NBAプレーオフ2017 カンファレンス・ファイナル展望

 いよいよNBAプレーオフは大詰め。東西の王者を決めるカンファレンス・ファイナルが始まっている。はたして、NBAファイナルの舞台に辿り着く2チームは――。


前歯が折れても強行出場してチームを牽引するアイザイア・トーマスボストン・セルティックス(53勝29敗/1位)
vs.
クリーブランド・キャバリアーズ(51勝31敗/2位)

 今年のカンファレンス・ファイナルは、東西どちらも第1シードと第2シードの顔合わせとなった。ただし、イースタンの大本命はレギュラーシーズンでボストン・セルティックスの後塵を拝したクリーブランド・キャブスだ。

 カンファレンス・セミファイナルで第7戦までもつれ込んだセルティックスとは対照的に、キャブスはプレーオフに入ってから無傷の8連勝。第1シードの座こそセルティックスに譲ったが、プレーオフでは負け知らずで勝ち進んでおり、王者の風格を漂わせている。

 なかでも絶好調なのが、「キング」ことレブロン・ジェームズ(SF)だ。セルティックスはどうやって好調レブロンを止めるか――。このテーマはシリーズを通して頭を悩ませることになるだろう。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 カンファレンス・セミファイナル第1戦でレブロンはトロント・ラプターズを相手に35得点を挙げ、第2戦でも39得点と大爆発。レギュラーシーズンでは36.3%だったスリーポイント(3P)シュート成功率をプレーオフに入って46.8%まで急上昇させた。マークマンは3Pを警戒して間合いを詰めればドライブを許し、離せば3Pを打たれるという、まさにアンストッパブルな状態となっている。

 第2戦を終えたラプターズのデマー・デローザン(SG)は「レブロンを抑える方法を教えてくれるなら100ドル払う」とこぼすほど、今のレブロンは手がつけられない。第3戦と第4戦でもレブロンはともに35得点を挙げて、ラプターズをあっさりとスウィープ(4連勝)した。デローザンは記者会見で吐き捨てるようにこう言った。「こっちにレブロンがいたら、俺たちが勝っていただろうね」。

 カンファレンス・セミファイナルを終え、レブロンはプレーオフ通算5847得点。カリーム・アブドゥル=ジャバーの記録(5762得点)を抜き、NBA歴代2位に躍り出ている。歴代1位はマイケル・ジョーダン(5987得点)。その記録をカンファレンス・ファイナル中に抜く可能性は十分にある。

 ちなみにジョーダンの記録は179試合で残したもので、レブロンはすでに207試合をプレーしている。もちろん、どちらが優れたプレーヤーかを単純に比較はできないが、いよいよレブロンが”神の領域”に踏み込むときが来たとは言えるだろう。

 対するセルティックスの主役は、「小さな巨人」アイザイア・トーマス(PG)だ。

 プレーオフ直前に妹を交通事故で亡くす悲劇に見舞われたトーマスは、カンファレンス・セミファイナル第1戦では第1クォーターに接触プレーで前歯を折るアクシデントも発生した。第2戦の前日に口腔外科手術を受けたものの、唇は腫れあがり、まともに話せない状態。それでも試合に出場し、プレーオフ自己最多の53得点を挙げて勝利に導いた。トーマスは強行出場した理由をこう語っている。

「今日は妹の誕生日。23歳になるはずだった。僕にできるせめてものことは、彼女のためにプレーすること。だから、プレーしないという選択肢はなかった。彼女のために勝ちたかった」

 プレーオフに入り、ギアを一段上げてきた感のあるキャブスとレブロン。チーム力を比較すれば、キャブス有利は揺るがないだろう。さらにセルティックスはファーストラウンドで6戦、カンファレンス・セミファイナルで7戦を要したため、すでにキャブスより5試合も多くプレーしており、疲労度を比較しても圧倒的に不利だ。

 ただし、シカゴ・ブルズとのファーストラウンドでは2連敗からの4連勝で逆転勝利。カンファレンス・セミファイナルでは因縁深い宿敵ウィザーズを第7戦で葬るという劇的な勝ち上がり方を見せてきた。セルティックスは不利な状況になればなるほど、ミラクルを起こす力を発揮するのかもしれない。

ゴールデンステート・ウォリアーズ(67勝15敗/1位)
vs.
サンアントニオ・スパーズ(61勝21敗/2位)

 ウェスタン・カンファレンスのセミファイナルでヒューストン・ロケッツとの激戦を4勝2敗で制し、カンファレンス・ファイナルに進出したサンアントニオ・スパーズ。特に延長までもつれ込んだ第5戦は、歴史に残る劇的な一戦だった。

 スパーズはエースのカワイ・レナード(SF)が足首を負傷し、延長戦に出場できないという窮地に追い込まれる。だが、そのチームを救ったのが39歳のベテラン、マヌ・ジノビリ(SG)だ。スパーズ3点リードで迎えた延長戦のラストプレーで、この日33得点・10リバウンド・10アシストのトリプルダブルでチームを牽引したロケッツのジェームズ・ハーデン(PG)が同点を狙って3Pシュートを放つ。しかし、背後からジノビリがブロックで阻止し、その大接戦に終止符を打った。

 この第5戦で、ロケッツは燃え尽きてしまったのだろう。第6戦はレナードのみならず、左足の大腿(だいたい)四頭筋腱断裂でトニー・パーカー(PG)も不在となったスパーズ相手に精彩を欠き、75-114と大敗してシリーズを終えた。1試合75得点は、今季のロケッツの最少得点だ。同じく今季最少の10得点に終わったハーデンは「自分に責任がある」とうなだれた。

 対する第1シードのゴールデンステート・ウォリアーズはファーストラウンドに続き、ユタ・ジャズとのカンファレンス・セミファイナルでも全勝してカンファレンス・ファイナルへ進出した。クレイ・トンプソン(SG)のシュートタッチこそ芳しくないが、ステファン・カリー(PG)とケビン・デュラント(SF)が日替わりで活躍し、堅守がウリのジャズ相手に毎試合100点オーバーと圧倒的な攻撃力で押し切っている。

 ウェスタンの見どころは、ウォリアーズの攻撃力とスパーズの守備力――どちらが優れているかという部分になるだろう。スパーズはレギュラーシーズンで100得点未満の試合が5試合しかなかったロケッツを、6戦中3試合で100得点未満に抑え込んでいる。点の獲り合いになればウォリアーズ、ロースコアの守り合いになればスパーズに分があるように思える。

 現地5月14日に行なわれたカンファレンス・ファイナル第1戦は、スパーズに一時25点ものリードを許したものの、カリー40得点・デュラント34得点の活躍でウォリアーズが113-111で逆転勝利を収めている。

 スパーズにとって敗戦以上に痛いのは、レナードがふたたび左足首を捻挫してしまったことだろう。第1戦の逆転劇も、レナードがコートを去った瞬間からウォリアーズの猛追が始まった。レナードの回復具合によっては、ウォリアーズが一気にNBAファイナルまで駆け上がるかもしれない。

 今年のNBAファイナルは3年連続でキャブスvs.ウォリアーズとなるのか、それともセルティックスやスパーズが逆境を乗り越えてくるのか――。クライマックス目前のカンファレンス・ファイナルから目が離せない。

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