仏パリ市内フランス血液機構血液収集センターに並ぶ検査用の試験管(2012年7月6日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】幹細胞を誘導して血液細胞に変える手法を開発したとする研究論文2件が17日、発表された。白血病を含む血液の病気の新しい治療法につながる可能性があるとされ、大きな節目となった。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文によると、各研究チームはマウスと、マウスの骨髄に移植したヒト幹細胞をそれぞれ用いた実験で新たな技術を実証した。これらの手法は、あらゆる種類の血液細胞を生成する可能性を持つ。

 1本の研究論文の筆頭執筆者で、米ボストン子ども病院(Boston Children's Hospital)の杉村竜一(Ryohichi Sugimura)博士は「この手法により、遺伝性の血液疾患の患者から細胞を採取して遺伝子編集技術で遺伝子の異常を修正し、機能的な血液細胞を作製する機会が開かれる」と語った。

 そして、安全性が証明されれば、全世界のドナーから得られる細胞を利用することで、概念実証段階にあるこれらの手法は「血液の無限の供給」につながる可能性があると杉村氏は続けた。

 実験室内での造血幹細胞の作製という目標はこれまで手の届かないところにあった。研究チームは、この状況を打開するための3段階のプロセスを考案した。

 研究チームは第1段階として、胚性幹細胞(ES細胞)と人工多能性幹細胞(iPS細胞)の両方を誘導して、自然の過程で血液幹細胞を生成する胚組織の一形態に変化させた。これは以前にも行われていた。

 カギとなる第2段階では、特に胚の成長の器官形成期に、遺伝子の発現を制御することが知られている数十種のタンパク質を使用して、その作用を調べた。

■タンパク質カクテル

 研究チームは、これらのいわゆる転写因子のうちの5つが共同で作用することで、さまざまに形態変化する血液幹細胞が生成されることを発見した。この血液幹細胞は、白血球、赤血球、血小板、マクロファージその他の血液を構成するあらゆる種類の細胞に分化する。

 研究チームは最終段階で、このヒト血液幹細胞を生きたマウスの骨髄に移植。数週間後、数種類のヒト血液細胞が形成され、マウスの体内を循環しているのを確認した。

 ボストン子ども病院の研究所所長で、今回の実験をデザインしたジョージ・デイリー(George Daley)氏は「今回の研究により、いわゆる『ヒト化マウス』内でヒトの血液機能をモデル化することが可能になった」と話し、「正真正銘のヒト血液細胞をペトリ皿内で生成することに、われわれは手が届きそうなほど近づいている」と続けた。

 米ワイル・コーネル医科大学(Weill Cornell Medical College)のシャヒーン・ラフィー(Shahin Rafii)氏が主導したチームによる別の研究では、成体マウスの細胞を出発物質として使用。共通する物を含む遺伝子活性化タンパク質への暴露など、数段階のプロセスを通じて誘導し、ペトリ皿内で成熟した血液幹細胞を作製した。

 今回の研究論文をめぐり、英医療研究所「Cambridge Stem Cell Institute」の研究者らは、これら2つの実験は、幹細胞開発における「画期的な進展」と指摘した。

 同研究所は、今回の研究には参加していないが、実験室内で「血液幹細胞を製造できること」により、細胞療法、薬剤のスクリーニング、白血病の発病に関する研究などに非常に大きな展望が開けると、ネイチャー誌に同時掲載された解説記事でコメントしている。
【翻訳編集】AFPBB News