鄭の当たりが止まっているのも気になる点だ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 清水は今季まだホームでの勝利がなく、鳥栖はアウェーでの勝利がないチーム。どちらもその初勝利を目指して懸命に戦い、可能性も十分に見せたが、結局はハードルを越えられないまま1-1のドローに終わった。
 
 ただ、鳥栖は「今日のようなプレーを続けていくことで、アウェーでも勝利を掴めると思う」(吉田豊)という手応えのある内容だったのに対して、清水は改善が必要な部分がいくつか散見された。
 
 序盤は、清水がパスをつないで押し込む展開を作り、何度か惜しい形を作った後、調子を上げてきたチアゴ・アウベスがワールドクラスの強烈なミドルシュートを決めて23分に先制。チアゴはドリブルでも攻撃に変化をもたらし、セットプレーのキックでは可能性を感じさせる質の良いボールを何本も供給。チーム全体としてもバランスは悪くなく、上々の展開を作っていた。
 
 だが、残念だったのは、点を取った後の残り70分近くが、ほとんど主導権を握れない展開になってしまったことだ。全体的にミスパスやボールロストが目立ち始めてリズムを崩すと同時に、動きが良くなってきた鳥栖の早いプレッシャーを受けて、思うようにパスを回せなくなってしまったのだ。それが、暑さ(23.8度/湿度58パーセント)の影響があったのか、気持ちが守りに入ってしまったからなのかはわからない。
 
 ただ、ハーフタイムでも修正することができず、後半も同じ流れで鳥栖にボールを支配され続けてしまったのは問題だ。小林伸二監督は、ボールを持つ時間を作れなかった原因について、次のように語る。
 
「向こう(鳥栖)のほうが、足が動いていて、うちはテンポの良いことができなかった。前の選手が準備してないのにパスが入ったり、自分の感覚で入れている面があって(タイミングの)共有ができていない。
 
 それと先制点を取った後にイージーなミスが増えてリズムを崩した。もう少し慎重にというか、ボールをきちんと回すとか、キープして(味方に)落とすといったところが、軽率なように見えた。後半もそのままそういう流れになってしまった感じがします。
 また、トップが2人で何かしようと前に行っても、後ろの選手は間に合わない。何秒かキープして後方に落とせば、そこで3ラインがしっかりできる。それで(サポートを受けて)前の選手が生きていくというサッカーをしないと……カウンターばかりのような形になってしまったと思います」
 
 原因はいくつかあるが、そうした複合的な影響によって終盤は1点を守るだけの流れになってしまい、選手たちが体力を消耗。最後は耐えきれなくなって、アディショナルタイムに同点ゴールを決められたという後半だった。
 
 清水は堅守速攻に徹して結果を出せるタイプのチームではない。これからどんどん暑くなってくることを考えると、リードしているときでも自分たちがボールを保持して時間を使うという試合運びができなければ、ますます苦しくなってしまう。
 
 もちろん、そこはチームとしても承知していて、今季のJ1でも守るだけではない試合運びでリードを守り切ったアウェーゲームもあった。しかし、その力がまだ十分ではないということが表面化したのが、この試合だった。そこが早めに改善できるのか、時間がかかるのかが気になるところだ。
 
 もうひとつ清水で気になったのは、ここ2試合はエースの鄭大世が決定機を決めきれていないこと。62分には自ら相手CBのボールを奪い取って、GKと1対1の絶対的なチャンスを得たが、それを決められなかった。ここで2-0になっていれば、結果も変わっていた可能性は高い。鄭はこれで5試合ノーゴール。その前は6試合で4点取っていたことを考えると、流れが止まっている。
 
 ただ、彼の動きやプレーの質が悪くなっているわけではないので、よく言われるケチャップのボトルの例え話のように、一度詰まりが取れれば再びドバッと出始めるかもしれない。

 本人も「今は自分に流れが来ていないなと受け入れるようにしています」と冷静に反応しており、チアゴに相手の警戒が集まってくれば、鄭のチャンスも増えてくるだろう。その中でもう一度量産体制に入れるかどうか。そこで彼の真価が問われることになる。
 
 清水のホームでの成績に関しても、ケチャップの法則が当てはまるのか。昨年J2ではまさにその通りになったが、J1でも同じ流れを作れるのか。もう少し冷静に見守っていく必要がありそうだ。
 
取材・文:前島芳雄(フリーライター)