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Texas Instruments(TI)は米国時間の5月16日、自動車用および産業用にミリ波レーダーチップ5製品を発表した。これに先立ち同社が記者説明会を開催したので、その内容をお届けしたい(Photo01、02)。

TIはご存知の通り産業機器などに強い会社であるが、それだけでなく自動車向けにもコミットしており、SafeTIという製品ラインアップを持っているわけだが、そうしたTIにとって今後の自動車を含めたシステムのインテリジェンス化は次のビジネスにつながると考えている(Photo03)。

ただ今回の話はそのインテリジェンス化の中でもセンシングに関わる部分である。具体的には距離・速度・方向といった条件をさまざまな環境で確実にセンシングできる手段としてミリ波レーダーのソリューションを提供する、という話である(Photo04)。ただし従来の場合、複数のディスクリートチップを組み合わせて構成しており、パッケージサイズもさることながら、特に精度を出すのが難しかったという(Photo05)。これを今回の製品では1チップ化した(Photo06〜08)、というのが非常に大きい。

今回の製品の特徴はこちら(Photo09)である。アンテナ以外のすべての要素を完全にCMOSで1チップ化(1ダイ化)しており、距離精度は50μmに及ぶ。それでいながら最大300mまでの距離の測定が可能とされる。

さてその製品であるが、車載用が3製品と産業用が2製品という構成になっている(Photo10、11)。まず車載用だが、長距離レーダ向けがAWR1243となる(Photo12)。ちなみにBose氏によれば、このAWE1243のみ、複数のチップをカスケード接続することで、Wide Array MIMOセンサとして利用する事が出来るという話だった。いわゆるPhased Array Raderである。これもあってか、AWE1243はRFのみが統合されたチップとなっている。

車載用でも近接(主に車内用)センシングに使われるのがAWE1443(Photo13)で、こちらは当然検知距離は短いものの、その分精度は高い。実際デモでは運転手のモニタリングで、心臓の周囲の細かな振動を検知することで、心拍数と呼吸数をフィルタリングを掛けて割り出すという事が行われていた。この製品はMCUが搭載されている。

最後が短距離レーダーのAWR1642(Photo14)で、距離的には数m〜数十mのオーダーになるのだろうが、その代わり広範な検知が出来るようになっている。この製品はMCUに加えてDSPも搭載されている。

ちなみにいずれの製品もマルチモーダル動作が可能となっており、走行シナリオにあわせて動作モードを変更できるという話であった(Photo15)。

Photo16が実際にAWR1642を搭載した車載向けモジュールであるが、実際基盤の寸法は25mm×25mmときわめて小さい。従来のミリ波レーダー(Photo17の左)と比較すると2周りは小さい感じで、車への実装の苦労が大分解消されそうだ。

次が産業用途である。Ferguson氏曰く「今回紹介するのはほんの一例であって、どんどん新しい用途が出てきている」ということだが、例えばタンク内のレベルセンシング(Photo18)。ミリ波レーダーを使うと材料ごとに反射率が異なるので、これを利用して材料の違いを検知することもできるそうだ。あるいは交通監視や境界区域監視にも使える(Photo19)とする。

他にも、フォークリフトとかロボティクス、ドローン、オフィスの監視機能まで、非常に幅広い用途に利用できるという話であった(Photo20)

開発環境としてはmmWave Studioに加え、短いもので数分、長いと30分に及ぶトレーニングビデオ、全製品共通のソフトウェア、開発ツールやリファレンスデザインなどが提供される(Photo21)。特に開発ツールに関しては、EVMが299ドルで提供予定である(Phoot22)。

ところで自動車用、ということではSafeTIのラインアップに入りそうな感じだが、Bose氏によれば「SafeTIで利用しているIP、例えばMCUとかはSafeTIのものがそのまま利用されているが、SafeTIに含まれる訳ではない」との事。実のところ76GHz〜81GHzが自動車向けと産業向けの両方に利用できる国は日本だけということもあり、また何しろまだシリーズの製品数が少なく、産業用とラインアップがほぼ重複していることもあるので、今はまだミリ波事業部でまとめて扱う、という形になるようだ。

特に自動車ではセンサフュージョンという名前の下にさまざまなセンサ群を統合するのが昨今の流行であり、ここにさまざまなセンサメーカーが新製品を投入しているが、産業用と絡めてこれを出すというあたりが他社とTIの違いという感じである。自動車向けよりも産業用にこれからどれだけ出るか、ちょっと興味あるところだ。

(大原雄介)