時代。グループにとっても馴染み深い、仮想ライブ空間の「SHOWROOM」に置き換えて考えれば、このドラマのシチュエーションは綺麗に合致する。第1話ではナレーションにて、物語は近未来という設定であり、「いつの日か、この国の学校教育がプライバシーの保護を優先するあまりに生徒や教師の名前すらも教えない。という予想のもと、物語は作られたの」と説明が入る。生徒達には、役名はあるものの、出席番号で互いを呼び合う。これもデビュー前にプライバシーを保護した番号呼びの、SHOWROOM放送を彷彿とさせるものがある。観客達が女子高生達の見えないところでもチャットにて会話をしていたシーンは、ドラマやバラエティ番組を見ながらする、ファンコミュニティーで作られたグループの中での会話を示しているのだろう。

 印象的だったのが、観客達の中傷的なコメントを見て葉山が放つ「うっせー、ファック」という、アイドルらしからぬ卑俗な言葉だ。「これから17番の心の声をお届けしましょう」というナレーションのもと、ピー音入りで劇中に何度も現れる。『徳山大五郎を誰が殺したか?』では、平手友梨奈の「犯人をしょっぴきたい」という決めゼリフがあったが、今回のドラマでは「ファック」がそれに当たるのかと思うと、何とも攻めた演出だ。そして、これまでの考え方からいくと、この言葉はその観客達に当てられたものとも捉えることができる。

 エンディングテーマである欅坂46の「エキセントリック」は、インターネットで拡散していく情報によってイメージが操作されていくが、自分は“エキセントリック”、変わり者で良いと歌う楽曲だ。欅坂46をプロデュースする秋元康は、過去にAKB48へ<アンチが生まれて/スターは育つ>と歌う楽曲「アンチ」を持たせていて、それは当時の彼女たちの状況を示していた。同じように『残酷な観客達』は、一気にアイドルシーンを駆け上がった、今の欅坂46だからこそ挑戦できるドラマでもあるのだ。

 放送中に、Twitterには「#残酷な観客達」というハッシュタグがトレンドにランクインしていた。そこには、ドラマの画面キャプションと共に彼女達を評価するツイートが並ぶ。そのツイートを打つ一人ひとりも“残酷な観客達”だと考えると、このドラマの狙いは自ずと見えてくる。(渡辺彰浩)