北朝鮮の金正恩党委員長は今年1月末、国家保衛省(秘密警察、保衛省)に対して、「職権を乱用して金儲けをするな」、「住民に対する暴行、拷問などの人権侵害をやめよ」などといった指示を出した。

これを受けて、保衛省がすっかりおとなしくなったとの声が北朝鮮国内から上がっている。しかし、在北朝鮮華僑は例外のようだ。中朝関係の悪化を受けて、保衛省は華僑に対する圧迫を強めている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、今年に入ってから清津(チョンジン)では9人の華僑が市の保衛部に連行された。いずれも膝に角材を挟んだ状態で跪かせるなどの拷問を受けた。

羅南(ラナム)区域の60代の華僑は、中国から帰国後に保衛部に連行され、取り調べを受けた。出国ビザに記載されていない場所に行ったことでいちゃもんを付けられたという。

また、別の華僑は、理由は定かではないが保衛部に連行され、家と財産をすべて没収された。多額のワイロを支払ってなんとか家は取り戻せたものの、家の中にあった家具や家電製品はすべて戻ってこなかった。

金正恩氏の命令を受けて、北朝鮮国民に接する態度を一変させた保衛省だが、華僑はその対象外のようだ。罪をなすりつけて逮捕し、ワイロをむしり取る手法を北朝鮮国民に対して使いづらくなった分、華僑からより多くを搾り取ろうとしているのかもしれない。

平壌駐在の中国大使館は、このような状況に対して何ら手を打っていないという。

別の情報筋によると最近、清津市の浦港(ポハン)区域にある華僑学校で開かれた今年3回目の華僑会議で、華僑委員会の幹部と国家保衛省外事課の要員が「中朝関係を害する行動は許されない、摘発時には厳罰に処す」との警告を発した。

そこでは、華僑が北朝鮮の国内事情を中国で話す行為、カネと引き換えに北朝鮮国内の機密資料を韓国の国家情報院などの情報機関に売り渡す行為が「問題行動」として指摘された。それ以外にも風紀紊乱、幹部を買収し不当な利益を得る行為も指摘された。「何もせずに家でじっとしてろ」(情報筋)ということだ。

華僑たちはじっと耐えて、ひたすら嵐が過ぎ去るのを待つしかないようだ。

中国当局は北朝鮮に協力し、自国に逃げ込んだ脱北者を強制送還しているのに、そういった「貸し借り」の義理は、北朝鮮には通用しないらしい。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち