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「未来」は、そう遠くないところにある

ドイツの自動車メーカーが作った電気自動車はどんなものかを検証すべく、まずは助手席に乗り込んだ。

メルセデスベンツEQエレクトリックSUVコンセプトは、2016年のパリ・モーターショーでヴェールを脱いだモデルだ。£85億(1兆円)もの開発資金を投入したのは、未来のトレンドを模索するためである。

メルセデスの会長を務めるディーター・ゼッツェは、バッテリーを搭載した10種のEVとPHEVを2025年までに用意すると言った。

EQコンセプトは、その青写真を具体的な形として示した1台で、競合するライバルは、アウディE-トロン、ジャガーI-Pace、テスラ・モデルXである。

このクルマが市販車となるときはEQ Cと名乗ることになる予定で、気になる販売開始は、英国では2019年目標とのことだ。

同社は、動力機関や、バッテリー供給機構などをそれぞれに特化させた4種類のクルマを、5年を目処に発売していくとの方針で、EQ A、EQ C、EQ E、それからフラグシップのEQ Sといったラインナップとなる。

まずはデザインから見ていこう。

デザイン:ミラーがついていないのはコンセプトカーだからではない

これからの新しい電気自動車のコンセプトというのは、いかに街中に溶け込めるかということだろう。他社のクルマは未来型のデザインで、それぞれの持っている機構を鼓舞するかのような見た目だが、メルセデスはこれまでのガソリン・エンジン車のラインナップに寄せたデザインとするようだ。

「エアロダイナミクスを利用して性能アップを図るため、ボディ表面の継ぎ目をなるべく少なくすることで、空気を味方にできるように工夫しています」と語るのはデザイン・スタジオのトーマス・ザイルズ。

ワイパーを見えない位置まで下げたり、ドア・ミラーをデジタル・カメラにすること、ドア・ハンドルもタッチパネルにして突起を無くすことに尽力した。

21インチのホイールも、そんな美学に基づいてデザインされたモノである。

サイズ感はGLCとGLEの中間といったところで、全長4730mm。全幅は1950mmで全高が1560mmとなっている。

熱間鍛造超高強度鉄とアルミニウムによってプラットフォームはこの新しいSUVのために新設された。

そういえば、パワートレインはどうなっているのだろう?

パワー:EQ Cは4WD?

このような電気自動車としてのSUVがショールームに並ぶまでは、2年ほどを費やす見込み。

パワートレインに関してはメルセデスは口を閉ざしたままではあるが、2個のモーターで駆動するというのはわかっている。前と後ろの動力源をそれぞれのモーターが担当するスタイルである。

このふたつのモーターの出力を合わせると400psにもなる。

これを現行のメルセデスのラインナップと比較してみると、3.0ℓV6ガソリン・エンジンにツイン・ターボを組み合わせたGLC43クーペは362ps。

2.0ℓ4気筒ガソリン・エンジンとモーターを併せ持つGLC350eは316ps。EQ Cはパワフルだ。

ドライブ・モードでは、100%のパワーを4輪、もしくは前か後ろの2輪に伝達させることができる。

都市部のダラダラとした流れのなかでは、プログラムによって前輪駆動になり、高速になると自動的に4輪駆動になる。

性能:0-100km/h加速性能は5秒未満?

大きなリチウムイオン・バッテリーがEQ Cを重たくしていることは否めない。

2000kgオーバーの車体は、一見「俊敏さ」とは縁遠いようにも思えるが、実はそんなことはなく0-100km/h加速性能のタイムは5秒を切る見込みだとエンジニアは語る。また、気になる航続可能距離は約500kmとのことだ。

インテリアも継ぎ目がない。低く構えたダッシュボードには、インフォテインメント・システムが鎮座しており、画面を見た感じではおそらくスペックは最近のEクラスと同等ではないのだろうかと思う。

ただしEクラスの画面の大きさとはまったく違い、Eが12インチだったのに対して、EQは24インチ・ディスプレイを採用している。

このディスプレイ自体にはタッチ機能は備わっておらず、操作は声による設定、若しくはセンターコンソールのタッチスクリーンを使う。内外装同様、ディスプレイもどこか近未来を感じさせるものになっていた。

今回試乗したコンセプトカーは4人しか乗れなかったが、市販車では5人乗りとなる見込みだ。

実走テスト:EQ Cを感じる

一見、解放感あふれるキャビンは、フロント・ウインドウが寝ているせいで頭上の圧迫感があり快適とは言い難い。

また、全体的な見切りは良いものの、フロアがフラットであることと、着座位置が高いため、直立した姿勢を余儀なくされた。市販車になる際には改善が見られるかもしれない。

都市部の平凡なスピード域では、静粛性は抜群のひとこと。アルミ製のペダルをそっと踏み込むと、モーターの動作音がわずかに聞こえるのみだ。

ただ、今回乗って感じたことは、「総合的な評価を下すには時期尚早かもしれない」ということ。市販化に向けてモディファイが加わっていくので、パフォーマンスは大きく違ってくる可能性もある。

乗り心地の評価だって、実は完成したばかりで、サスペンションのセッティングなども未完。市販車では最近のエア・ボディコントロール・サスペンションを採用する見通しで、試走した際の路面のバンプの拾い方など、感じることはあったものの、それをレビューとして出すのは控えておくべきだろう。

EQコンセプトを試乗してみて、私は「漠然とした未来」を見せられたような気がした。

メルセデスはこれから2年後までには電気自動車でSUVのクルマの市販車を作るという意気込みを見せている。

確かになったのはふたつ。ひとつは、電気自動車で新しいプラットフォーム、電動パワートレインならではのパッケージング(とくに居住性)は市販車において、圧倒的に有利だということ。

そしてもうひとつは、そんなパッケージングが、ユーザーにとって、極めてフレンドリーであるという点だ。