所属する鳥栖でも結果を出している田川。U-20W杯でもゴールを奪えるか。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 5月21日にU-20ワールドカップの初戦を迎える日本代表。5大会ぶりに檜舞台へ挑む若武者たちは、国内最終合宿を11日から静岡県内でスタートさせた。2つ下の世代ながら招集された久保建英(FC東京U-18)に注目が集まるなか、チームにはもう一人飛び級で本大会に挑む選手がいる。それがサガン鳥栖の田川亨介だ。
 
 今回の代表チームは主に97〜98年生まれの世代で構成されるが、田川は99年の早生まれ(2月生まれ)のため、当初は一つ下のU-18日本代表に名を連ねていた。内山篤監督が率いるチームに初めて引き上げられたのは昨年8月のSBSカップだ。
 
 そして今季、鳥栖の下部組織からトップチームに昇格した俊英アタッカーは、裏への抜け出しや左足から放たれるシュートは天性のモノがあり、物怖じしないメンタリティも兼ね備えている。
 
「武器がひとつでもあれば、それをフィッカデンティ監督は本当に評価をしてくれた。だから、試合の時は深く考えずに思いっ切りプレーができている。それが結果につながったと思う」(田川)
 
 ハツラツとしたプレーは所属する鳥栖のフィッカデンティ監督の目に留まり、リーグ戦では2節からベンチ入り。4月8日に行なわれた6節の新潟戦では途中出場からリーグ戦初ゴールをマークした。
 
 Jでの活躍が認められると、今年4月中旬の千葉合宿では、前述のSBSカップ以来となる代表招集を勝ち取り、そこで自身の武器を余すことなく披露した。
 
「FWのタイプとして前線に高さが欲しかった。その中で彼の左足と高さを2016年のサニックス杯で見ている。今季はクラブで途中から出て、スピードを武器に明確な結果も残している」と内山監督もそのプレーを高く評価。田川に韓国行きの切符を与えた。
 
 起用法は2トップの一角が想定されており、主にスーパーサブという位置づけになりそうだ。期待されるのはゴールやアシスト。攻撃の切り札としての活躍が求められる。
 
 しかし、代表では自身の特長を今ひとつ出し切れていないのが現状だ。武器である裏への飛び出し、クロスへの合わせ方。チームに招集される回数が少なかったこともあり、連係面の課題から結果に結び付いていない。
 
「自分が背後に抜けた時に見てもらえないことが多い。なので、要求をもう少しやっていかないといけない」と本人は語り、14日の練習でも改善の余地を感じさせた。
 コンビネーションに不安を残す田川だが、一方でチームのムードメーカーを担う初瀬亮(G大阪)は噛み合ない理由をこう分析する。
「田川には田川の良さがある。前線での強さは持ち味だと思うし、背も高いので自分はクロッサーとして彼を意識している。ただ、田川は遠慮しているところがある」
 
 クラブ同様に怖いもの知らずのメンタリティを発揮し、伸び伸びとしたプレーを出す。それが自ずと代表での活躍にもつながるだろう。チームの切り札として機能するためには、初瀬の言葉通り遠慮をしている場合ではない。
 
 パワーとスピードを武器に攻撃の切り札的な活躍が期待される新進気鋭のストライカーは、鳥栖を発つ際、「フィッカデンティ監督がイタリア人なので、(グループステージ最終戦の)イタリア戦に出場したら、『ゴールを決めてきます!』と宣言して、笑いを取る感じで出発しました(笑)」と話し、精神的な図太さを垣間見せた。
 
 15日のホンジュラス戦(45分×2本、30分×1本)では2本目の29分からピッチに立ち、ドリブルで仕掛けるなど彼らしいプレーも幾つか見せている。ただ、「シュートを放てなかった」と本人が語るように、好機をフイにしたのも事実だ。まだまだ、遠慮がちなプレーが顔を覗かせている。
 
 大会までに残された時間はあと5日。開幕までに自身の良さを取り戻せば、攻撃の切り札としてチームに欠かせない存在となる。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)