aとbは航空機により採取された黒色酸化鉄粒子電子顕微画像。cはaとbの距離を示す。dとeはaとbの鉄・酸素元素濃度の分布を示す。(図:東京大学発表資料より)

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 東京大学などの研究グループは、独自の分析装置による航空機観測によって、大気中に人為起源の黒色酸化鉄粒子、すなわち四酸化三鉄(マグネタイト)が多量に存在していることを発見した。これは、産業革命以降の人類の工業活動によって大気中に散布されたマグネタイト粒子が、あるいは平均気温の上昇などに影響を及ぼしているかもしれない、という可能性を示唆するものである。

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 地球の大気中には、無数の微粒子が浮遊している。これをエアロゾルという。これを大きく分けると、硫酸塩や有機物などの白いエアロゾルと、煤などの黒いエアロゾルがある。白いエアロゾルは、光学の原理に従い、太陽光を散乱させて地球表面を冷却する。これに対し黒いエアロゾルは、太陽光を吸収する性質を持つので、地球表面を加熱し、地上に届く光の量を減らす。

 これまで、大気中の人為起源による黒いエアロゾルは、炭素性のものしか知られていなかった。真っ黒な固体粒子ブラックカーボンと、茶褐色で液状であるブラウンカーボンである。これらについては、既に観測手段も確立されており、スーパーコンピューターによって濃度を予測、気候の数値シミュレーションにデータとして取り入れるなどの試みも始まっている。

 しかし今回の研究では、東アジアの上空(成層圏より低い対流圏)において採取された黒色の酸化鉄粒子の質量濃度は、ブラックカーボンの質量濃度に比べて、少なくとも40%に及ぶことが発見された。

 また、電子顕微鏡を用いた分析により、この黒色酸化鉄は、何らかの高温プロセスによって生成される四酸化三鉄(マグネタイト)のナノ粒子の凝集体であることも明らかになった。

 そして観測データに基づく分析によって、東アジア上空においてマグネタイトによる大気加熱率は、ブラックカーボンによる大気加熱率の少なくとも4から7%を占め、その影響力はブラウンカーボンに匹敵するほど大きいことが明らかになったという。

 なお、本研究の詳細は、雑誌Nature Communicationsに発表されている。